この日曜日。一気に読み通しました。文庫本で約500㌻。読み応えのある内容です。地球上が三大帝国の支配下になった近未来。その一国、オセアニア。この国は、かつてのイギリスとアメリカが合体した国家(使用通貨はポンドではなくてドル)で、他の二国と常に戦争状態にある(相手国は常に変化するが)。
発表された1948年当時の、第二次世界大戦終結後の国家間の再編成、離合集散の政治経済的な歴史とも関わっている。
「イングソック」つまり「イギリス社会主義」というイデオロギーに基づいた、「ビッグ・ブラザー」が率いる党が支配する全体主義、監視国家体制の話。市内のいたるところに、「ビッグ・ブラザー」の顔(眼)がにらみをきかせ、テレスクリーンが常に偉大な成果を流し、一方では、テレビの向こう側からテレビ画面を通して随時、監視する機能をもつ、さらに秘密警察(思考警察)によってチェックされている、「現在」を正当化するためには、「過去」の歴史の改ざん(正当化)もよしとする体制・・・。
発表当時、ソ連のスターリン体制を批判したものとして、「反共」の書として世人に受け入れられた。
けれど、こうした固定的な見方では、作者の意図にも反するし、今(2009年)に改めて読んでみて、作者の先見的な視点をふまえ、別のとらえ方も成り立つと感じた。
特に言語問題。思想信条に関わる語彙を減らし、一語=一意味を徹底、また単純化することで、言葉を文字通りの記号化していく作業、ニュースを次々と改ざんして行く作業、こうした国家の中枢機関に勤める、中年の男が、主人公。
国家のあり方に不満を持つこの男が、「プロール」と蔑視される多くの一般大衆の姿に、未来の希望を見いだしながら、束の間の自由(と思っただけにすぎない)恋愛をかなえたものの、味方だと安易に信じた上層部の男によって逮捕、拷問、そして人間改造されての釈放・・。非存在となってしまう。
小説の冒頭で、敵対者を画面に登場させ、観客に憎悪を煽り立て(そうしないと逮捕され、抹殺される)る描写などは、狂信的な宗教団体(カルト教団)のありようをも彷彿させる、など随所に示唆的な怖さを持って読者に迫ってくる。
拷問の場面でも、一気に処刑するのではなくて、じわじわと責めていく。最後に主人公がもっとも嫌う、小動物「ねずみ」を差し向けて、完全な人間改造を成し遂げるシーンなどは、卓越している。
最後に「附録」として、「ニュースピークの諸原理」という論文が掲載されている(出版社からは削るように要請があったが、作者は拒否したとの話だが)。オセアニアの公用語である「ニュースピーク」の解説である。
ここでは、いかに思想改造を行うか、体制批判をさせないか、敵対者への憎悪を煽るかを、言語の面から行っていこうとする取り組みの経過を述べている。言語論・記号論からみても実に面白いものになっている。
この言語体系は、2050年には完成するとされ、1984年当時ではまだ未完成なものとしてある種の批判的文章となっている。
作者がこれを最後に置いたことで、小説ににじみ出た「全体主義」への批判、恐怖、そして阻止を穏やかに、それでいてしたたかに描いてみせた。
発表された1948年当時の、第二次世界大戦終結後の国家間の再編成、離合集散の政治経済的な歴史とも関わっている。
「イングソック」つまり「イギリス社会主義」というイデオロギーに基づいた、「ビッグ・ブラザー」が率いる党が支配する全体主義、監視国家体制の話。市内のいたるところに、「ビッグ・ブラザー」の顔(眼)がにらみをきかせ、テレスクリーンが常に偉大な成果を流し、一方では、テレビの向こう側からテレビ画面を通して随時、監視する機能をもつ、さらに秘密警察(思考警察)によってチェックされている、「現在」を正当化するためには、「過去」の歴史の改ざん(正当化)もよしとする体制・・・。
発表当時、ソ連のスターリン体制を批判したものとして、「反共」の書として世人に受け入れられた。
けれど、こうした固定的な見方では、作者の意図にも反するし、今(2009年)に改めて読んでみて、作者の先見的な視点をふまえ、別のとらえ方も成り立つと感じた。
特に言語問題。思想信条に関わる語彙を減らし、一語=一意味を徹底、また単純化することで、言葉を文字通りの記号化していく作業、ニュースを次々と改ざんして行く作業、こうした国家の中枢機関に勤める、中年の男が、主人公。
国家のあり方に不満を持つこの男が、「プロール」と蔑視される多くの一般大衆の姿に、未来の希望を見いだしながら、束の間の自由(と思っただけにすぎない)恋愛をかなえたものの、味方だと安易に信じた上層部の男によって逮捕、拷問、そして人間改造されての釈放・・。非存在となってしまう。
小説の冒頭で、敵対者を画面に登場させ、観客に憎悪を煽り立て(そうしないと逮捕され、抹殺される)る描写などは、狂信的な宗教団体(カルト教団)のありようをも彷彿させる、など随所に示唆的な怖さを持って読者に迫ってくる。
拷問の場面でも、一気に処刑するのではなくて、じわじわと責めていく。最後に主人公がもっとも嫌う、小動物「ねずみ」を差し向けて、完全な人間改造を成し遂げるシーンなどは、卓越している。
最後に「附録」として、「ニュースピークの諸原理」という論文が掲載されている(出版社からは削るように要請があったが、作者は拒否したとの話だが)。オセアニアの公用語である「ニュースピーク」の解説である。
ここでは、いかに思想改造を行うか、体制批判をさせないか、敵対者への憎悪を煽るかを、言語の面から行っていこうとする取り組みの経過を述べている。言語論・記号論からみても実に面白いものになっている。
この言語体系は、2050年には完成するとされ、1984年当時ではまだ未完成なものとしてある種の批判的文章となっている。
作者がこれを最後に置いたことで、小説ににじみ出た「全体主義」への批判、恐怖、そして阻止を穏やかに、それでいてしたたかに描いてみせた。