おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書70「『垣間見』る源氏物語(吉海直人)笠間書院

2009-12-26 22:18:40 | つぶやき
 ずっと以前、若い青少年たちに向かって「君たち、不倫と垣間見は、日本の文化だ」ということを、しきりに言っていた時機がありました。
 別に、私にのぞき見の趣味があったわけではありません。ただ、垣根越しにさりげなく見える他人の家の、家人のようす・・・。これには興味津々でしたが。おそらく「源氏物語」にかこつけて、そんな話をしていたのです。
 思えば、当時、今度随分若い人と結婚する某芸能人がしきりにマスコミに話していた頃でしたが。「不倫だけじゃないんだ、日本の文化は。」当然、若い諸君は眼が点になっていました。その頃(もう5,6年経ちますか)知人の高校教師に「源氏物語は教えているの? おもしろそうじゃない。」
 高校3年くらいになるとまとめて古文の授業で教えることもあるらしい。「いやね、今使っているテキスト、初めから終わりまで、随所に垣間見の場面を載せてあるんだ、けっこうおもしろい編集方針ですが」
 源氏が若き紫の上を垣間見る「若紫」の場面から、夕霧の六条院での場面など、実に物語の進行と共に、有名なシーンを取り上げているとのこと。
 「快哉」と叫びたくなりました。ま、思春期の生徒にとっていいか、悪いかは判断しかねますが、「源氏物語」の登場人物にとって、垣間見がいかに重要であったのか。それも紫式部という女性の目から描くなどとは大胆な・・・。
 ついでですが、高校の教科書ではあれだけの大部の物語をすべて教えるわけにもいかず、それぞれ編集者の意図が反映された取捨選択されかたをしているらしいのです。
 今回、たまたま手に取ったこの本。そのものずばりの内容でした。こちらは源氏は読んでいるだけ。別に研究するわけでもなく、ただ何となくおもしろさ(垣間見の)を味わっていただけです。「垣間見」の語源的探求から、先行作品としての「伊勢物語」を取り上げながら、「垣間見」に迫っています。
 私などは視覚的(心のときめきは当然ながら)にしか捉えていなかったことを聴覚や嗅覚(時には触覚)などの五感にかかわって垣間見を捉えていくこと。さらに垣間見る側だけでなく垣間見られる側の心理や行動などの分析。「源氏物語」の構成・手法をこういうかたちで捉え直すことに新鮮な印象を持ちました。
 
コメント
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