Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

ホールとサロン(3)

2024年01月30日 06時30分00秒 | Weblog
ショパン前奏曲 嬰ハ短調 op.45
シューマン交響的練習曲 op.13(遺作変奏付き)
シベリウス悲しきワルツ op.44
シューベルト楽興の時 D780 op.94  

 「・・・ポゴレリッチはヨーロッパでは、いわゆるドサ回りをしている。イタリア、スペインの名前もない町の、公民館のようなホールでリサイタルを開いているのである。収容人数は、しばしば200~300人。時折ベルリンやパリの大ホールにも登場するが、あくまで例外。これは言うまでもなく、意識的な選択である。あえて大手エージェントではなく、各国の個人事務所と契約して、メインストリームから外れた道を辿っているのだ(筆者はドイツで、シュタイナー学校の講堂や羊小屋を改築したホールで聴いたことがある)。」(公演プログラム:城所孝吉氏)

 ポゴレリッチは、いわずと知れたピアノ界の奇人である。
 近年は、ショパンのように、ホールよりもサロン的な会場を好んでいるようだ(ホールとサロン)。
 なので、サントリーホールというのは例外に入るようだ。
 足か腰を痛めているようで、杖を突いての登場。
 「(次に弾く曲、または弾き終わった曲の)楽譜を、まるで捨てるように床に勢いよく落とす」などの行動で最初から楽しませてくれる。
 演奏自体は意外にもオーソドックスで、大ホールでも音がよく響くのはこの人の良いところ。
 私が気になったのは、むしろ選曲の方である。
 ショパン、シューマン、シベリウスはいずれも苦悩や悲しみを表現した曲で、最後のシューベルトも「束の間の安らぎ」といった感じの曲である。
 プログラムには「嬰ハ音をめぐる幻想の円環」とあるが、私見では、伴侶を亡くした悲しみからようやく癒えつつある状態を、選曲が示しているように感じた。
 
♪シューマン:アラベスク
♪リスト:愛の夢 第3番
♪ワーグナー(リスト編):イゾルデの愛の死
♪ショパン:バラード 第4番
♪チャイコフスキー:『四季』より
    6月「舟歌」&11月「トロイカ」
♪チャイコフスキー(プレトニョフ編):
   『くるみ割り人形』よりアダージョ
♪ラフマニノフ
  前奏曲 嬰ハ短調「鐘」op.3-2
  前奏曲 ト長調 op.32-5
  練習曲 ト短調「音の絵」op.33-8
  前奏曲 op.32-12 嬰ト短調
  楽興の時 第6番 ハ長調 op.16-6
  ピアノ・ソナタ 第2番(1931年版)

 選曲が好みに合っていたのでチケットを購入。
 やはり「イゾルデの愛の死」(但し、これは略称)を久しぶりに聴きたくなったのである。
 この曲は、ホロヴィッツの「ザ・ラスト・レコーディング」の最後の曲でもある。
 ちなみに、武蔵野市民文化会館の小ホールは、「小ホール」とは言っても400人以上を収容出来るので、「サロン」と言うのは難しいかもしれない。
 それにしても、ラフマニノフというピアニスト&作曲家の凄まじいこと!
 ピアノ・ソナタ第2番などは、あと3分くらい続くとピアニストは死んでしまいそうな曲である。
 ホロヴィッツいわく、
 「ラフマニノフは私より遥か上に存在するピアニストだ。彼の録音は、その凄さの半分も伝えていない。
 こういうアーティストの迫力を味わうには、やはり大ホールではなく、サロン又はそれに近い会場がふさわしいだろう。
 ラフマニノフの演奏をサロンで聴いた人は、卒倒しそうになったのかもしれない。
 
コメント
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