「余談になるが、晩年の大江健三郎は繰り返し四国の森を描いた。筒井康隆が偏愛する哲学者ハイデガーも晩年を森で過ごし、「黒い森の哲学者」と呼ばれた。年を取るとみんな森へ行きたがるものなのか、と思っていたら、「お時さん」でやはり語り手が森を散歩していて、腹を抱えて笑ってしまった。」
私は、本屋に行くと、だいたいまず筒井康隆先生の新作を探す習慣がある。
私は、存命の日本の作家だと、基本的には筒井先生と池澤夏樹さんのものしか読まないのだが(ベクトルD)、やはり筒井先生の新作を真っ先にチェックしたくなるのである。
そういうわけで、「カーテンコール」も即買いして、まずは「お時さん」を読んでみた(折しも、浅草公会堂では「お富さん」が千穐楽を迎える)。
これは、どう見ても、「時をかける少女」のパロディである。
「お時さん」は、「お富さん」をもじったものだが、「時をかける少女」の深町一夫を赤ちょうちん「重松」のおかみに置き換えたのだろう。
主人公である「おれ」の名前も、やはり「お富さん」の「与三」にちなんだ「清三」となっている。
しかも、店の名前と主人公の名前の一字を繋げると、「重松清」となる。
では、「おれ」の友人である「相川」と「野口」は誰をもじったのだろうか?
既に死んだという「野口」は野口冨士男?
・・・などと考えるのも楽しい。