ベートーヴェンが愛用していたブロードウッド&サンズのピアノによるプレ・コンサートがあることを失念して時間通りに会場に到着し、そこでようやく気付いていたく後悔する。
なにしろ、ベートーヴェンはこのピアノを長らく”飾って”おき、調律をさせなかったくらい大事にしたのである(250周年)。
さて、お馴染みの仲道さんによる楽譜の解釈の中で、「4度は天使の音階」というフレーズが出て、ギクッとした。
ベートーヴェンは、音階に関するある思想に基づいて作曲していたということのようであり、演奏家としては、これを理解する必要があるということらしいのである。
「音楽修辞学フィグーラに基づいた言葉があります。音楽を表現するにあたって、聴き手に伝える為の音型というのがあります。・・・
天使の4度。天国に送るかのように、または、天使が優雅な気持ちで過ごしているような情景を思い浮かべながら演奏すると、とても素敵になります。」
「いよいよR.シュトラウスの隠れた名作『平和の日』がコンチェルタンテ・シリーズに登場です。宗教戦争であるドイツ三十年戦争の最後の日を題材にしたこのオペラ、奇しくも今の時勢を示唆する内容と言えるでしょう。今回は、この作品をイラストとともにご紹介します。 」
「セミ・ステージ形式」というのが新鮮で、好印象を抱いた。
指揮者とオーケストラは、ピットに入るのではなく、通常の演奏会方式と同じ位置取りだが、歌手はその前方(客席に近い方)にいて、モニター(客席最前列に3台設置してある)で指揮を見ながら歌うというものである。
これだと、歌手が客席に非常に近い上、「歌手の声が指揮者にぶつかってしまい、(一部の)客席に届きにくい」という演奏会方式最大の欠点(先日の東京・春・音楽祭「仮面舞踏会」でもこの現象がみられた)をクリアー出来る。
ちなみに、このオペラは日本初公演だそうだが、ラストは「精霊」を讃える合唱となる。
(文字通り)スピリチュアルな含意がありそうなので、「音楽修辞学」に”精霊”の音階なるものが存在するかどうかちょっと調べてみたが、どうやら見当たらなかった。
この時代になると、「音楽修辞学」は廃れていたのかもしれない。