パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

思い浮かべる風景はスイスのほうがふさわしい(立原道造 「萱草に寄す」)

2020年09月13日 19時06分42秒 | 徒然なるままに

今も思うのだけれど、立原道造のソネット「萱草に寄す」は
その思い浮かべる風景を彼の暮らした軽井沢ではなく
青い広々としたとした牧草と、青い空、ベランダに花を飾った木造の家
そして目の前にはアイガーの壁が見えるスイスのグリンデルワルトを想像すると
とてもしっくり来る気がする

とてもメルヘンチックで、切なくて、若いときしか感じられなかったり
作ることができない作品で、自分が初めて書き写そうとした詩だ

甘ちょろい、、かもしれないが、これらは静かでとても美しい
一番好きなのは「のちのおもひに」 次は「はじめてのものに」

 のちのおもひに


夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午さがりの林道を

うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた
――そして私は
見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれもきいてゐないと知りながら 語りつづけた……

夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには

夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう

 

はじめてのものに


ささやかな地異は そのかたみに
灰を降らした この村に ひとしきり
灰はかなしい追憶のやうに 音立てて
樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつた

その夜 月は明かつたが 私はひとと
窓に凭れて語りあつた(その窓からは山の姿が見えた)
部屋の隅々に 峡谷のやうに 光と
よくひびく笑ひ声が溢れてゐた

――人の心を知ることは……人の心とは……
私は そのひとが蛾を追ふ手つきを あれは蛾を
把へようとするのだらうか 何かいぶかしかつた

いかな日にみねに灰の煙の立ち初めたか
火の山の物語と……また幾夜さかは 果して夢に
その夜習つたエリーザベトの物語を織つた

今でもこれらを読むと、なぜか心が不安になる
どうやら、最近余裕のない自分が自分自身に戻るためには
これを読む時間が必要かもしれない、、、

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他人からの受け売りだが、実感していること

2020年09月13日 08時51分17秒 | あれこれ考えること

ある本によると、どうやらヨーロッパ人にとっては第一次世界大戦はショッキングな出来事だったらしい
それまでにいくつも戦争をしてきて、それを避けるための知恵が共有されていたと思っていたのが、
無残に打ち砕かれてしまったからだそうだ
このあたりの感覚は、そこにいないと(体験していないと)わからないことかもしれない
東京にいるのと地方にいるのでは今の日本の感じ方が、リアリティの点で随分違うと思われるが
それと似たものかもしれない

「自由・平等・博愛」を掲げて民衆が成し遂げたフランス革命だが
この評価も、当事者の国、隣の国とでは随分違うと思われる
まして無条件にそれを良きものとして受け入れている日本人の考え方は少しばかり観念的すぎるようだ

フランス革命は確かに王政から民衆の手に権力は移った
しかしその後行われた悲惨な出来事、ギロチン、恐怖政治、ナポレオンの専制政治は
当初予想した(目標とした)高貴な未来を生み出しはしなかった
それは観念的に人の理性で考えた世界、未来は必ず良きものとなるの前提が
現実社会では、なかなか実現されない実験結果のようだ

人が理性でこうあるべきと考えたものは、もしかしたら片手落ちではないかと考える人達がいる
人はどうしても何割かの間違いを起こす
あるべき理想の姿の実現を、理性の力のみを信じて方法論を考え実行するのは、結局は間違いを
実行することにならないか、、というのだ
この考え方を持ったのが「保守」と言われる人々で、バークとかトクヴィル、チェスタトン、オルテガで
彼らは過去の人間が苦労して身につけた共有財産のような経験を顧みることなく、
人間の理性のみの力で急激に変革することは望ましいものではない、、としている

この感覚は、今の自分の年齢ではよく分かる
人が試行錯誤してきたものに敬意を払い、なぜそのような知恵に至ったかを顧みることは
現時点だけの視点をもった考え方の不足を補うと思われる
日本では「保守」という言葉は、「復古主義」のように思われているが、実はそうではなくて、
理性のみを盲信し急激な変化を求める人達に対しての言葉であるとするのが世界的な解釈らしい

保守は穏やかな変化を求める、、と保守を自認する人はいう
何代も続くお菓子の老舗は、昔のものを全く同じようにつくり続けているのではなく
時代の変化に合わせて少しづつ不断に変化させていて、それが生き延びるコツで
この考え方こそが「保守」の考え方そのものと説明する

なかなか実体験に基づいた考え方だな、、と思うが、若い時はなかなかこうは考えられない
やはり理想とか正義とかあるべき姿を、まっしぐらに求めてしまう
そこで思い出すのが、どうやらチャーチルの言葉ではなさそうだが、ちょいと有名なことば
「もしあなたが25歳のときにリベラルでなかったら、あなたは心がない。
 もしあなたが35歳のときまでに保守ではなかったら、あなたは脳がない。」
この感覚は、つくづくそうだな、、と思う

ということで、日曜の朝のボケ防止の投稿は、最近読んでいる本のおさらい
自分が考え出したものではなく、先人の知恵の受け売り
(ただ、しみじみ実感しているので)






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