■南シナ海緊張は次段階へ
特集“南シナ海は第二のオホーツク海となる”は全六回を予定していましたが、不測の事態により第七回を掲載する事としました。
中国軍がフィリピンヴェトナム沖の南シナ海へ向け中国本土から六発の弾道ミサイルを発射した、先週アメリカ国防総省関係者が発表した、とNHKが報じました。中国軍は過去にも弾道ミサイルを海上へ発射実験を実施していますが、南シナ海へ向けて発射されたのは今回が初めての事例です。米NBCテレビ報道によれば、対艦弾道弾が発射されたとのこと。
原潜聖域、南シナ海の南沙諸島については従来、中国は1980年代より領域主張を行い、その背景に海底資源開発の目論見があると認識されてきました。東シナ海での我が国尖閣諸島への領有主張と併せ日中等距離中間線中国寄り海域での海底天然ガス掘削と併せ認識されてきた訳です。1990年代には南沙諸島の環礁武力奪取を実施、人工島造成を行いました。
天然資源は目的ではないのではないか、中国は南沙諸島に造成した人工島に、地対空ミサイルやレーダー施設、続いて戦闘機部隊施設や超水平線レーダーの建設を行いましたが、この通しに見合った海底資源開発を行っていません。そして並行し商級戦略ミサイル原潜の量産が開始され、資源ではなく南シナ海そのものを欲している可能性が出てきたのです。
国連海洋法条約に反する中国南沙諸島人工島建設ですが、仮に今後もこの海域において対艦弾道弾試験が非通知で定期的に実施される場合、浮流不発弾の危険もさることながらミサイルそのものが商船に命中する懸念があり、誤爆の危険から商船の航行が阻害される懸念があります。言い換えれば、中国の人工島不法構築を追認する結果ともなりかねません。
中国本土からの弾道ミサイル発射、中国人民解放軍は陸海空軍と並び弾道ミサイル部隊を第二砲兵部隊として重視してきました。その主たる目標は台湾を狙う2000発の短距離弾道弾ですが、2000年代から沖縄を射程に収める准中距離弾道弾を600発、日本本土の全域を射程とする中距離弾道弾を150発と整備しており、その保有数は年々増強されています。
北朝鮮の弾道ミサイル脅威が我が国では強調されますが、保有数では中国が二桁上です。北朝鮮のミサイルが脅威と認識されたのは、実戦に使用する可能性が高かった為です。中国はこれまで、いきなり弾道ミサイルによる攻撃を行う様な、国際公序からかい離した非常識な国家ではないという認識から脅威度が考えられていましたが、今後改まる可能性も。
弾道弾の洋上への発射そのものは珍しい事ではありません、1998年には総選挙中の台湾を威嚇するように台湾海峡へ連続実施、アメリカ海軍が空母2隻を緊急展開させ、弾道ミサイル実験を抑制させた“台湾海峡危機”がありました。しかし、今回のミサイル実験は国連海洋法条約上の公海上に当り、しかも弾道ミサイルは事前警告なしに発射されています。
南沙諸島近海に着弾した、アメリカ国防総省によれば、弾道ミサイルは6月30日から発射実験が開始され、ヴェトナムやフィリピンとの係争地域である南沙諸島に着弾、南沙諸島は中国本土よりもヴェトナム沿岸部やフィリピン沿岸部に近く、特に中国軍が武力奪取し、人工島を造成した為、東南アジアや日本とインド、欧米諸国から非難を受けている海域だ。
国際係争海域への無通知での弾道ミサイル発射、環礁を第三国から武力奪取し埋め立て造成する事で領海と排他的経済水域を主張できるようになっては、地球上の海洋自由原則と領域概念が破綻しかねません、そこでアメリカ海軍やオーストラリア、イギリスとフランス海軍等は航行の自由作戦として中国の領域主張する人工島付近を定期的に航行している。
海上自衛隊は航行の自由作戦には参加していませんが、公海上で在り航行の自由作戦と無関係に航行しているとされています。欧米豪州の英断と海上自衛隊の普通の行動が中国による実効支配の既成事実化を辛うじて防いでいますが、今後こうしたミサイル実験が行われる場合、最悪弾道ミサイル防衛の実戦が突如南シナ海で発生する事態となりかねません。
対艦弾道弾は地対地型の東風21型が転用され、2010年代から開発が進められてきました。半数命中界CEPは350m程度と云われ、これでは30ノットで航行する水上目標へは命中しない為、弾道にクラスター弾頭を採用し、広範囲に子弾を散布する方式が考えられています。逆に考えるならば、商船が自由航行する海域へクラスター弾の脅威が及んだ訳です。
航行の自由作戦への牽制が、中国が行おうとしたミサイル演習の目的なのかもしれませんが、南シナ海は環太平洋包括連携協定TPPを結んだ東南アジア諸国と日本との重要交通路でもあります。今回のミサイル発射、一発ならば誤射かも知れない言い訳も発射されたのは六発、シーレーンへの影響、東南アジア諸国への影響を視てゆく必要があるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
特集“南シナ海は第二のオホーツク海となる”は全六回を予定していましたが、不測の事態により第七回を掲載する事としました。
中国軍がフィリピンヴェトナム沖の南シナ海へ向け中国本土から六発の弾道ミサイルを発射した、先週アメリカ国防総省関係者が発表した、とNHKが報じました。中国軍は過去にも弾道ミサイルを海上へ発射実験を実施していますが、南シナ海へ向けて発射されたのは今回が初めての事例です。米NBCテレビ報道によれば、対艦弾道弾が発射されたとのこと。
原潜聖域、南シナ海の南沙諸島については従来、中国は1980年代より領域主張を行い、その背景に海底資源開発の目論見があると認識されてきました。東シナ海での我が国尖閣諸島への領有主張と併せ日中等距離中間線中国寄り海域での海底天然ガス掘削と併せ認識されてきた訳です。1990年代には南沙諸島の環礁武力奪取を実施、人工島造成を行いました。
天然資源は目的ではないのではないか、中国は南沙諸島に造成した人工島に、地対空ミサイルやレーダー施設、続いて戦闘機部隊施設や超水平線レーダーの建設を行いましたが、この通しに見合った海底資源開発を行っていません。そして並行し商級戦略ミサイル原潜の量産が開始され、資源ではなく南シナ海そのものを欲している可能性が出てきたのです。
国連海洋法条約に反する中国南沙諸島人工島建設ですが、仮に今後もこの海域において対艦弾道弾試験が非通知で定期的に実施される場合、浮流不発弾の危険もさることながらミサイルそのものが商船に命中する懸念があり、誤爆の危険から商船の航行が阻害される懸念があります。言い換えれば、中国の人工島不法構築を追認する結果ともなりかねません。
中国本土からの弾道ミサイル発射、中国人民解放軍は陸海空軍と並び弾道ミサイル部隊を第二砲兵部隊として重視してきました。その主たる目標は台湾を狙う2000発の短距離弾道弾ですが、2000年代から沖縄を射程に収める准中距離弾道弾を600発、日本本土の全域を射程とする中距離弾道弾を150発と整備しており、その保有数は年々増強されています。
北朝鮮の弾道ミサイル脅威が我が国では強調されますが、保有数では中国が二桁上です。北朝鮮のミサイルが脅威と認識されたのは、実戦に使用する可能性が高かった為です。中国はこれまで、いきなり弾道ミサイルによる攻撃を行う様な、国際公序からかい離した非常識な国家ではないという認識から脅威度が考えられていましたが、今後改まる可能性も。
弾道弾の洋上への発射そのものは珍しい事ではありません、1998年には総選挙中の台湾を威嚇するように台湾海峡へ連続実施、アメリカ海軍が空母2隻を緊急展開させ、弾道ミサイル実験を抑制させた“台湾海峡危機”がありました。しかし、今回のミサイル実験は国連海洋法条約上の公海上に当り、しかも弾道ミサイルは事前警告なしに発射されています。
南沙諸島近海に着弾した、アメリカ国防総省によれば、弾道ミサイルは6月30日から発射実験が開始され、ヴェトナムやフィリピンとの係争地域である南沙諸島に着弾、南沙諸島は中国本土よりもヴェトナム沿岸部やフィリピン沿岸部に近く、特に中国軍が武力奪取し、人工島を造成した為、東南アジアや日本とインド、欧米諸国から非難を受けている海域だ。
国際係争海域への無通知での弾道ミサイル発射、環礁を第三国から武力奪取し埋め立て造成する事で領海と排他的経済水域を主張できるようになっては、地球上の海洋自由原則と領域概念が破綻しかねません、そこでアメリカ海軍やオーストラリア、イギリスとフランス海軍等は航行の自由作戦として中国の領域主張する人工島付近を定期的に航行している。
海上自衛隊は航行の自由作戦には参加していませんが、公海上で在り航行の自由作戦と無関係に航行しているとされています。欧米豪州の英断と海上自衛隊の普通の行動が中国による実効支配の既成事実化を辛うじて防いでいますが、今後こうしたミサイル実験が行われる場合、最悪弾道ミサイル防衛の実戦が突如南シナ海で発生する事態となりかねません。
対艦弾道弾は地対地型の東風21型が転用され、2010年代から開発が進められてきました。半数命中界CEPは350m程度と云われ、これでは30ノットで航行する水上目標へは命中しない為、弾道にクラスター弾頭を採用し、広範囲に子弾を散布する方式が考えられています。逆に考えるならば、商船が自由航行する海域へクラスター弾の脅威が及んだ訳です。
航行の自由作戦への牽制が、中国が行おうとしたミサイル演習の目的なのかもしれませんが、南シナ海は環太平洋包括連携協定TPPを結んだ東南アジア諸国と日本との重要交通路でもあります。今回のミサイル発射、一発ならば誤射かも知れない言い訳も発射されたのは六発、シーレーンへの影響、東南アジア諸国への影響を視てゆく必要があるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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そういった意味において、インド海軍と海自との共同演習をインド洋で実施する意味は大きいですね。
それから、中長期的には、パキスタンへのアプローチも重要になりますね。
それと、地味ですが、ミャンマーの民主化支援と自立した経済発展への支援が最も重要かもしれません。
パワーバランスを考えながら、アジア各国の海上警察の強化と日本商船護衛の為に航海が必要です。
気になるのは護衛艦が商船を護衛できるのか?
今後、建造される、安価な船に僚艦防御機能は欲しいです。
地域的な問題ではなく、海洋自由原則をグローバルに認め海洋を発展に用いるか、海洋閉塞として国際公序と対立するか、という視点が重要であり、南シナ海の人工島を起点とする中国主張は無視する、という姿勢が重要か、と
大陸棚は寧ろ逆ではないでしょうか、地図の通り中国本土から南沙諸島まで大陸棚は伸びていません、寧ろ南沙諸島はヴェトナムとフィリピン、マレーシアの大陸棚に属しています
沖縄で日米安保破棄を口走った候補が当選する可能性が高そうなのが、ちょっと
安保破棄しても、充分に領域やシーレーン、在外邦人を保護できる防衛力を整備する、というならば、議論の余地はあるのですが、ね。その場合当方は、そんな防衛力を担保する国力はあるのか反論しますが
安保破棄となればアメリカは北東アジアはもちろん南アジアにかけての地域安定に関与できません、それを日本が肩代わりするということ
アメリカは世界のあらゆる場所で様々な軍事演習を繰り返している。それらは非難しないのに、中国の自衛的防衛訓練を非難し、中国脅威論を喧伝しようとするのは、これどういうことか?背後にある意図を感じざるを得ない。
アメリカは米本土と無関係な地域、例えば例のイラン近海で恫喝的訓練をやっている。中国が中国の近海で訓練する事がなぜいけないのか?納得のできる説明を求める
そうですね、国際公序が守られ、公海上において、各国の自由な活動が保証されることが死活的に重要ですね。
人民の目様
意図に違いがあるんです。
何度も申し上げていますが、ご理解頂けないようですね。
国際公序を守ることを目的としているのか、それとも自国の利益のみを追求する目的なのかという違いですね。
自由で法的安定性が得られ、かつ予測可能性が担保され、公平に扱われる国際公序の維持がアメリカの目的なので、”有志連合”で公海上の安全を確保しようという動きが出てきますし、それに賛同する国が出てくる訳です。
一方、中華人民共和国の公海上での行動に賛同する国が現れないのは、賛同したとしても自由で公平に扱われない可能性があるからでしょうね。それから、法的安定性、予測可能性についても、全く過去の蓄積が無い上に、現在の国際公序に勝る部分が無い事から、賛同国が出てこないのでしょう。
まあ、「なぜ自国には許されないのか」とか「大国のふるまい」とかいった、自国の権利、利益を追求する振る舞いを取っている限り、今の国際公序により確保されている、”自由”、”法的安定性”、”公平”さが、より良くなると思う国は出てこないでしょうね。むしろ、自国にとって、より不利益が増すと判断するのでは?
イージス艦やステルス機を導入できるのか?みたいな話もあります
防衛費を増やしても装備が不充分では無意味
科学的な根拠が無いし、前政権より継承して来た点も薄いです。単純に不沈空母として埋めた感じですね。
アジア地域の戦争にならない事を祈ります。