「民主党に勝てる総裁選び」を合い言葉に自民党総裁選が告示され、麻生太郎さんら5人が立候補しました。
民主党内では、通常国会中から「福田さんが辞めたがっているようだ」「福田さんの目が安倍さんの末期と同じ目になっている」などと福田さんが辞任するとの観測が流れていました。いずれにしろ、「自民党は表紙(総裁)を変えてから解散総選挙に持ってくる」という認識は広く共有していました。
ところで、「民主党が最も恐れた総裁」の候補がなぜか、きょう告示の総裁選に出馬せず、臨戦態勢の民主党に一服の安堵をもたらしました。
「民主党が最も恐れていた総裁」候補とは、ナント!財務相→自民党政調会長→国土交通相の谷垣禎一(たにがき・さだかず)さんだったのです。
「小沢民主党vs谷垣自民党」を仮定した仮のポスターを作ってみました。
参考エントリー)ポスター仕立て】自民党総裁選の投票の目安
では、上記エントリの中から、最終的に立候補した5人を並べてみます。
どうでしょうか。
実は盲点(イメージ・ギャップ)なのですが、谷垣さんは「今までの自民党総裁顔」をしていないのです。
東大法卒→父(谷垣専一元郵政相)の世襲で衆院議員→保守本流・宏池会で頭角を現す→派閥領袖というコースを取りながら。
谷垣さんは「官僚出身」という誤ったイメージがありますが、弁護士です。二世議員ですが、初代である父親が早く亡くなり、跡をとったという意味では小沢さんと似通った経歴です。
小沢さん(岩手4区)も谷垣さん(京都5区)も地方部選出で選挙に強い。ともに初入閣前に衆院議院運営委員長をやりました。2人とも国家公安委員長をやっています。科学技術庁では小沢さんが政務次官、谷垣さんは長官を経験しています。自民党ではともに「総務局長」をやっています。
小沢さんと谷垣さんは実に政治キャリアが似ているんです。
地味だった谷垣さんは“加藤の乱”で、内閣不信任案に賛成票を投じようとする加藤紘一・宏池会会長に向かって「加藤先生ダメですよ、ひとりで突撃なんて。あんたは大将なんだから!」のせりふで一躍有名になりました。その後、加藤さんとは別れましたが、誠実なイメージは今でも残像としてあります。
もう一度並べてみます。
小沢さんは66歳、谷垣さんは63歳です。
小沢さんは66歳、麻生さんは68歳(=9月20日誕生日)
政治キャリアが似ていて、小沢さんより若く、コワモテでない「谷垣自民党」の出現が杞憂に終わり、民主党議員たちは安心して、地元に帰りました。
政権交代を阻止する最後の秘策だった自民党総裁選ですが、5人が立候補するというお祭り騒ぎの中で、みずからチャンスを失いました。
痛恨のミスをしでかした自民党には政権担当能力がないと断じるべきでしょう。
ところで、なぜ谷垣さんが出馬しなかったかというと、麻生さんと同じ「福岡県選出・当選9回生」で犬猿の仲の古賀誠・宏池会会長が新総裁からの報復人事を恐れて、「麻生支持」を決めたからだそうです。何とも自民党らしいフィナーレです。
自民党総裁選告示、5氏が立候補届け出(読売新聞) - goo ニュース
次期衆院選に臨む与党の「選挙の顔」を選ぶ自民党総裁選が10日告示され、麻生太郎幹事長(67)(麻生派)ら5氏が届け出た。
国会議員票固めで優勢に立つ麻生氏を、他の4氏が追う構図となっている。総裁選では、経済政策に加え、安全保障政策などが争点となる。22日の両院議員総会で、衆参両院議員と都道府県連代表の投票により新総裁を選出する。
立候補を届け出たのは、麻生氏のほか、小池百合子・元防衛相(56)(町村派)、与謝野馨経済財政相(70)(無派閥)、石原伸晃・元政調会長(51)(山崎派)、石破茂・前防衛相(51)(津島派)。
総裁選に5人が立候補するのは、1972年に立候補制が導入されて以降、最多。女性議員の立候補は初めて。棚橋泰文・元科学技術相(津島派)は、推薦人20人を確保できなかった。
立候補受け付けは午前11時から30分間、党本部で行われ、各陣営は20人の推薦人名簿などを総裁選管理委員会に提出。5氏はそれぞれ出陣式などに臨んだ。
麻生氏の出陣式には国会議員125人と代理46人が出席し、投開票日の時点で投票権を持つ国会議員386人の44%に達した。麻生氏は「地方の格差をどうするか。ひとつひとつの声を大切にし、日本の底力を訴えたい。誰が民主党と戦うのかというのが一番(大事)だ」と語った。
5氏の間では、2011年度に基礎的財政収支を黒字化する政府目標に関し、景気回復優先で先送りを容認する立場の麻生氏と、目標堅持を唱える与謝野氏ら4氏との違いが鮮明で、景気対策と財政規律のあり方が最大の争点となる