【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

所信表明で異例のスタンディングオベーション 起こしたのは新人の斉藤進さん

2009年10月26日 23時59分59秒 | 第173臨時会(2009年10~12月)政治主導

 政治に必要なのは「言葉と想像力とほんの少しのお金」と言われますが、これに加えて「態度」で政治が動く時代を迎えつつあるといえます。

 「幸せなら態度で示そうよ」という歌がありますが、日本国民だから日本語が堪能とは限らないし、コミュニケーションの取り方が難しい時代です。ネット社会もしかり。だからこそ、今こそ態度でハッキリ示すことが大事です。

 第173臨時会が26日召集され、鳩山由紀夫首相が政権交代後初めての所信表明演説をしました。この演説終了時に「スタンディングオベーション」(立ち上がった拍手を送り讃えること)が起こるという日本の国会では珍しい出来事があり、話題になっているようです。

 今の衆議院本会議場では、「腹切り問答」「粛軍演説」「吉田野坂論争」など様々は歴史的出来事が起きました。2009年10月26日の「鳩山所信表明スタンディングオベーション事件」も議事録には残らないけど、国会史に残るかも知れません。

 私は傍聴席で見ていましたが、このスタンディングオベーションは新人の斉藤進さん(静岡8区)が起こしたように見えたので、直接確認したら、やはりその通りでした。

 斉藤さんは52分間の鳩山スピーチの文脈に沿って、「よし!」「そうだ!」といったあいの手を入れていました。斉藤さんは学生時代に弁論部で活躍していました。中央大学辞達学会というサークルの代表を務めた経験があります。辞達学会は海部俊樹首相が輩出するなど政界に多くの人材が出ています。海部元首相は早大編入学後に早大雄弁会に入っています。傍聴席からかなり遠いので確認は難しいのですが、阿知波吉信さん、坂口岳洋さん、畑浩治さんら数人の新人が演説にあわせて、上手くあいの手を入れているように見受けられました。

 このため興味を持って見ていたら、所信表明終了と同時に議長から見て「右2列2番」の座席(座席番号442)斉藤議員が座席から飛び跳ね、拍手をし、そこから「ウェーブ」ができたように見えました。
 ウェーブは周辺の1年生議員に広がり、徐々に後列の中堅、ベテランの議席にも広がっていきました。中堅の国対副委員長は戸惑った顔をしながらも、ウェーブがやってきたのでしかたなさそうに立ち上がり、やがて、民主党議席全体が総立ちになりました。当たり前ですが、自民党議席は全員座ったまま、拍手もしませんでした。

 ウェーブはさらにひな壇(閣僚席)まで駆け上がり、菅副総理、岡田外相の2人の閣僚も立ち上がって拍手をしながら、鳩山首相が席に戻ってくるのを出迎えました。

 議長の真正面の座席に座っている他の新人は「自民党議員の野次がひどいなあと右を見ていたら、左からウェーブがやってきたので、思わず立ち上がらざるを得なかった」と証言しています。

 斉藤さんは先輩議員からの指示は一切ないとし、アメリカ議会の大統領教書演説で、政策項目ごとに与党議員、あるいは与野党議員が立ち上がって大統領に賛辞を送るのをみて、当然そうするものだと考えていたそうです。

 与党・民主党の新人には、国会での質問の機会や、議員立法、質問主意書の提出など「表現の自由」が制約されるのではないかと懸念しています。斉藤さんはまさに「態度」で意思を示したことになります。

 中央大学で弁論を鍛え、東京都小平市議会議員を経て、浜松市中心部の静岡8区に政治活動の拠点を移してからも徹底的な日常活動で、現職閣僚を破って初当選した政治青年が実質、国会デビュー日に衆院本会議に吹かせたフレッシュな風。

 何だか新しい日本がスタートした感じがしました。

 下の動画は、懇親会上でのインタビューなので、笑い声が入っています。どうぞご容赦くださいませ。



 
 [写真]赤丸が斉藤進議員

第173回国会における鳩山内閣総理大臣所信表明演説-平成21年10月26日 http://www.youtube.com/watch?v=YC9Xf4cIeSk
 52分25秒過ぎ見ると、斉藤議員からウェーブが始まったことが分かります。