【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

原口総務相が「予算」→「執行」にもムダを発見する

2009年10月19日 23時28分51秒 | 第172特別会(2009年9月)鳩山政権発足

 国家戦略室が19日、2010年度予算から各府省の副大臣・政務官に「予算執行監視チーム」を作り、予算の執行状況を常時チェックさせる案をまとめたそうです。

 これに関連するのですが、19日夜のBS11「インサイドアウト」に出演した原口一博・総務相が興味深い話をしていました。

 予算は国会が議決します。その予算は各府省内で「箇所付け」という作業のうえ、執行されます。箇所付けとは事業名や発注先を決めて、お金を支払う具体的な相手先を決めることです。

 総務省政務三役が省内の

 予算→箇所付け→執行(支払い)

 のプロセスを調べたところ、

 「100万円のモノ」を購入(調達)するうえで、そのプロセスに2つの商社が入っていて、150万円のお金の流れになっている執行状況を発見したそうです。これはちゃんとした“競争入札”で執行されていたそうです。

 この箇所付けは国会のコントロールが届かない、各府省内で行われる作業です。例えば国交省の箇所付けを役人から聞き出そうと、国交族議員も必死でした。つまり、国交省という伏魔殿に隠れた不透明なお金の流れでした。族議員の働きかけに官僚が応じることもあったでしょうが、これにより、霞が関官僚>族議員に対して上位に立つという、いびつな権力構造をもたらしました。

 原口総務相は番組で「野党時代は甘かった。もっと細目に踏み込んでいれば良かった」と“反省”しながらも、「当時の政府の人たちも(私たちのように)やっていれば見えていたはずだ」として、自民党政府を批判しました。

 つくづく、国民のお金がもったいなく使われ続けてきたことが残念です。

 なお、国の予算の執行状況をまとめた「決算」は、国会でも衆院決算行政監視委員会、参院決算委員会が審査しています。開かれた国会での決算審査は大事です。しかし、開かれた国会が議決した予算を、各府省がちゃんと執行しているかどうか、政治家がチャックすることは時系列としてはそれより前の話です。決算に優先することだと思います。

 国家戦略室では、予算の執行状況もネットで公開する考えがあるようで、ぜひ実現してほしいと思います。

時事ドットコム:予算執行監視チームを設置=「複数年度」は11年度から-国家戦略室

 政府の国家戦略室は19日、予算の無駄遣い根絶に向けた予算編成過程の改革案を策定した。2010年度から、各省庁に副大臣・政務官による「予算執行監視チーム」を設置して執行状況を常時チェックするほか、行政サービスの効率化を目指す政策達成目標を導入することなどが柱。鳩山政権の予算改革の目玉と位置付けられた複数年度予算については、11年度からの実施を目指す方針が示された。
 改革案は「予算編成のあり方に関する検討会」(座長・菅直人副総理兼国家戦略担当相)が同日の会合で取りまとめた。国家戦略室担当の古川元久内閣府副大臣は会合後の記者会見で、「新政権では納税者の視点に立って予算編成を行い、1円たりとも税金の無駄遣いは許さない」と強調。今後、政府内で改革案に盛り込んだ施策の具体化を目指す。

岡田克也のやさしさ原理主義

2009年10月19日 20時25分46秒 | 岡田克也、旅の途中
 与党になってから、政務三役もそれ以外も新人も議員、秘書ともピリピリしたムードが漂っていて、このところ、国会に行っていません。

 来週からは時々行くでしょうから、よろしくお願いします。

 ここら辺で、少し軽いテーマにしたいところですが、とりあえずやや軽いテーマ、優しさを感じるテーマです。

 岡田外相がきのう18日夕方、横浜駅前で、参院神奈川補選(25日投開票)の金子洋一候補=民主党公認・国民新党推薦の応援にかけつけました。

 首都高速の霞が関入口から横浜出口までは30分ほどで行けます。しかし、岡田外相は「電話でやりとりできる外相50人作り」を目標に世界を駆け回っていますから、よく行けたなあ、という気がします。

 とはいえ、岡田さんは絶対的に神奈川補選の応援に入ると思っていました。

 民主党三重県第3選挙区総支部長の岡田さん。実は金子洋一さんは少し前まで、三重5区総支部長だったのです。四日市工業地帯を中心とする3区から近鉄に乗って南下し、県都・津を越えてもっと南に行き、志摩半島に行くと、そこが三重5区です。なんといっても、伊勢神宮があるのが特徴です。

 神奈川県出身の金子さんは、三重5区に落下傘で2回挑戦しましたが、自民党現職・三ツ矢さんの厚い壁にはばまれました。

 地元出身者を求める声もあり、第45回衆院選は元県会議長の息子である、藤田大助さんが闘いました。最後に大逆転できそうな気配でしたが、危機感を感じた三ツ矢議員が自ら「比例重複を辞退」したのが、地元の方に心意気を感じさせたようで、三ツ矢氏が当選し、藤田さんは比例復活で初当選を果たしました。

 岡田陣営では、金子さんに総支部長を明け渡してもらって藤田さんが出たこともあり、5区の方も必勝したいということで、山を越えてサポートしましたが、小選挙区で勝てず残念、という声が上がりました。

 城下町・津が地盤の中井洽国家公安委員長(三重1区)、工業地帯・鈴鹿が地盤の三重2区中川正春・文科副大臣(科技担当)、工業地帯であり商都である四日市3区の岡田外相に続き、ベッドタウン4区では森本哲生さんが小選挙区初当選。5区では藤田大助さんが比例初当選ということになりました。

 海千山千の三重県は、市域ごとに独立した気風が高いとされています。神奈川生まれの落下傘ということになると、苦労が絶えなかったと思います。

 故郷に帰り、新しい立場から国政をめざす金子洋一候補。このところ、私は有料ブログ併設の準備で過去のエントリーを振り返る作業をしていたのですが、大事な局面で金子さんから助かるコメントをいただきました。優しさと官庁エコノミストの誇りを持って、国政にチャレンジする金子候補。

 岡田さんは約束を必ず守る人だと言われています。金子さんの応援に駆けつけた岡田さんに優しさ原理主義を感じました。

 新聞の世論調査では、3分の1以上の有権者が投票先を決めていないということで、低投票率確実の厳しい闘いです。そして、“帰郷”とはいえ、国替え候補である金子さんにとってはこの選挙が「ラストチャンス」であることを、是非ともご理解いただきたい。

 参院神奈川補選(定数1)には、いずれも新人で、
 自民党の角田宏子さん
 共産党の岡田政彦さん
 民主党の金子洋一さん(47)元内閣府職員=国民新党推薦
 諸派の加藤文康さん

 の4人が立候補しています。
 
民主党:岡田外相、神奈川で街頭演説 発足1カ月の鳩山内閣へ支持求める

 岡田克也外務大臣は18日夕、神奈川県の横浜駅前で街頭に立ち、鳩山内閣への支持を求めた。

 岡田外相は、発足1カ月が過ぎた鳩山内閣の掲げる政治主導の取り組みについて、政治家が中心になり、国を動かしていると指摘。国民の皆さんも、「目に見えて変わってきている」「今までと違うやり方が実現されている」と実感しているのではないかと思うと、自らの認識を示した。

 また、日ごろの直接対話によって国民の皆さんが肌で感じることを受け止めているかどうかが、政治家と官僚の違いであるとの見解を述べ、「国民の皆さんの気持ちを政府の中に取り入れることは、政治家でないとできない」と主張。政治主導の新しいやり方を、更に進める考えを語った。

 外交については「国民の信頼と支持の上に立って初めて力を得る」ものであると述べ、その認識に立って密約の事実調査を指示したと報告した。また、鳩山由紀夫総理大臣の就任後の首脳外交について、首脳間の信頼関係を構築し、距離感を縮めることができたと振り返った。

 岡田外相は、自身のアフガニスタン、パキスタン訪問にも言及したうえ、「国民の皆さんの支持があるからこそ鳩山内閣は仕事ができる」と述べ、閣僚と民主党をさらに支えてほしいと訴えた。

 演説会では、神奈川県関係の衆参両院議員が揃い、党活動への支持を求めた。

前原大臣の北方領土視察「終戦間際のどさくさ」発言にみる国際認識 

2009年10月19日 05時19分05秒 | 第172特別会(2009年9月)鳩山政権発足

[写真]海保の船から北方領土をみる前原大臣と泉ケンタ政務官=NHKニュース

 内閣府の沖縄北方担当大臣を兼ねる前原誠司さんが17日、根室市や、国交相としての指揮監督下にある海上保安庁の船で北方領土を視察しました。

 この中で北方領土について、「終戦間際のどさくさにまぎれて不法占拠されたもの」との認識を示しました。

 ◇

 沖縄北方の政務三役は、前原誠司大臣(京都2区、当選6回)、大島敦・内閣府副大臣(埼玉6区、4回)、泉ケンタ内閣府政務官(京都3区、3回)で構成されているようです。

 歴史のカンタンなおさらいです。

 昭和20年(1945年)8月14日午前2時、閣議はポツダム宣言の受諾について、大臣の賛成と反対が同数になり、内閣は機能不全におちいりました。今の憲法なら総理の判断が最終決定になりますが、明治憲法ではこの場合の規定がありませんでした。

 この閣議は御前会議でした。総理大臣である鈴木貫太郎は、昭和天皇に歩み寄り、頭を下げ、“御聖断”を仰ぎます。御前会議は、天皇に発言権はなかったのですが、かねてより終戦をのぞんでいた昭和天皇はうなずきました。この瞬間に、終戦が決まり、翌15日正午、全国民に向けて発表されました。

 さて、ソ連軍が宣戦布告もなしに、北方領土に侵攻したのは、8月28日のことです。これを前原大臣は「終戦間際のどさくさ」と言っていることに違和感を覚える方は、多いでしょう。

 日本外相と陸軍参謀総長が東京湾上に停泊した米国の戦艦・ミズーリ甲板上で連合国への降伏文書に署名・捺印したのは、9月2日のことです。

 私はロシア人監督が昭和天皇を描いた「太陽」という映画を見たときに初めて気付いたのですが、世界的に「先の大戦の終戦日」は「1945年9月2日」のことのようなんです。8月15日は国内に発表しただけであり、日本外相と参謀総長が東京湾の米軍の船の上で、降伏文書に署名した「9月2日」が終戦であり、その日以降が戦後なんです。

 だからソ連軍が宣戦布告無しに北方領土に侵攻した8月28日はまだ戦後ではなかったといえます。

 とはいえ、日ソ(日露)2国間では、「千島・樺太交換条約」という有効な国際法があり、大西洋憲章は米英ソの3国間の「世界分割」の約束に過ぎません。国際法上、北方領土は絶対的に日本の領土であり、その侵攻も、戦線布告なしに終戦を表明してから正式文書に調印するまでの「空白期間」を狙っただまし討ちです。またソ連は北方領土のみならず、東日本の占領を狙っていた可能性が高く、大義名分のない国際法違反であることは確実です。

 「北方の領土かえる日、平和の日」

 これは内閣府ビルや東京駅八重洲口にある政府の看板です。
 
 北方領土の不法占拠をやめさせ、日露平和条約を結ぶことは、2国間関係にとどまらず、国際法が有効な国際社会を確保するために、世界へ、未来へ、日本がやらなければならない国際貢献です。

 ぜひとも女優の淡島千景さんら北方領土出身者がご健在のうちに解決したい外交案件です。

 それと、一つだけ付け加えさせてください。小泉首相が調印した「日朝平壌宣言」も有効な2国間条約です。ジレンマがあります。が、私は「日朝平壌宣言」に署名した小泉首相の判断とその後の対応、“罪”と言ってもいいでしょうが、たいへん重いものだと考えております。

 資源小国である日本は、条約・国際法をしっかり守る、「小粒でも世界から尊敬される国」を目指さなければいけないとの理念を私は持っております。 

前原沖縄北方担当相:北方領土を視察 「不法占拠」と発言 - 毎日jp(毎日新聞)
 前原誠司・沖縄北方担当相は17日、北海道根室市の納沙布岬を訪れ、対岸の北方領土の島々を視察した。その後、根室海上保安部の巡視船に乗り洋上からも国後島を視察した。

 前原氏は視察後、記者団に「歴史的に見ても国際法的に見ても(北方領土は)日本固有の領土。終戦間際のどさくさにまぎれて不法占拠されたもの。やはり四島の返還を求めていかなければならない」と語り、四島返還の実現に向けて取り組む姿勢を強調した。

 領土問題をめぐっては、麻生太郎前首相が「(ロシアが北方領土を)不法占拠している」と発言し、ロシア側が強く反発した経緯がある。【本間浩昭】