【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

日本郵政社長に斎藤次郎さん 皮肉、現・民主党寄りで天下れなかった元大蔵事務次官

2009年10月21日 21時57分14秒 | 霞が関人事


 政治とは何とも皮肉なものです。

 民主党マニフェストは「政権構想 第5策」で、「天下り、渡りの斡旋を全面的に禁止する」としています。

 これには抵触しませんが、きょう、日本郵政の新社長に内定した斎藤次郎さんは、細川内閣の大蔵事務次官です。斎藤次郎さんは民主党系の細川政権に近かったということで、その後の自社さ政権で干され、長く、天下りできなかった元事務次官なのです。

 大蔵事務次官の天下り先というと、日銀総裁、さくら銀行頭取(全銀協会長)、横浜銀行頭取(地銀協会長)、東京証券取引所理事長、国民金融公庫総裁が定番でした。

 斎藤次郎さんは、1995年の大蔵事務次官退任後も、天下りできず、「小沢自由党」が自自連立で与党入りしていた2000年にようやく東京金融先物取引所のトップになり、きょうまで9年間務めています。日銀総裁になった先輩次官に比べると、かなり格落ちといえます。

 小沢さんと斎藤さんは良好な仲が続いたようで、一昨年秋の「大連立騒動」に斎藤さんが関わっていたことは、朝日新聞の松田京平記者のインタビューで小沢さんも認めていました。

 今回の人事はその仲を知っている亀井静香・金融郵政担当相の深謀遠慮があるような気がします。亀井さんが小沢さんに電話したら「ほーっ」と答えたそうです。

 私も斎藤次郎・日本郵政社長に賛同します。その理由は次の通りです。

 私は西川善文社長を“クビ”にすることについて、2つの懸念を持っていました。

 ①日本で最も影響力が大きい三井住友銀行出身の西川さんがクビを切られた「後がま」を務めようとする財界人がいると思えない。

 ②日本郵政の代表取締役には西川さんの他にもう一人、高木副社長がいます。学者・文化人が社長になると、高木副社長に主導権を握られると思われる。

 代表取締役副社長の高木祥吉さんは財務官僚出身の元金融庁長官。竹中平蔵大臣のもと、内閣官房で「郵政民営化準備室副室長」をした人です。

 第171通常国会に参考人として呼ばれた高木副社長の答弁はある意味で、見事なものでした。

 民主党(当時野党)議員が「竹中大臣からどんな指示があったか?」と聞くと、「記憶にありません」。議員が具体的な証拠を示すと、「忘れていましたが、そう言えばたしかにそういうことがありました」。その上で、高木さんは「そう言えば竹中大臣からの指示はたしかこういうものでした~~」と新しい情報を明かした上で、議員が審議の流れを持っていきたい方向へうまく誘導していきました。だから、高木副社長は、民主党(当時・野党)から批判されませんでした。

 斎藤次郎社長、高木祥吉副社長という財務官僚コンビが日本郵政を仕切ることになりました。

 旧大蔵省と旧郵政省は仲が悪かったそうです。聞いた話ですが、郵便貯金の口座間の送金に関する資料は、大蔵省国税庁が要求しても、郵政省は出さなかった、と聞いたことがあります。

 それ以上に大事なのは、財務省理財局が発行する日本国債の引受先の30%以上が郵便貯金で、かんぽを含めると4割以上を「日本郵政」が保有しているということです。

 ですから、「日本の借金800兆円」という財務省キャンペーンには、そんなに恐怖心を持つ必要はありません。外国からの借金は50兆円ほどと見られます。100年前(日露戦争)の方が深刻だったことでしょう。とはいえ、先進国ではかなり悪い状態になっています。

 この話をすると、よく「(国債と郵貯を)チャラにはできないの?」と聞かれますが、チャラにすると、長期金利が混乱します。しかし、財務省コンビが主導権を握ったことで、日本郵政の資産を縮小していくことで、財政の健全化が図れると期待しています。

asahi.com(朝日新聞社):日本郵政社長に斎藤次郎・元大蔵事務次官 亀井氏が発表 - ビジネス・経済

 亀井静香郵政改革担当相は21日記者会見し、日本郵政グループの持ち株会社である日本郵政の次期社長に、元大蔵事務次官の斎藤次郎・東京金融取引所社長(73)が内定した、と発表した。「郵政民営化見直しに対する考え方が連立3党と一致している」ことが起用の理由。ただ、「脱官僚」を掲げる鳩山政権の方針とは矛盾するだけに、斎藤氏は郵政事業の立て直しの具体的な成果が問われる。

 西川善文社長(71)が20日に辞任を表明し、後任人事が焦点になっていた。斎藤氏は28日の取締役会で西川氏が正式に辞任した後、臨時株主総会などを経て社長に就任する見通し。政府は20日に閣議決定した基本方針に基づき、郵政民営化の見直し作業を進めるが、斎藤氏は日本郵政のかじ取り役として、この作業にも関与するとみられる。

 斎藤氏は元大蔵官僚。93年の細川内閣時の大蔵事務次官で、民主党の小沢一郎幹事長とも親しい。細川政権が打ち出して挫折した「国民福祉税」構想の立案者ともされる。東京金融取引所では約9年にわたりトップをつとめ、取引の活性化を進めてきた。

 亀井氏は会見で、斎藤氏に昨夜、社長就任を正式に打診し、今朝、承諾の連絡を受けたことを明かした。斎藤氏とは「長い間の友人」といい、「剛直で竹を割った性格で、妙な利害関係に振り回されない人」と評価。郵政事業についても「いろいろと意見交換してきた」という。

 元官僚である点については「斎藤氏が旧大蔵省を辞めてからすでに10年以上が経過している」と述べ、問題ないとの考えを強調した。

 郵政事業を所管する原口一博総務相も21日、視察先の佐賀市内で記者団に対し、「金融の中でしっかりとした仕事をされてきた方。最適な方に引き受けていただいた」と歓迎した。

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 斎藤 次郎氏(さいとう・じろう) 59年旧大蔵省(現財務省)に入省、主計局長などを経て93年から95年まで事務次官。00年から東京金融先物取引所(現東京金融取引所)理事長を経て、04年から社長。73歳。