【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

25%削減にTOYOTA社長が“アクセルGO” 国民75%支持

2009年10月05日 13時58分51秒 | 岡田克也、旅の途中


[写真]トヨタ自動車の豊田章男社長(日経新聞の写真をトリミングさせていただきました)

 10月5日付読売新聞に世論調査(電話RDD、10月2日~4日)の結果が出て、一つ驚くべき数字がありました。

 民主党マニフェストに盛られた5つの政策への賛成-反対が載っていました。

 項目          賛成(%)-反対(%)
 子ども手当       57-39
 高速道路無料化    26-69
 インド洋給油終了    48-37
 温暖化ガス25%削減 75-19
 八ツ場ダム中止     44-36

 となっております。第45回総選挙の民主党得票率は小選挙区47・4%、比例42・4%で、野党(自公共)に投票した人や棄権した人も世論調査の対象になってきますから、ある程度の厳しい数字はやむを得ないところです。

 しかし、「温暖化ガスを2020年までに1990年比で25%削減する」という地球温暖化(気候変動)への対応の枠組みについては、ナント75%が賛成、19%が反対、6%が「答えない」ということで、とても大きな支持を集めています。

 気候変動サミットや国連総会で鳩山由紀夫総理が「25%」を国際公約したときには、国内でかなりの批判があったように感じていたので、かなり意外。

 これに先立つ3日付日経1面は、トヨタ自動車の豊田章男社長が2日の講演で、“25%削減”について、「ブレーキをかけるのではなく、アクセルを踏んでいく」「社内で現在、スタディー中だ」「電気自動車や燃料電池車などの投入を考えざるを得ない」と前向きに取り組んでいく考えを示しました。

 

 豊田社長は、鳩山政権が「どういう施策を探ると実現できるかを検討している」として、政府との意見交換が必要との認識を示したようですが、さすがは世界のTOYOTAと思わせる発言も。

 「自動車業界は100年に1度の変革が求められている」

 「顧客が何を欲しがっているかをとらえ、技術を安く提供できる会社が

 今後の100年を生き抜いていける

 「正直、今は勉強中だが、

 鳩山首相が国連総会の場で発言しただけに、我々としても一生懸命やっていく

 100年前、「TOYOTA」の名前を知っている人が世界に何人いたでしょうか。豊田章男さんは豊田家の4代目、自動車創業後は3代目になりますが、100年先を見るトヨタ・スピリッツの継承を感じます。

 私は昨年2月4日付のエントリー(http://blog.goo.ne.jp/kokkai-blog/e/6f06e19c7c9f37230f12d77c6d60c7fd)で、

(上記エントリーから引用はじめ)

トヨタマンは「イエス or ノー」を迫られると、「イエス」としか言わない傾向があります

(引用おわり)と書きました。

 これは、引退した伊藤英成・初代政調会長直嶋正行前政調会長=現・経産相らトヨタマンの民主党議員を見て感じたことです。

 日本で生まれた世界のトヨタが、「人へ。社会へ。地球へ。」というかつてのキャッチコピーを体現するかのように「25%」に舵を切りました。

 5日付日経7面には、きょう(5日)から日本を訪れる英国のマンデルソン民間企業・規制改革担当大臣という人に、現地(ロンドン)でインタビューした記事が載っています。マンデルソン大臣は「温暖化ガスの排出の削減の過程で新たな技術や新市場が生まれる」として、負担だけでなく経済的なメリットがあると強調しています。

 エコカーや太陽電池(太陽光発電)をはじめとした省エネ技術では、日本は世界でトップ、ここ数年でドイツに一気に抜かれましたが、なお世界第2位の地位にあります。

 それなのに、大手製造業の社長らが構成する「経団連」が反対する。政権政党、国民、地球、そしてTOYOTAが「25%」に舵を切ったのに、経団連が反対しているという構図には、「ものづくりハイテク日本もここまで落ちたか」と嘆息せざるを得ない。

 「25%」が日本に新しいビジネスチャンスをもたらすことを理解できないサラリーマン社長は経団連から去れ、今年末には経団連会長の任期切れに伴う次期会長が内定するようですが、「25%反対」の経営者が会長になるようだったら、もはや経団連などいらない、日本の成長戦略の阻害要因だといってもいいのではないか。日本商工会議所や、経済同友会があるんですから、経団連の歴史的使命も自民党の一回休み(野党転落)とともに大きく揺らいでいるとしかいいようがありません。

 エコは一人一人の心がけというという認識は国民全体に広まりつつあり、私たち日本人は誇りに思って良いと思います。しかし、省エネ技術の発達に関しては、国民一人一人がどうこういえる問題ではない。自民党政府は、「一世帯あたり年間38万円の負担増になる」との試算を出しています。私には、「38万円の内需創出」ということで例えば電気工事業の人の仕事は増えると思うのですが、岡田克也外相、福山哲郎外務副大臣らが試算見直しを公言していますので、その作業に注目したいと考えています。

 鳩山総理が国際公約にしたことで、国内での「25%」の動きが加速してきました。この動きに逆行することは難しい。そして、その動きに真っ先に手を挙げたのがTOYOTAだということに、大手製造業、金融業のサラリーマン社長は刮目すべきだと思います。
  
NIKKEI NET(日経ネット):企業ニュース-企業の事業戦略、合併や提携から決算や人事まで速報

CO2削減「アクセル踏む」 トヨタ社長
 トヨタ自動車の豊田章男社長は2日、日本記者クラブで会見し、政府の温暖化ガス削減目標について「(政府が)どういう施策を採ると実現できるかを検討している」と述べ、政策などへの要望を行っていく考えを示した。鳩山新政権が温暖化ガスを2020年までに1990年比で25%削減することを目指すのに対し、企業が排出量を減らす場合の優遇措置などで政府と意見交換する意向とみられる。産業界では25%の削減目標は厳しいとの見方が増えているが、今後達成への具体策についての議論も広がる可能性がある。

 豊田社長は「(政府が打ち出した目標に)ブレーキをかけるのではなく、アクセルを踏んでいく」と表明。実現に必要な策を「社内で現在、スタディー中」だと語った。“脱石油社会”の到来は避けられず「電気自動車や燃料電池車などの投入を考えざるを得ない」とし、商品化を進めるハイブリッド車だけでなくあらゆる種類の環境対応車の開発・普及を加速させる方針を強調した。(02日 22:21)