[写真]早稲田大学鵬志会主催の「早稲田政治祭」の第7部特別講演に登場した野田佳彦首相、2011年12月7日午後8時過ぎ、東京・新宿区の早大21号館「大隈記念講堂」、筆者撮影。
「世界で1番地球の息づかいを感じることのできる国になったときに、国際貢献のみならず、ビジネスのチャンスも次々生まれてくるだろうと。私は思います。こういうフロンティアを開発することによって、みなさんがきょうよりもあしたが良くなってくるだろう。そう思える国をつくるのが私の夢でございます。福島に生まれて良かった、宮城に生まれて良かった、仙台に生まれて良かった、岩手に生まれて良かった、このニッポンに生まれて良かった。そういうチャンスのある国だ。そういう国をつくっていきたいと思います。(野田佳彦、Yoshihiko Noda, 1957-)
歴史に残るであろう名演説でした。
大隈講堂に野田佳彦さんがかえってきました。早稲田大学鵬志会(会長・重村智計国際教養学部教授、本山景太郎幹事長=法学部3年=)主催の「早稲田政治祭」の特別講演です。母校ということで首相はTPP(環太平洋パートナーシップ条約)で「アジア太平洋地域で、(日本の)国を開くだけでなく、相手の国々も開かせていく」と踏み込んだ本音の演説をしました。
首相の野田佳彦さんは、「みなさんこんばんは。昭和55年、1980年、早稲田大学政経学部政治学科をタイヘン優秀な成績で・・・」と切り出すと、早くも“ドジョウ節”の気配を感じた聴衆(学生、一般客)から笑いが起きました。総理は面食らいながらも、「卒業した・・・友達がいます、野田佳彦と申します」と続けると前を上回る大爆笑。実はこの早稲田政治祭の第6部では、みんなの党の江口克彦さんらが「松下政経塾でドジョウ(野田首相)の面接官だったが7番バッターでとったのに、ところが4番バッターになっちゃった」と笑わせ、場が温まっていた巡り合わせもありました。
「早稲田大学出身の内閣総理大臣、先輩たちがいらっしゃいますが、だいたい竹下先生も、海部先生も、小渕先生も、早稲田大学雄弁会出身の方です。ワタクシ、まったく無縁でした。早稲田のころは無口でシャイで、当時の同級生はまさか私が政治家になるとは思っていなかっただろうと思います」。そのうえで、学生時代の唯一の現場での政治活動は、河野洋平さんらの新党「新自由クラブ」の選挙を手伝ったのが唯一の経験だとしました。
「以来三十数年、一貫して変わらないのはつねに非自民であるということであります。さきほど、田原総一朗さんが司会をされていましたが、初めてサンデープロジェクトに出たとき、田原さんに言われました。『君は自民党みたいな顔しているね』。どんな顔か分かりません。分かりませんけれど、私はどちらかというと、父親も自衛官ですし、保守主義の立場でしたけれども、自民党に非ずの政党をつくって政権交代をしたい。それが私の一貫した思いでございました」と語りました。
「第95代内閣総理大臣を拝命しました。身の引き締まる思いです。そういう風に見えませんか?」また笑いが起きました。そして「私がやれなければならないのは、東日本大震災の復旧・復興と原子力発電所事故の収束です」「福島の再生なくして日本の再生なし。早く冷温停止状態をつくることであります。圧力容器の底の温度を冷温化、安定化させる。その管理が安定的になること、これを冷温停止状態といいます、これを年内に実現させていただきたいと思います」。その言葉をかみしめるように、聴衆がしっかりと野田総理の言葉を聞き取ろうとしていくのを肌で感じました。
◇
野田さんは早稲田大学卒業生としては7人目の首相。そのうち、石橋湛山首相から5人連続で、早大雄弁会出身者でした。が、福田康夫首相、野田首相とここ2代連続で「非雄弁会系」の首相が続いています。現役首相の早大訪問は、福田康夫さんが2007年10月22日、大学主催の創立125周年記念式典への出席。2008年5月8日夕に中国国家主席の胡錦涛さんが日本の福原愛選手と中国の王楠選手と卓球をした際にかけつけて以来。学生サークル主催イベントへの参加は極めて異例。1996年に新進党公認で野田さんが落選した後から、鵬志会会員で野田さんとの交流があったようです。私は1997年3月に早大および鵬志会を卒業したので、そのことは知りませんでした。
早大3大政治サークルと言われる雄弁会、鵬志会、政友会は会員数などで鼎立状態が続いていました。弁論術や弁論大会参加・主催が中心の「雄弁会」、選挙や各種既成団体の講演会・セミナーのお手伝いなど現地現場主義の「鵬志会」、テーマ別の学習会を持つ「政友会」。それぞれの個性があります。本山幹事長ら平成23年執行部は、任期満了の12月に来年の鵬志会25周年に向けた「弾み」をつけるというスケジュール感を設定し、共有。恒例行事の「講演会」を拡大し、午後12時半から午後8時半まで全7部制という空前絶後の「早稲田政治祭」を企画し、来年の大躍進を図る構え。
第1部は「日本の閉塞感と政治」と題して、前横浜市長の中田宏さんの独演会。
第2部は「外交」をテーマに、「天下動乱の年、2012年を読む~東アジアの安全保障とTPP」と題して、中国大使館の湯本淵さん、アメリカ大使館のロバート・ルーク公使が登場。コーディネーターは元NHKワシントン支局長の手嶋龍一さん。
第3部からはニコニコ動画の生放送が入りました。「官僚制」をテーマに、元経産省職員の古賀茂明さんと東京新聞の長谷川幸洋さんが「日本再生~今こそ求められる真の改革」と題して対談しました。TPP、霞が関、マスコミなどの話題の後、古賀さんは「学生のみなさん、危機感を持って下さい。みなさんがこれからの人生で、守りに入るのは危険なギャンブルです」。長谷川さんは「みなさんのライバルは隣の席にいないんですよ。東南アジア、中国、インドにいるんです」。そして古賀さんが「そうです。そうしてみなさん稼いで、私たち(の世代)を養って下さい」と締めくくりと凛とした心地よい笑いがわきました。
第4部は「業界研究『女性政治家』~女性が政治家として生きるとは~」をテーマに、民主党衆院議員の田中美絵子さん、自民党参院議員の片山さつきさん、と早大講師の村田信之さん(蓮舫・行政刷新担当大臣の夫)が出演。参院決算委員会の日程を終え、遅れて登場した片山さんは開口一番、「筑波大学附属高校時代にマーガレット・サッチャー英国保守党党首(影の首相)が教育の視察に訪れたんです。あんなに良いクルマをつくる国だからって。今の日本だったらどうですか?反対(に視察に行く)でしょう?」とし、その後サッチャー党首が首相になったので、公務員を志したと語りました。
田中さんは「片山さんがおいでになったんで、ここでお礼をさせていただきます。私が写真週刊誌で叩かれていたときに、片山さんは『小沢ガールズで生き残れるのは、田中美絵子(ら3人)だけだ』って言ってくださって。ホントウに勇気づけられました。ありがとうございます!!」と意外な展開。片山さんが田中さんに「私たち女性議員が(男性議員が政治資金でキャバクラに行くように)ホストクラブに行って、政治資金で領収書を切れますか?」。田中さんは「女性の議員は自分で収支報告書を見る人が多いと思います。私も毎月、事務所の“仕分け”をしていて、きょうもコーヒー代が高すぎると指摘してきたところ」と応じました。そのうえで、片山さんは「女性議員は目立つ」のが得だとし、当選すればやりやすい面があると指摘。選挙に出やすい環境を整えるべきだという結論になると、村田さんも「その通りです」。最後に田中さんが「政治家になった以上、頂点を目指したい」と“総理をねらう女”を宣言すると、私もかなり面食らうほどの拍手喝采を浴びました。
第5部は「政治とボランティア、NGOの可能性」で、元外務副大臣の武正公一さんと難民を助ける会特別顧問の吹浦忠正さん。きょうのゲストの中で、もっと鵬志会と長い縁のお二人。吹浦さんは「NGOと官の連携はもっと必要。政権交代して、民主党では、例えば国際平和構築なら誰に話したらいいか。分からないのが本音。自民党は族議員でダメになったが、必ずテーマ毎に話せる人がいた」と指摘。武正さんは「海外で日本語を学ぶ人は370万人。私が外務副大臣時代に取り組んだ一つのテーマ」と話しました。
吹浦さんは繰り返し繰り返し、聴衆に対して、語学の鍛錬を願いました。
第6部は「政治早慶戦!!~学生が政治に対して思うこと~」。慶応側はOBとしてみんなの党の江口克彦さん、現役学生代表の神村健太郎さん。司会の田原総一朗さんをはさんで、早大OB代表が自民党の丸山和也さん、現役学生代表は岡野宗俊さん。江口さんは「慶応はひと言で言うと『福澤諭吉』先生、この4文字ですべてを語れる。これが早稲田にはあるか?」、神村さんは「(同窓会組織である)三田会などつながりが強い」と指摘すると、丸山さんは「田舎者でも偉そうに過ごせる大学が早稲田」岡野さんが「総理大臣からホームレスまで居るのが早稲田」と応じて湧かせました。そのうえで、丸山さんが政界入り後、「政治家には思想、哲学がない。天下国家とか、国家国民というと笑われることもある。だからもう一度大学に行くなら、思想家が創立した慶応に行きたい」と語ると、江口さんは「早稲田には哲学がない。だからドジョウ(野田首相)はダメなんだ」。田原さんが「この後出てくるよ」と制するような身振りをすると、とっさに丸山さんが「江口さんは松下政経塾でドジョウの面接官だったんだよ」と話を向けました。このエントリーの冒頭でご紹介した「私は7番バッターでドジョウをとったんだ」という発言になりました。そのうえで「自民党も民主党も政権交代を想定していなかったと思う。民主党が政権交代にイチバン驚いているんじゃないか」と指摘。「この会場に政治家をめざす人もいるかと思います。どうか、“国家の経営者”になってください」と語りました。
なお、岡野宗俊さんは「早稲田精神昂揚会」の元幹事だそうです。早稲田精神昂楊会は、早稲田大学の恒例イベント5月の「本庄-早稲田100キロハイク」の主催者です。長年、お互いのイベント開催時には、当日の応援要員を相互にお願いしています。そのような友好団体が「早慶戦支援会」など複数あり、きょうもご協力をいただいたのだろう、と思います。
そして、第7部。いよいよ野田総理の特別講演です。
野田さんは、私の知る限り、総理就任以来、もっともハッキリと、直接的な表現でメッセージを伝えました。
「こうしてやらなければいけないことはたくさんあります。それをひとつひとつ解決し、乗り越えていくのが私の役割だと考えております」
総理は、わが国の歴史においてもかなりシリアスなことを言っているんです。でも、それが親しみあり、時に笑いを誘って話せす。わが国の歴史にこういう宰相はいたでしょうか。現時点で私の頭の中に浮かびません。
「加えて長年の宿題についてもこたえていかねばなりません。それは先般、TPPについての一つの方針を政治決定いたしました。それは、TPPの交渉参加に向けて、協議に入るという方針です。わが国は戦後、GATT(ガット)体制のもとで、自由貿易の恩恵を最大限に受けて経済大国になりました。これからもアジア太平洋地域において、国を開くだけでなくて、相手の国々も開かせていくことによって、その成長の糧を考えていかないといけない、と思っています。私は自由貿易、あるいは投資のルール作りに日本は主体的にかかわるべきだと思います」「例えばわが国が一生懸命に働いて開発した技術であるとか、ソフトであるとか。海賊版とか、模倣品という形で世界中に氾濫しています。この被害総額だけで、千数百億(円)です。マジメに開発をした我々の国がもっと儲けられるはずなのに、そういう模倣品や海賊版などで市場から追い出されている。そのためのルールを作ることが国益であります。アメリカやオーストラリア、ニュージーランド、あるいは今度交渉参加に入ろうというカナダとまだ二国間でFTAを結んでいません。これらの二国間との関係で、日本が払っている関税は2000億円です。そういう垣根(関税障壁)を低くしていることは国益ではないでしょうか。輸入だってそうです。突然相手国の都合によって、レアアース(希土類)が入ってこない、天然ガスが入ってこない、食べ物が入ってこない。そういうことは避けないといけません。輸入のルールをつくるべきです。相手国が恣意的に輸出を止めることができないように、輸出国と輸入国がきちんと事前協議する等々。ルールを作ることが私は国益だと思っています。そのための協議に入っていくということです」。
この後、社会保障と税の一体改革(消費税)についても、具体的に例示しながら野田さんは説明しました。
また、「欧州でおきていること」と日本国債の関係も演説しました。
「これらの乗り越えなければならない課題の中で我々は何をしていくのか。私はこの早稲田に通っている頃は、そんなに豊かではないけれども、きょうよりはあしたは良くなるだろうという希望がありました。チャンスがある国だと思いました。でも、だけど今、残念なことにバブルが崩壊した後に生まれたみなさん。きょうお集まりの多くのみなさんがそうだと思います」。ここで野田演説の特徴である、声のトーンが太く、大きくなりました。「きょうよりあしたは良くなるだろう、と思えない状況がもうずっと続いてきている。きょうよりあしたは不安だと思う人が増えてきている」そしてまたトーンを下げ、淡々と
「この流れを変えていきたいと思っております」。
「そのために日本の持っている“フロンティア”を開発していこうという試みを始めました。どんなフロンティアがあるのか? 日本の国土面積は世界で60番目です。小さな国です。国土面積はちっちゃいけれど、例えば、海。排他的経済水域(EEZ)、日本が管理できる水域は、世界で6番目に広いんです。海は広さだけではありません。体積もあります。深さもいれると、日本の排他的水域、管理できる部分は、深さは世界で4番目です。5000メートル以上深いところ、これは日本が1番多いんです。フロンティアは多いんです。そこにメタンハイドレート等々、さまざまな鉱物資源が眠っている。それを開発をしていくということがもちろん大事だと思います。海にフロンティアがあります。そして、宇宙もそうです。立体的に見れば、宇宙もわが国のフロンティアです。ロケットを飛ばし、(人工)衛星を飛ばせるという国は、それほどありません。国際協力で(宇宙)飛行士も育ってまいりました。独自の射場(しゃじょう)、打ち上げる場所を持っている国もあんまりありません。日本は種子島もあります。
『世界で1番地球の息づかいを感じることのできる国』になったときに、国際貢献のみならず、ビジネスのチャンスも次々生まれてくるだろうと。私は思います。こういうフロンティアを開発することによって、みなさんがきょうよりもあしたが良くなってくるだろう。そう思える国をつくるのが私の夢でございます。福島に生まれて良かった、宮城に生まれて良かった、仙台に生まれて良かった、岩手に生まれて良かった、このニッポンに生まれて良かった。そういうチャンスのある国だ。そういう国をつくっていきたいと思います」
「そこで大事なことは、さきほども申しあげましたTPPも、税と社会保障そのほかも、基本的な姿勢というのは、現状のままで良いと思ったらこれらの危機を乗り越えることができない。課題解決もできないということです」「今が60点なら、フロンティアを開発し、勇気を持って国を開いていく。70点、80点、90点をめざしている国にならなければ、いずれ日本はお年寄りばかりの極東の片隅にポツンと位置する島国になりかねないと思っています。そんな国にしてはいけません。だから乗り越える山はいっぱいありますけれども、ひとつひとつ乗り越えて、今お示しした展望のもとにこの国をつくっていく覚悟でございます」
ここで野田さんは一拍起きました。でも咳払い一つしません。
「どうもドジョウのイメージばっかりが強いんですが。私の思いの一端を今お伝えさせて頂きました」
「ぜひ、きょうお集まりの皆様、こういう形でお付き合いいただいたみなさんに御礼を申しあげて、ひと言私のごあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございました」。
◇
さて、私自身「鵬志会」って何?とよく聞かれますので、この機会に一つのエントリーの中にまとめさせていただきます。
鵬志会の今年度メンバーは4月にも新聞に登場しています。次の記事です。
[新聞記事データベースから引用はじめ]
「私より人気ある首相に」 自虐的?早大生にエール
2011.04.27 産経大阪朝刊 5頁 総合5面 (全198字)
菅直人首相が26日、国会内を移動中に大学生約20人と会った際、「私よりも人気のある首相になって」とエールを送る一幕があった。野党や民主党内の一部から退陣要求を突きつけられる中、つい自虐的な言葉が出たようだ。
学生は早稲田大学で政治関係のサークルに所属。
引率者が「将来、政治を志すかもしれない若者です」と紹介すると、首相は「大学で勉強して、日本のためになる人になってください」と笑顔で激励した。
[引用終わり]
せっかくの菅総理からのお言葉でしたが、鵬志会のOB・OGで、選挙に出るのは、おおよそ3割弱。フツーにサラリーマン、公務員になっている人も多いです。
早大卒業の首相は次の7人で、5人が雄弁会出身、ここ2人が非雄弁会系になります。
〈雄弁会〉
石橋湛山首相 1956年就任。(自民党総裁)早稲田大学文学部東洋哲学科卒。東洋経済新報記者・社長。
竹下登首相 1987年就任。(自民党総裁)早稲田大学商学部卒。 青年団員、島根県議。
海部俊樹首相 1989年就任。(自民党総裁)中央大学から早稲田大学法学部に転入し、卒業。早稲田大学大学院法学研究科中退。河野金昇衆院議員秘書。
小渕恵三首相 1998年就任。(自民党総裁 早稲田大学文学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科修了。世界放浪後、父の跡を継ぎ当選。
森喜朗首相 1999年就任。(自民党総裁)早稲田大学商学部卒。フジサンケイグループ日本工業新聞記者。
〈非雄弁会〉
福田康夫首相 2007年就任。(自民党総裁) 早稲田大学政治経済学部経済学科卒。丸善石油社員、福田赳夫首相政務秘書官。
野田佳彦首相 2011年就任。(民主党代表) 早稲田大学政治経済学部政治学科卒。松下政経塾1期生、千葉県議。
石橋首相から森首相まで5人が雄弁会。そして、福田首相、野田首相が非雄弁会となります。
鵬志会の創立は1987年。石橋首相以来31年ぶりの早大出身の竹下首相を祝おうということで集まった実行委員が発展的に解消する中で結成しました。現在は大学公認サークルに昇格しています。野田さんの卒業後となりますので、野田さんは鵬志会卒業生ではありません。ただ、鵬志会卒業生には、松下政経塾の門を数人が叩いており、野田さんが第41回衆院選に落選し、浪人していた頃から交流があったそうです。学生サークルですから、現役学生(1年生~4年生)による単年度執行部による運営なので、組織としての付き合いがある団体、人との連続性に関しては、全体を把握している人はいません。例えば、早大生でない鵬志会員OBの地方議員がいますが、そのときの執行部がどういう意図で入会を許可したのかは、あまり同窓会に出て来ない年次というのは、やはりいますから、分からないことがあります。組織と特定の政党・政治家が長期間にわたってしがらみがあるということはありません。ぜひ誤解なきようお願いします。
ちなみに読み方は「(○)ほうしかい」であって、「(×)オオシカイ」と発音する人がいますが、「(○)ほうしかい」です。
では「鵬志会」とはどういう意味かとよく聞かれます。これは、創設者(初代幹事長)の和田有一朗さんが卒業した高校(兵庫県立神戸高校)の校章が「鵬(オオトリ)」だったというだけの理由です。それだけです。とくだん崇高な意味が込められているわけではありません。和田さんは県議会の当選3回生。そのくらい自分を前に出す性格だから、和田さんは選挙に強いです。彼は日常活動で朝立ち3時間、戸別訪問500軒をこなすことを習慣にしています。選挙区内全戸を毎年1周、任期中に4周することにしています。2007年の第16回統一地方選では、兵庫県議選で、当時42歳の和田さん=無所属=は神戸市垂水区選挙区で3万580票の大量得票で再選しました。ところが、姫路市選挙区で当時33歳で新人の竹内英明さん=民主党=が3万2580票を獲って全県トップに躍り出ました。彼も鵬志会OBで、総得票数ワンツーフィニッシュを達成しました。区割りの問題もありますが、6329票で当選した候補もいましたので、2人の集票力は抜きんでています。2011年も各々の選挙区でトップで再選しています。野田首相の弟さんの野田剛彦さんも船橋市議会でトップ当選しましたが、別の会派で5位当選した日色健人さんも鵬志会OBです。日色さんは今回のイベントには党派を越えて、後輩にメッセージを送っています。国政での政権交代直後の2009年11月の葛飾区議選では小林ひとし(小林等)さんが8501票で断然トップ当選し、最下位当選者は2552票でした。が、民主党の仲間から「とりすぎ」批判を浴びたことなどから、現在は無所属で活動しています。というわけで、「とにもかくにも選挙に強い鵬志会」という定評はかなり浸透しています。
とはいえ、一般の就職をする学生の方が、割合は多く、やはり、まったく政治とは距離を置く人も多くいます。それもまた人生の夏である大学時代の一つの学びの卒業論文でしょう。
鵬志会主催のイベントでの総理経験者の講演は、1995年秋の新進党結党直前の羽田孜前首相以来だと思いますが、小泉純一郎さんの講演もあったそうです。これはきょう、初めて知りました。
「集まり参じて人は変われど、仰ぐは同じき理想の光」
2011年12月7日。大隈講堂は歓喜に包まれ、同じ時間を共有しました。そして、12月8日の朝になるとそれぞれ自分の好きなことをする。それが早稲田というものです。就職後の辛い時期、土曜日の深夜に大隈講堂に来て、時計台を眺めて、しばらくしてまた帰宅した。私以外にも同じようなことをしていた友人も多いようです。総理にとって早稲田の杜がリラックスできる時間と場だったら良かったと思います。雨天の友がいない政治家に限って、好きな言葉は「雨天の友」というものです。野田さんは党派や政策を越えた仲間がいることを目で見ました。ひとつひとつ乗り越えていってほしい。野田さん、次はいつの日か、総辞職して次の内閣にひきついだ後に、またゆっくりとおいでください。
ゴゾンジ陸上部の箱根駅伝の襷ほどではありませんが、25年間、伝統の襷が渡っていてうれしいというか、一人の日本国民として、ドンドン国を開いていって大丈夫だと。この子たちは素晴らしいし、会場にお集まりいただいた現役学生のみなさまも芯が通っている。だからゲストの皆さんが、全7部に分かれているにもかかわらず、異口同音に「国を開く」と言ったのでしょう。日本はつぶれないとの確信得たり。その思いを持てた、2011年12月7日、大隈講堂の夜でした。
[過去の新聞記事から引用はじめ]
[キャンパる]大楽人 早稲田大社会科学部3年・松尾宗一郎さん
1998.04.10 東京夕刊 11頁 総合 写図有 (全314字)
◇全国学生交流会会長 早稲田大社会科学部3年・松尾宗一郎さん(20)
若者、特に大学生の政治離れが言われるが、「政治家は、できる仕事の範囲が広い」と考え、入学と同時に同大の政治サークル「鵬志会」に入り、現在は副幹事長。◆学外でも、自民党の友好団体である「全国学生交流会」に所属し、今年3月、会長に就任した。元運輸大臣の亀井静香氏ら実力政治家を招いて講演会を開いたり、各種選挙で自民党候補の選挙を手伝うなどの活動を通じて、実際の政治の現場を体験してきた。◆政治離れについて、学生に呼びかける。「結局、これから長く税金を払っていくのは、若い僕たち。もっと、政治に口を出すべきだ。投票に行かないなんて、もったいない」【早稲田大・真田智弘】
毎日新聞社
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政治家になるための7条件、早大生に説く 加藤自民幹事長が講演
1997.07.10 東京朝刊 5頁 (全437字)
◆地元、健康、35歳以下、地域回り…
自民党の加藤幹事長は九日、都内新宿区の早大構内で講演し、学生たちに政治家になるための「七つの条件」を説いた。
加藤氏は、〈1〉立候補する地域の出身である〈2〉できればその地域でトップの進学校ではない高校を卒業している〈3〉しっかりした大学を出る〈4〉健康である〈5〉三十五歳以下で選挙活動をスタートする〈6〉五年から七年間必死に地域回りをする〈7〉人間関係を作れるある程度の能力がある--の七つを示し、「この条件を満たせば、政治家志望者が少ない今なら政治家になれる」と述べた。ちなみに、かつて選挙に必要と言われた「地盤、看板、カバン」の“三ばん”については「もうはやらない」と退けたが“三ばん”持ちの二世議員、加藤氏の発言に説得力があったかどうか?
この日の講演は、政治家志望の学生の多い、「早大鵬志会」の主催で開かれた。
懇切丁寧なノウハウ伝授だったが、この政治不信の中で“青田買い”の成果が期待通りに上がるか否か不明だ。
読売新聞社
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[キャンパる]情報伝言板 早稲田大学ほか
1994.06.17 東京夕刊 9頁 総合 (全859字)
◆早稲田大学鵬志会講演会「21世紀へ向けて--激動する日本政治今後の展望」 22日14時40分、大隈大講堂(地下鉄東西線早稲田駅下車)で。講師は毎日新聞編集局顧問、岩見隆夫氏。無料。問い合わせは同会代表、三島圭介さん。(以下略)
毎日新聞社
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[票最前線]終盤の現場から(5)“選挙修業”の大学生(連載)
1992.07.23 読売東京朝刊 30頁 写有 (全980字)
◆現場で知るむなしさ
「早稲田大学鵬志会」。五年前、同大OBの竹下登氏が首相に就任した時、学生有志が実行委員会を作り、“凱旋(がいせん)講演”などを主催した。鵬志会は、その委員会を引き継いで発足した学生政治サークルだ。
当然、入会者は政治家志望の学生たち。代議士らの講演会を年に何度か開くほか、議員事務所の手伝いや選挙運動のアルバイトなど、それぞれの“修業”に励む。
◆政策論議欠く現実 政治への志に冷水
「選挙の渡り鳥、と呼ばれてます」。幹事長で理工学部三年の豊島成彦さん(22)が笑った。昨年の統一地方選では、滋賀県議、都知事、大田区議の各選挙戦のアルバイトに飛び回った。この参院選も、首都圏の自民党候補事務所で運動を手伝っている。
激戦区・奈良に向かった二人の一年生は、初めての選挙体験に目を輝かせていた。会員五十人。うち女子学生八人を含む三十人が、ビラ配り、ウグイス嬢などに汗を流しながら、いま、終盤の戦場にいる。
ひたすら頭を下げながらのビラ配り。「ちっとも、あいさつに来ないじゃないか」と顔役に脅されながらの地域回り。
高度な政策論議とは、あまりにかけ離れた選挙の現場を見て、あこがれが失望に変わり、政治家への夢を捨てる学生も少なくない。政経学部三年で会の副幹事長を務める渡辺勝大さん(20)もその一人だ。
ガランとした公会堂のホールに、候補予定者の熱弁だけが響いた。五月末、首都圏で開かれた自民党の参院選決起集会。整然と並んだ千脚のパイプいすは、三分の一しか埋まっていない。駆り出された聴衆の半数は居眠り状態だ。「君たち、前の方に座っててくれ」。いすに腰かけたとたん、ばかばかしさがこみあげた。「こんなことをしていて、何になるんだろう」
今度の選挙戦ではアルバイトをせず、来年の国家公務員試験を目指して猛勉強を始めた。
明治大政経学部の阪上順夫ゼミは先月、首都圏の大学生千五百四十人を対象に、政治意識に関するアンケートを行った(回答率六七%)。
理想の政治家の必要条件として、「政策実行力」、次いで「選挙区だけでなく国のことを考えている」ことを挙げ、「現在の政治家に満足していますか」の問いには、九二%が「ノー」と答えた。
今年二十歳を迎えた渡辺さんは、二十六日に初の一票を投じる。政治の現状に幻滅しながらも、希望は捨てていない。だから「棄権はしないつもり」だ。(おわり)
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07統一選 兵庫県議選開票結果=兵庫
2007.04.09 大阪朝刊 16頁 (全2,717字)
《開票結果》
◆東灘区 定3候5
当16,187井戸正枝 41民現〈2〉
当14,109高橋進吾 39無新〈1〉
当12,341加藤修 49民現〈3〉
12,098北浜みどり46自新
11,016古谷敏郎 56共新
(選管確定)
◆灘区 定2候4
当15,050原亮介 63自現〈6〉
当11,979石井健一郎38民現〈2〉
9,942井上力 57新社新
7,910島田鎮郎 67共元〈1〉
(選管確定)
◆中央区 定2候4
当12,492小池啓納 57民現〈2〉
当10,388原吉三 65自現〈5〉
7,140渡辺和代 49共新
4,232佐藤陽太 25無新
(選管確定)
◆兵庫区 定2候3
当15,946松田一成 54公現〈2〉
当12,897立石幸雄 58自現〈7〉
11,533井村弘子 60共元〈1〉
(選管確定)
◆北区 定3候5
当21,744羽田野求 57公現〈5〉
当19,131梶谷忠修 69自現〈3〉
当19,019藤井訓博 58民現〈3〉
11,489貫名ユウナ55共新
10,212伊藤栄介 30無新
(選管確定)
◆長田区 定2候3
当15,519渡部登志尋58公現〈3〉
当14,238加田裕之 36自現〈2〉
10,837木下清子 58共新
(選管確定)
◆須磨区 定3候4
当18,410大塚崇弘 40民新〈1〉
当16,589松本義宏 59公現〈4〉
当15,885葛西利延 66自現〈5〉
14,167森田多希子51共元〈1〉
(選管確定)
◆垂水区 定3候4
当30,580和田有一朗42無現〈2〉
当22,119黒田一美 52民現〈3〉
当15,267新原秀人 44自新〈1〉
12,847今井正子 54共新
(選管確定)
◆西区 定3候4
当24,881石井秀武 40民現〈2〉
当24,257石原修三 56自現〈4〉
当17,770杉尾良文 55民現〈5〉
12,669金田峰生 41共元〈1〉
(選管確定)
◆姫路市 定8候9
当32,508竹内英明 33民新〈1〉
当22,906大野由紀雄53公現〈4〉
当21,567岩谷英雄 62自現〈7〉
当19,937北条泰嗣 53公現〈2〉
当19,815水田宏 74自現〈6〉
当17,798杉本ちさと54共現〈2〉
当17,075北野実 47無新〈1〉
当16,726五島壮 63自現〈6〉
14,562清元功章 78自現〈9〉
(選管確定)
◆伊丹市 定3候4
当21,898武田丈蔵 74自現〈7〉
当17,138中田香子 66民現〈3〉
当16,953合田博一 57公現〈3〉
7,742吉尾明美 50共新
(選管確定)
◆尼崎市 定7候11
当24,497下地光次 52公新〈1〉
当23,536谷井勲 42公新〈1〉
当14,428丸尾牧 42無新〈1〉
当14,273稲村和美 34無現〈2〉
当13,886室井秀子 51無新〈1〉
当12,968吉本誠 37民現〈2〉
当12,793黒川治 47自現〈2〉
12,470鈴木拓美 42共新
10,921今西行 68社現〈4〉
10,420宮田静則 64共現〈3〉
8,945武田正昭 59自元〈1〉
(選管確定)
◆西宮市 定7候8
当25,212野口裕 56公現〈5〉
当24,216越智一雄 65民現〈4〉
当20,154都築研二 60共現〈5〉
当18,072北川泰寿 37自現〈3〉
当16,362掛水須美枝61無現〈5〉
当13,637筒井信雄 41自現〈2〉
当11,770田中章博 70自現〈3〉
5,881大平洋一郎65無新
(選管確定)
◆芦屋市 定1候2
当14,091山田美智子60無新〈1〉
13,224門信雄 57無現〈4〉
(選管確定)
◆相生市 定1候3
当 6,582谷口隆司 56無現〈2〉
6,504宮崎一一 59民新
2,546中山英治 56無新
(選管確定)
◆豊岡市 定2候3
当22,962日村豊彦 54無元〈6〉
当14,552小林喜文 63自現〈3〉
9,494梅谷光太郎53民新
(選管確定)
◆加古川市 定4候5
当24,197岸本一尚 46公新〈1〉
当23,852釜谷研造 75自現〈5〉
当20,891宮本博美 63民現〈4〉
当11,716星原幸代 64共新〈1〉
9,038井上英之 36無現〈2〉
(選管確定)
◆龍野市 定1候2
当 9,881山口信行 64無現〈5〉
3,148金治法昭 63無新
(選管確定)
◆西脇市 定1候2
当10,620東野敏弘 52無新〈1〉
7,062山本章 66無現〈1〉
(選管確定)
◆宝塚市 定3候6
当15,731伊藤順一 44民新〈1〉
当14,890森脇保仁 54自現〈2〉
当12,583練木恵子 44共現〈4〉
9,571阪上真次 26無新
8,427岡野多甫 53無元〈3〉
7,704江見健太郎29無新
(選管確定)
◆三木市 定1候3
当12,404仲田一彦 34無新〈1〉
11,752米沢修二 58無新
6,902東中香代 59民新
(選管確定)
◆川西市・川辺郡 定3候4
当21,990岡康栄 71民現〈5〉
当17,415篠木和良 60無新〈1〉
当16,715加茂忍 55自現〈4〉
4,460黒田靖敏 64無新
(選管確定)
◆小野市 定1候2
当11,593藤原昭一 61無現〈4〉
6,234藤本勝利 43無新
(選管確定)
◆三田市 定2候3
当13,155芝野照久 55民現〈4〉
当11,133野間洋志 62無現〈2〉
3,507本多康房 68無新
(選管確定)
◆加西市 定1候2
当12,326小田毅 65無現〈3〉
7,554大西啓之 68無新
(選管確定)
◆篠山市 定1候3
当10,540小西隆紀 41無新〈1〉
7,680田中悦造 59無新
1,743梶川瓔一 63無新
(選管確定)
◆丹波市 定1候2
当22,956石川憲幸 51自現〈3〉
9,045芦田徳幸 53無新
(選管確定)
◆朝来市 定1候2
当12,710藤本正昭 65無現〈2〉
2,278清水隆夫 69無新
(選管確定)
◆淡路市 定1候2
当15,474原哲明 56無新〈1〉
11,095北浦義久 71無現〈3〉
(選管確定)
◆宍粟市 定1候3
当 9,582高嶋利憲 54無新〈1〉
7,316長田執 75無現〈4〉
7,221春名哲夫 55無新
(選管確定)
◆加東市 定1候2
当11,126藤本百男 53自新〈1〉
8,355小林護 67無現〈2〉
(選管確定)
◆多可郡 定1候2
当 9,224内藤兵衛 48自新〈1〉
6,803藤本國明 51民現〈1〉
(選管確定)
◆加古郡 定1候3
当10,337永富正彦 69無現〈3〉
9,430大矢卓志 42無新
3,902中嶋修市 59無新
(選管確定)
◆飾磨郡 定1候3
当 6,379宗行恭義 62無新〈1〉
3,781振角利允 67無新
3,527東影昭 53無新
(選管確定)
◆神崎郡 定1候2
当14,227上野英一 53無新〈1〉
12,171前川清寿 65無現〈3〉
(選管確定)
◆佐用郡 定1候2
当 7,949石堂則本 63無現〈3〉
3,742広利一志 55無新
(選管確定)
◆美方郡 定1候2
当16,002上田良介 56無新〈1〉
6,670中村茂 76無現〈7〉
(選管確定)
[引用おわり]
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