[写真]民主党行革調査会の初会合であいさつする野田佳彦代表(首相)、2011年12月14日(水)、午後5時半、衆院第一議員会館、筆者撮影。
民主党政策調査会(前原誠司会長)は「行政改革調査会」(会長・岡田克也最高顧問)を設け、2011年12月14日(水)、衆院議員会館で初会合を開きました。首相で民主党代表の野田佳彦さんが「不退転の覚悟」を示している消費税増税とひきかえに、ガバメント(政府と国会)として定数削減、給与削減、特別会計・公益法人・国有財産の洗い出しなど「身を切る」姿勢を明確化します。
初会合となった「第1回総会」には410人いる民主党国会議員のうち、30人~40人が出席しました(代理出席除く)。冒頭、野田首相(野田代表)があいさつしました。政権党の総裁・代表が、党大会、議員総会、役員会ではなく、党政調の会議に出席するのは珍しいことです。
【追記 2011年12月15日 午前11時50分】
動画をアップロードしました。
【追記おわり】
野田さんは「私は平成22年度、23年度の予算編成に(財務副大臣、財務大臣として)かかわってきました。また累次の補正予算の編成にかかわってきました。リーマンショック後の厳しい税収の落ち込みの中で、マニフェストの主な事項を実現するために、懸命に努力してきたつもりであります。加えて、平成22年度予算においては、8つの特別会計の積立金や剰余金をかき集めて、過去最大規模の10・6兆円の税外収入をつくる努力をしました。だけど、まだまだ『民主党よ、歳出削減に取り組め』、『税外収入に取り組め』というのが国民の声だと受け止めています」と語りました。
そして、「そして、『議員よ、まずは塊より始めよ』ということで、議員定数削減の問題、これも力こぶを入れて、(与野党協議のなかでも)特に我が党がイニシアティブ(主導権)をとって、来年の通常国会の早い時期に成立させないといけない」としました。また安住淳さん率いる財務省がつくっている「特別会計改革法案(仮称)」について、「安住大臣に深掘りをお願いしているが、党からもお尻を叩いてほしい」とお願いしました。
野田代表は、この行革調査会は、「民主党政調決算・行政監視部門会議」を発展的に解消した組織だという考えを示し、前原会長もうなづきました。こういった各種党内資源を活用し、官僚の骨抜きを排した法案をつくる考え。
続いて、前原さんがあいさつに立ちました。前原さんは「この行革調査会で(検討の)成果を挙げ、(法案化の)タマ込めをして、国会でその果実を挙げていくことが党だけでなく、国のためになる」と述べ、年末年始の短い時間のなかで、「いいものをまとめ、(第180通常)国会に乗り込んでいこうじゃありませんか」と語りました。
この後、岡田さんがあいさつに立ちました。岡田さんは「私も最近は地元に、月2回ぐらいは帰っているんですが」と切り出し、いきなり場は静まりかえりました。正確には、衆院議員だけが静まりかえったのだと思いますが、衆参とも自由席で座っていたので、私はカラヤンではないので聞き分けられませんでしたが、おそらくそういうことだと思います。
[写真]民主党行革調査会初会合であいさつする岡田克也会長、2011年12月14日(水)、衆議院第1議員会館、筆者撮影。
岡田さんは続けて、「まあ、いろいろ言われます。『消費税は分かります』と多くの方が言ってくれます。『じゃあ国家公務員の給与(引き下げ)や(国会議員の)定数削減の話はどこまで行ったんですか?ちゃんと国会はやっていないじゃないですか』(と地元で言われます)。そして、特会や独法の問題。それについてどうなっているのか。そういうことをしっかりやるということが(消費税増税準備法案への)国民の理解を得るうえで必要だと思います」としました。
そして、「党内で今まで積み重ねていただいて、さまざまな成果があります。それを実行に移すためにどうすべきか。そういう視点でしっかりと議論していきたいと思いますので、みなさんのお知恵、お力を入れて、党が一丸となってしっかり成果を上げていきたいと思います」と述べました。
この辺の、野田さん、前原さん、岡田さんの、あうんの呼吸、政治センス、気持ち悪い言葉で言えば、「テレパシー」は見事だと感じました。
そして、この3人とそれ以外の議員のあまりの政局感の違いにもあぜんとしました。まあ、そうはいっても、議員同士の話し合いの中で、「さみだれ式は分かりにくい。できるなら、法案はなるべくまとめて出したい」「やるからには早くがいい」「やっていくることを目に見える形にしたい」という意見が出たようですから、頼もしい気がします。また、民主党地域主権調査会が取り組んでいる出先機関改革の話を一緒にやれないかという意見が一定の合意を得たようです。一方、政治改革については、党幹事長室が議論するという役割分担をしっかりしたいということで大筋合意を得たそうです。
◇
かつて自民党内閣は消費税新設への国民への説得作業で、臨調・行革審会長として民間有識者として土光敏夫さんが就任しました。土光さんの日常をテレビ取材しているうちに、偶然切り出したのが「目刺しの土光さん」。これは1982年放送の「NHK特集」(現在のNHKスペシャル)が放送したもので、高度経済成長・安定成長時代のニッポンの経済的な成功者である土光さんが奥さんと目刺しをおかずに夕食をとる光景が印象に残り、国民が背中を押し、「民営化」などの行政改革の前に進むエンジンとなりました。
「めざしの土光さん」と違って、岡田さんはどうか。昨年(2010年)6月29日(水)の外務大臣会見で、フリージャーナリストの安積明子さんが海外出張時の航空機利用について質問したところ、次のように答えています。
[外務省ホームページから引用はじめ()内は補筆]
私は(海外出張の際、国際線は)ビジネス(クラス)で、自分でお金を払って、野党時代には行っておりました。中国とか近いところには、ほとんど数時間のことでありますので、エコノミー(クラス)で行ったこともあります。しかし、基本的にはビジネスで行っていたということを申し上げておきたいと思います。大臣になりまして、ファースト(クラス)のあるところはファーストを使っております。最近は、国際線でもアジアを中心にファーストのないところが結構増えてきましたから、そういうところはビジネスで行くということです。この前なども、国連に出て、ヨーロッパ経由で日本に帰ってきたときも、ニューヨークからパリまではエールフランスでファーストだったのですが、パリから成田まではビジネスしかない機種だったのでビジネスで帰ってまいりました。やはり、かなり無理して動いていますので、体力的にはきついです。そういう意味で、できれば少しでも体を休める時間が欲しいと思います。あとは状況の判断、あまり華美にならないようにはしたいと思います。だから、(政府)専用機のベッドを使わなかった訳ではないのですが、それは目の前にあったのですから使うことはできたのですが、ほどほどに考えていきたいと思っています。
[引用おわり]
岡田さんは外相時代に土日を利用して、ドイツに0泊3日で行ったり、出張先からさらに次の出張先へと行ったり、かなりの強行軍。しかも、その時間は読書タイムに充てていたようです。とはいえ、「野党時代からビジネスクラス」「大臣になったら、ファーストクラス」。さらには総理と出張した際には、「政府専用機のベッドを使わなかったわけではない」として、「ほどほどに考えたい」と謙遜するだけ。「私はエコノミークラスです!」と言えば、人気も上がるだろうに。これについては、ことし(2011年)6月2日(木)放送の日本テレビの「村尾信尚のニュースゼロ」で「私は親から絶対うそをつくなと教えられて、今でも政治家には珍しくうそをつけない一人なんですが」と語っています。
私が知る限り、岡田さんは嘘を付いたことがありません。「ノーコメントです」と言うことはあります。「官邸の中の話はしない」とも言っています。しかし、嘘は付きません。ことし(2011年)1月9日放送のフジ「新報道2001」では、岡田さんの初代秘書の一人である三谷哲央さんが「正直ですから、隠しごとをしたり、ごまかしたりはしません」と証言しています。
[画像]三重県議会議長(当時)の三谷哲央県議、1月9日放送のフジ「新報道2001」=TV映像からキャプチャ。
きょうの会合でも岡田さんが嘘をつけない性格なのがハッキリ出た場面がありました。上の方で紹介した岡田さんのあいさつはほとんど全文ですが、最後に紹介していないくだりがあります。行政刷新担当大臣の蓮舫さんに向かって「蓮舫さんから言えって言われたことを忘れてしまいました。なんでしたっけ」。そして、それは「何か独法について、『まだまだけしからん独法があるから、しっかりと予算について絞り込めという、そういう話を言うようにされてましたんで、そのことも申し添えて、みんなで力をあわせてやっていきたいと思います」と述べました。蓮舫さんは照れ隠しで、にこやかながら泣くようなそぶりをしてしまいました。岡田さんはやはり嘘がつけない。岡田さんは内閣府行政刷新会議の役割は終わりつつあり、「仕分け」を仕分ける段階に来ている、という考えがあるのでしょう。
行革調査会には、決算・行政監視ワーキング・チーム(WT)、公益法人改革WT、特別会計WT、行政管理・効率化WT、国有資産見直しWT、情報システム効率化WTを設置しますが、これまでに「仕分け」「埋蔵金」の議論でかなりの党内資源が蓄積されています。「身を切る」行革関連法案をていねいにつくっていく作業になります。地元・四日市では、岡田さんの三重3区、文科大臣の中川正春さんの三重2区とも自民党の支部長が公募したにもかかわらず、河村建夫・自民党選対局長が発表しておらず、「公募で若手男性弁護士に決まったが、自民党の地域の偉い人がストップをかけた」など諸説入り交じっています。が、最終調整の段階になっているとの見方が有力。このことも踏まえて、岡田最高顧問が総理に抜き打ち解散を打診しているとの見立てが浮上していますが、実際には、総理はじめ民主党良識派内では、任期満了までじっくりやるべきだという考えに傾いているという観測が勢いを取り戻しつつあります。きょうの野田総理の振る舞いには、社会保障と税の一体改革の素案や成案が、国民への説得に十分なメニューになりきれない気配を感じ取っていることがうかがえました。
岡田さんはインターネット番組でジャーナリストの角谷浩一さん、神保哲生さん、江川紹子さんから「クリーンとは何か?」と聞かれ、「クリーンとはオープンということだ」と話しています。新聞社の集計では、岡田さんは2010年分の政治資金収支報告書で、全体で8位、民主党の党員有資格者ではトップに立ったことが報じられました。ちなみに、まだ政治資金規正法がそれを要求していないにもかかわらず、民主党総支部と政治資金管理団体「岡田かつや後援会」の合計2団体に集約しています。関連団体を複数持っている政治家はその分実際はもっと資金力があることになりますが、岡田さんは最少の団体数でありながら、政権政党の党員有資格者トップになりました。
税と社会保障一体改革の素案は1月上旬にも決定する見込みですが、3党協議の成案に手間取るという観測もあり、岡田会長には、早期の行革調査会の法案作りが求められます。官僚による骨抜きを排し、政治家主導による法案づくりを通して、力強く前進してほしい。この関連法が成立すれば日本の閉塞感が大きく打破されます。ぜひ、これが成立する特別な国会を期待しています。電光石火で行きましょう。
やたらと不安で不安でしょうがない人を見かけます。でも、心配ご無用。日本は強い国です。なぜならまだまだ「削りしろ」がいっぱいあるからです。
さあいよいよ、「岡田行革」のスタートです。
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