【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

平成23年度4次補正決定 税・社一体改革前倒す 2・5兆円、一般会計総額は107・5兆円に。

2011年12月20日 13時58分14秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革


 政府は2011年12月20日(火)朝の定例閣議で、平成23年度第4次補正予算(案)を決定しました。野田佳彦首相、安住淳財務大臣、古川元久・国家戦略担当大臣、五十嵐文彦財務副大臣らが陣頭指揮に当たりました。4次補正は次の財務省ホームページですでに公開されています。
 http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2011/hosei20111220.htm

【歳入は、衆参ねじれ国会による熟議で1兆円!】

 歳入は、衆参ねじれ国会による法人減税法案の修正削除による税収上ブレの1・1兆円と、新発および借り換え国債(年間130兆円発行)の運用利回りが平均1%に安定したことによる、想定利回り2%との差額の1・3兆円を活用。2兆5345億円を増額補正しました。これにより、平成23年度一般会計総額(菅内閣が当初編成1次・2次補正、野田内閣が3次・4次補正)は107兆5105億円となりました。なお、経年比較のために注記すると、平成23年度予算書では農業者戸別所得補償が一般会計から、子ども手当は年金特会の「子ども手当および児童手当勘定」から歳出しています。

 直近の民意である2010年7月11日第22回参院選での衆参ねじれ。国税など改正法案が3党協議送りとなり、3党税調会長(藤井裕久さん、野田毅さん、斉藤鉄夫さん)によるねばり強い協議により、野田さんが主張した法人減税撤廃という熟議の成果の1兆円です。「税財政・経済に強い野田とは野田毅のことだ!」と言わんばかりの当選13期生の意地を見せてくれました。


[写真]衆院議員で自民党熊本2区支部長の野田毅さん

□国債費の不用額1兆円は「未来からのおこづかい?」

 歳入では国債費で1・3兆円の不用額が増額補正(当初予算歳出の国債費の減額補正)されました。ここでクイズです。1年間の赤字国債の発行額はいくら?答えは44兆円・・・だと思うでしょうが、それは新規発行(新発)の赤字国債の額で、借り換え(償還)のための国債発行額を入れると、総額130兆円となります。これは国債整理特別会計で想定利回り2・0%となっていますが、ことしの長期金利(国債の運用利回り)は1%前後で安定していました。そのため、1・3兆円のオカネがあまりました。ただし、長期金利の先行きはまったく安心できません。欧州債務危機で、相対的に安定している日本へマネーが流れたこと。タイの洪水被害や震災の影響がある株式市場(日経平均)から相対的に安定している債券市場(長期金利)へマネーが流れたこと。それと、日本の消費税率がたったの5%なので、将来的に5~20%ほどの「上げしろ」があるという“将来性”への国際的な評価です。こういったことで、長期金利が1%前後で済んだのです。ですから、この1・3兆円は、未来からのおこづかい。

【歳出では税・社一体改革を前倒し】

 歳出では、高齢者医療・子育て・福祉に0・5兆円。この中で、松あきらさんが取り組んでいる子宮頸がんワクチン等接種基金の1年延長にも526億円が計上されました。この事業は、これからは自治体主導でなく、日本国中同じ条件で受けられる国費負担事業でしっかりやっていきましょう。


[写真]公明党副代表で参院議員の松あきらさん。

 生活保護費の国費負担分は0・1兆円増額されました。

 中小企業資金繰り支援は7413億円とドッサリ。二重ローン軽減法(片山さつき筆頭発議者)や政令にもとづく、(株)東日本大震災事業者再生支援機構が借り入れたり、社債を発行したりする際の政府保証では0・5兆円の枠を設定し、間接的に分厚く被災事業者を助けます。

 このほか、エコカー補助金はちょうど0・3兆円。報道によると、きょうの購入分から対象になるようです。予算が切れ次第、補助もなくなるということでしょうから、「トヨタ」「ホンダ」「スズキ」のお店にドンドンかけ込んでエコカーを買ってください。

 TPP(環太平洋パートナーシップ)の交渉の事前協議への参加について、JA全農がハチマキをして激しい抵抗をしました。食と農林漁業の再生に必要な経費として1574億円を計上しました。具体的な箇所付けはまだ分かりませんが、JA全農幹部の振るまいが見物です。すでに多くの人が、JA全農の正体を見抜いているとされています。

 国際秩序の不安定さ・不透明さが増していますが、国連分担金(684億円)やアフガニスタン支援拠出金(521億円)など国債分担金および拠出金も0・2兆円増額。

 このほか、情報収集衛星、タイ洪水被害、南スーダンPKO対応などが盛り込まれました。また地方交付税交付金は3608億円増額補正されました。

 現時点で、まだ予算書本体は読んでおりませんが、タイヘン良く組めています。

 私は4次補正編成には懐疑的で、「総理が決めた以上はしょうがないな」と思っていましたが、総理の考えていることが分かってきました。

 新年度ではなく新年1月から、しっかりと国際秩序、被災企業者、零細企業者、農林漁業者、生活保護者、エコカー買い替え者を分厚く下支えする。野田内閣のそういう姿勢が浮き彫りになりました。そうやって、切れ目なく、スムーズに4月からの新年度に移る。まあ、まさか、誇りある政権準備政党である自民党さんが、第180通常国会で新年度歳入の半分を裏付ける特例公債法案に反対するなんてことはありえないでしょう。しかしまかりまちがって、そのまさかがあるとすれば、それへの予防線を張る。そうやって、「先行き不透明な不安な社会」から「やや不透明で、ちょっと安心な社会」へ。一歩一歩、いや、半歩半歩乗り越えてい。

 15日の日銀短観は震災の落ち込みから回復していた景況感が、タイ洪水被害・欧州債務危機の暗雲がたれ込め、再びマイナスになりました。大企業以上に零細の業況判断が激しくマイナスに振れました。これは先行きの見通しであり、実際はそこまでマイナスにならないでしょう。が、社長さんの景況「感」を忠実に反映する短観らしい結果となりました。不透明とは不安ということなのです。大企業ほど見晴らしの良い高台から世界を見ることはできません。そのような震災後の日本が置かれている状況を理解し、苦しさを分かち合えないようなタックス・ペイヤー納税者は、日本国民でなくなってけっこう。「絆」もいいですが、イチバン頼りにできるのは「国家」です。税金をしっかり払い、それが公正に分配される政治を目指して。その2012年の幕開けをかざるのが4次補正です。

 当ブログはこの4次補正を「野田・安住 希望の朝焼け補正」と命名しました。平成23年度第4次補正予算(案)は、平成24年(2012年)1月の中下旬に召集される第180通常国会の冒頭に提出され、成立します。

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