【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

第179臨時会が閉幕 

2011年12月09日 15時31分51秒 | 第179臨時国会(2011年10月)議員立法

[画像]国会閉会にあたりあいさつする、平田健二参院議長、2011年12月9日の本会議、参議院インターネット審議中継から。

 第179臨時国会が閉会しました。当初会期通り平成23年(2011年)10月20日(木)から12月9日(金)までの51日間でした。

 ことしの国会は第177通常会、第178臨時会とも当初会期末当日に延長を決議するという異例の事態が続きました。東日本大震災・東京電力原子力災害および台風12号という数百年に一度の大災害の年でした。そして今第179臨時国会中には、西岡武夫・参議院議長が在職中に亡くなりました。西岡さんは召集日・開会式から欠席していました。「国民の生命と財産を守る」という政治(政府、国会)がもろくなっている世相を象徴させるような出来事がありました。後任に平田健二さんが選ばれました。

 その中で、「復興債」「復興特区」「復興庁」の東日本大震災復興3点セットが成立。復興債は25年償還となりましたが、未曾有の災害からすれば妥当な年数だと感じます。総額12・5兆円の平成23年度第3次補正予算が成立しました。原子力災害のため、審議が難航していた原子力協定4条約(韓国、ベトナム、ロシア、ヨルダン)が承認され、将来への種をまくこともできました。

 第177通常国会での自民党の議員立法3点セットのうち、第178臨時国会で成立した「塩崎法(原子力発電所事故の調査委員会設置法)」にもとづく両院合同調査会が衆参15人ずつで発足しました。これは衆院と参院の委員室を相互に使うスタイル、QT党首討論(国家基本政策委員会)と同じスタイルで開かれました。ただ、会長は衆院議院運営委員長(小平忠正さん)に固定されました。両院による審議の新しいスタイルが生まれました。もう一つ「片山法(二重ローン軽減法)」も衆院で修正のうえ、参院に回付し成立しました。橋本聖子さんらが提出していた「私学の建物の復旧助成特措法案」は成立しませんでした。

 直近の民意である「衆参ねじれ」(2010年7月11日の第22回参院選)。有権者の一部には「お灸が過ぎた」と思っている人もいるでしょうが、「ねじれの成果」がありました。ねじれもたまには良いものです。政府が平成23年4月1日施行を想定して提出した「国税改正法案」のうち、第177通常国会、そして第178臨時国会などで分割して成立させてきた部分を除き、継続審査となってきたもののうち、相続税増税および法人税減税がついに成立しませんでした。すでに12月ですので、廃案になると考えられます。政府の税制改正大綱に基づき、提出された増税法案がハウス(国会)での議論の中で廃案になるのは珍しいのではないでしょうか。これは、民自公3党の税調会長による実務者協議のなかで、野田毅・自民党税調会長が党の方針を踏まえて認めなかったようです。ですから、これは衆参ねじれの成果、「熟議」と言えるのではないでしょうか。政府・民主党は平成24年度税制改正大綱を今夜にも決定する見通しです。ところが、これまでの報道で、「積み残しの相続税増税を平成24年度税制改正大綱に盛り込む見通し」という報道が散見されました。これが法案として国会で審議される2012年3月ごろ、衆参の議席構成はことしとまったく変わりません。その状態で、同じものを盛り込むのは不自然というよりも、政府が国会に喧嘩を売るようなものです。メディアが政治部でも経済部でも、すべて「国権の最高機関は国会である」という当たり前の前提を、再確認すべきでしょう。

 自民党が衆参とも委員長を務める「決算委員会」は、参議で平成21年度決算を不認定としました。このなかで、鳩山内閣が政権交代直後に、閣議決定で、予算の執行を一部停止したことについて、財政民主主義に反するという指摘が自民党・公明党からありました。たしかに予備費使用の国会での事後承諾は数百億円単位なのですから、金額から言っても、何らかの国会への報告はあって法律の定めはなくても、あってよかったのかなと考えます。私自身も当時、「予算の執行停止は大臣命令でできる」ということを与党初体験の総理側近にサジェスチョンした経緯もあり、改めて議事録を読み反省します。

 日本郵政改革関連法案、国家公務員給与引き下げ関連法案は、第180通常国会の冒頭で審議する運びとなっています。ただ、法案の修正の余地はかなり大きいと思います。

 ハワイでのAPECにあわせて、野田佳彦首相のTPP(環太平洋パートナーシップ条約)の交渉への事前協議について、国論を二分する議論が巻き起こりました。これは当然ですが、しっかりと足腰の強い議論となり、80年前のブロック経済化の流れよりもはるかに進歩した輿論をみせることができました。2020年の第32回オリンピック・第16回パラリンピックの東京への招致決議が衆参とも全会一致でなされました。

 強行採決は一度もなかったのですが、会期末当日の衆院外務委員会で、参院先議の「日本とペルーの経済連携協定(EPA)」と「日本とメキシコの経済連携協定(EPA)の改定議定書」の条約2件の審議に自民党ら欠席。質問時間を「空回し」したうえで、採決され、承認されました。今国会での参院先議の議案成立もこの2件だけでした。

 参院では会期末に、自民党と公明党が一川保夫防衛相と山岡賢次国家公安委員長(兼)消費者担当相の問責決議案を提出しました。1998年夏の参院選で第2次民主党が結党直後に大躍進(橋本首相が退陣)した後の秋の臨時国会で、民主党の北澤俊美・参院国対委員長らの指揮で、額賀福志郎・防衛庁長官を問責して以来、6人目・7人目となりました。また参院議員である大臣への問責決議案は過去何度も提出されていますが、可決されたのは一川さんが初めて。仲間意識の強い参議院では特筆すべき歴史的出来事となりました。年末に2大臣が問責されるのも2年連続です。あまり「風物詩」にしない工夫が政府・民主党幹部に求められます。13年前の額賀大臣は、就任前に発生した防衛庁内の不祥事の対処を問われた問責でしたので、一川防衛相をかばいきるには、理論武装面ではかなり厳しいと言わざるを得ません。私見ですが、どうも一川さんは辞めたいような表情も見て取れる感じがしますが、どうなんでしょうか。

 提出されなかった法案としては、「衆議院区割り審設置法改正案」で、最高裁が明確に違憲とした「1人1枠方式」と「2010国勢調査に基づく、2012年2月25日までの新区割り勧告期限」の2つの条文を手直しする法案が出せませんでした。通常国会冒頭でも間に合いますが、仮に2012年3月15日までの「第1期間」に小選挙区選出議員が欠けたら、4月22日(日)に補欠選挙があります。仮に2つ以上の選挙区での統一補欠選挙となり、現行の区割りで選挙をした場合、ついに裁判所は選挙の無効・やり直しを命じる可能性があるのでは。今国会では、民主党幹事長代行の樽床伸二さんが各党協議会座長として、自民党実務者の細田博之さんの間で、定数是正(区割り審設置法の改正)では合意済みでした。ですから改正法案は衆参ねじれでも可決・成立したはずです。とはいえ、7つの中小政党にとっては、定数是正の次にある「比例定数削減」、そしてそのまた次にある「選挙制度の抜本改革」は組織としての存亡の危機につながります。いかにも「政治」という感じがするマターですが、もう少し歩み寄れるように第180通常国会に先送りとなりました。樽床さんの胆力が試されます。ただ、私は現段階では、樽床さんの政治家としての資質に対して懐疑的にならざるをえない心境です。

 12月24日ごろに、平成24年度予算(案)が閣議決定される見通しです。さらに税と社会保障の一体改革大綱の素案を年内につくり、それをもとに与野党協議で成案を得るスケジュールになっています。第4次補正予算案、郵政改革法案、国家公務員給与引き下げ法案は通常国会冒頭に審議入りすることになりそうです。それから予算。そして、平成24年度の特例公債法案、消費税増税法案が議題となる、3月・4月以降は、解散含みの展開になるのは決定的です。私たち有権者もそろそろ、次の総選挙で、小選挙区はどの政治家、比例代表はどの党に入れれば、参院のねじれは続くとはいえ、国益・国民益、そして家族と自分の利益になる政府をつくれるのか。情報収集とその整理、分析、話し合いを始める時期に入ってきました。

 なお、決算審査での松野信夫さんの質問などいくつか面白いなあ、と思いながら書くタイミングを逸していた問答がありますので、年末までにまた書いていく予定です。

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