【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

北澤俊美さん「法案は、どんどん衆院を通して参院に送れ」、「岡田さんの3党協議体制をまもれ」

2011年12月17日 15時58分21秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]左、民主党副代表で参院議員の北澤俊美さんと民主党最高顧問で衆院議員の岡田克也さん、ともに筆者撮影。

 胸がはち切れんばかりの思いです。

 民主党副代表で参院議員の北澤俊美さんと民主党最高顧問で衆院議員の岡田克也さんに路線対立が勃発です。岡田さんは第39回衆院選(1990年2月18日)、俊美さんは第16回参院選(1992年7月26日)に絶頂期の経世会(自民党竹下派)公認で初当選。しかし、第4派閥となる「改革フォーラム21(自民党羽田派)」に入り、新生党結党に参加。細川・羽田内閣で俊美さんは農水政務次官、岡田さんは「いしずえ会事務局長」を務めました。羽田内閣総辞職で、下野後も、新進党の第2回党首選では羽田孜陣営でした。その後、別の党になりましたが、民主党結党に参画し、15年連続の野党生活に耐え、政権交代を実現しました。鳩山内閣では、岡田外相、北澤防衛相として首相を支えました。


[写真]ピエール・ドゥ・ロンサール(北澤俊美さん栽培・撮影)

 武闘派に見えて、バラを愛するロマンティストの俊美さんが今週火曜日13日の定例常任幹事会で、第180通常国会の戦術について「国民に理解を得られる法案は衆院で強行してでも参院に送るべきだ。その覚悟でやらないと必ず行き詰まる」と述べたと、16日付の朝日新聞が伝えています。一方、岡田さんがつくった3党協議路線を維持すべきだとの意見も出て、議論が割れたようです。金曜日16日の幹事長代行定例記者会見で樽床伸二さんが認めています。

 この背景には、第45回衆院選の長野選挙区で完勝(全5区で民主党公認候補が勝ち、対抗馬の自民党候補が全員比例も含めて完全落選)を陣頭指揮した長野県連代表に復帰し、次の衆院選への意識が強いものと思われます。俊美さんは、民主党・新緑風会(輿石東会長)で無役で、参議院(平田健二議長)でも無役です。とはいえ、民主党本部では副代表、そして来る平成24年党大会(1月16日月曜日)の実行委員長という大役があります。さらに民主党長野県連代表に復帰しました。定数是正で平岡案(5増9減)が採用されると、長野県の定数が1つ増えて、長野6区が新設されます。そうでなくても、長野県北部の特に1区、続いて、2区、3区は有権者数が多い(1票が軽い)選挙区。しかも平成の大合併の影響で基礎自治体が割れている区割りが目立ちます。いずれにしろ、大幅な境界線変更は全選挙区にあると思われます。さらに対抗馬となる自民党支部長は2区~5区まで決まっていて、旺盛な活動をしています。私は今月、5区の元職を東京で見ましたが、だいぶ元気になったようで、2世議員特有の偉ぶった雰囲気も消えていました。落選で反省したのでしょう。さらに2区、4区もマッチレースでは自民党が優勢さを取り戻しています。羽田さんが引退する3区も含めて、地滑り的に負けてしまう可能性があります。「北澤県議」時代の後援会がある1区も、区割り変更の上、みんなの党の二世新人が出馬する噂もあります。俊美さんは3党協議が整わなくても、衆院を過半数で法案を強行採決し、参院に送り、参院で野党に対して法案成立を(修正したうえで衆院に回付することを含めて)求めていく。それができなければ、両院協議会をやったうえで、早めの衆議院解散という考えがあるのでしょう。

 一方、3党協議体制ですが、岡田最高顧問、前原誠司政調会長らはここに来て、任期満了までやって実績を挙げたいという考えに傾きつつあるとの観測が大勢をしめ始めています。少なくとも、子どものための手当は見届けないと、民主党コア支持層が壊れる可能性があります。

 このようなことで、俊美さんの「衆院の過半数で参院に送って参院で対応を待つ」のか?はたまた岡田さんがつくった3党協議体制を維持しして、衆院段階から法案を手直しして、衆参を通すのか。答えは2つに1つということになります。

 さて、新進党第1回党首・幹事長選挙で、さきに小沢一郎氏の幹事長無投票当選が確定。そのあと、羽田孜さん、海部俊樹さん、米沢隆さんの3候補による党首選となりました。私としても既に小沢幹事長が確定しているのに、羽田党首となれば、旧日本新党、旧民社党、旧公明党、旧新党みらい(自民党清和会系)などの人たちは納得しないだろうと考えました。ここで、「ツトム君・いっちゃん」コンビに亀裂が入りました。ですから、政治の世界で、一生の親友などできるわけがないのです。繰り返し言及していますが、民主党1期生が赤坂で飲み会をしていても、それは特にならないばかりか、害になる。第46回衆院選で、自分が当選して、友人が落選したら、「秘書に雇ってくれ」と言われて断りにくくなる。だから、岡田さんは飲みに行かないのです。それが政治家の必定であり、それが政治家を通した国民の世論を政策に反映させるというプロセスなのです。

 最後に、なぜ「3党協議体制」をつくらなければならなくなったか、再度ご説明します。衆参ねじれに苦しむなか1月31日、小沢一郎(氏)が強制起訴されました。そして、小沢一郎(氏)の処分に関して民主党役員会が倫理委員会へ諮問しただけで、そのわずか3日後である2011年2月17日、渡辺浩一郎・笠原多見子・川島智太郎ら16人が突如、会派離脱届を提出し、新会派結成を宣言するという「2・17ショック」が起きます。っこれにより、社民党幹事長の重野安正さん(衆院議員)らの協力を得て衆院で3分の2で再可決する案が絶望的になりました。いわば、日本国憲法60条と59条が想定していない憲法のすきまを小沢グループに突かれ、日本が崩壊しかける事態となりました。この後、民主党幹事長の岡田克也さん、公明党幹事長の井上義久さん、自民党幹事長の石原伸晃さんの同期コンビが「3党協議」の枠組みをつくり、日本を救いました。渡辺は「まさか大震災(3月11日)があるとは」と政治家にあるまじき危機管理意識の欠如を示しながら、会派離脱届けをひっそりと取り下げました。渡辺、笠原、川島らは第46回衆院選で落選するでしょうが、日本のすべての社長さんは、彼、彼らを絶対に信用して雇ってはならないと、アドバイスしておきたく存じます。私はそのように考えますが、みなさんはいかがでしょうか。あるいは「悪いのは小沢さんであって、彼ら彼女らは利用されただけで、悪くない」という意見をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

 さまざまな思いの交差する、新進党解党から14年目の年の瀬です。

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内閣が郵政改革法案を撤回し、3党合意で郵政民営化法改正へ 全特、小選挙区で公明党支援も

2011年12月17日 13時14分29秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[画像]公明党幹事長代行の衆院議員(広島県本部代表)の斉藤鉄夫さん(公明党YouTubeチャンネルからキャプチャ)。

 民自公3党は、2011年12月16日(金)、郵政改革関連法案をめぐる3党協議を幹事長代行レベルで開きました。これには民主党幹事長代行の樽床伸二さん、公明党幹事長代行の斉藤鉄夫さん、自民党幹事長代行の田野瀬良太郎さんが出席しました。

 斉藤鉄夫さんは、自公政権が第44期衆議院で成立させた「郵政民営化法」を議員立法で改正し、「郵便事業(株)と郵便局(株)を統合」することで親会社日本郵政(株)と、郵便事業・郵便局会社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3子会社の「4社体制」にする。そして、東日本大震災の復興財源にするために、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を政府が3分の1超保有しながら、2022年9月末までに2分の1以上を売却する、との公明党案を出しました。ちなみに、私の手元の計算では、10兆円を越える税外収入(埋蔵金)が政府に入ると考えられます。

 これを受けて、樽床さんは、3党合意ができた時点で、第176国会閣法1号~3号の「日本郵政改革法案」など3法案を、国会法59条にもとづき、内閣が撤回する考えに同意しました。

 17日付日経新聞2面によると、旧名称および通称「全特」こと全国郵便局長会の柘植芳文会長は、斉藤鉄夫さんの事務所を訪れ、意見交換しました。関係者によると、公明党が第46回衆院選で9人擁立する「小選挙区での支援も視野にある」と話したと報じています。

 麻生自民党内閣で環境大臣を務めた斉藤鉄夫さんは、1993年に中選挙区広島1区で初当選し、新進党で比例中国ブロックに転出。解党後に公明党再結成に加わった後も、比例中国ブロックで、広島市に事務所を構えています。ちなみに第4代自民党総裁で、第58~第60代首相の池田勇人さんは広島県内の特定郵便局長のせがれで、中国地方でイチバン有名な特定郵便局長のせがれだったそうです。前島密が明治4年に郵便制度をつくりました。なぜ明治4年という早い時代にわが国が郵便制度を導入できたかというと、5街道の整備と飛脚があったからでしょう。江戸~大坂が3日間ですから、江戸~京都は淀川を渡らないので2日間だったでしょう。これに加えて、山がちな地域でも、池田家のような造り酒屋など各地の名士に特定郵便局をやってもらうことで、ユニバーサルサービスの郵便制度が明治4年にできたのです。後輩の日本国民として誇りに思います。ですから、小泉純一郎さんが「自民党をぶっ壊す」「郵政民営化は改革の本丸」と言ったのは、いわば池田勇人さんの反対。もっとも自民党らしい総裁であった池田さんの「国民所得倍増計画」で大企業製造業の儲けを広く国民に分配した経済・政治体制とは反対の方向に日本および自民党を持っていこうとし、成功したのだということなんです。

 公明党は北海道10区に稲津久さん、大坂3区には元「いしずえ会」の佐藤茂樹さんらを擁立します。これまでの創価学会とはかなり毛色の違う、全特の支援をもらうことになれば面白い選挙戦を展開しそうです。とはいえ、全特は第22回参院選で、候補者を一人も当選させられませんでした。民主党内でも連続当選している人は、「全特の票はたいしたことがない」としています。しかし、郵便局長OBと郵便局長夫人は、前述の歴史的経緯もあり、弁が立つ人が多く、「選挙戦をつくる」「陣営を引き締める」点では素晴らしい能力を持っています。そのため、選挙戦術や組織運営が不得手で、コアメンバーをつくれておらず、かつ区域が広い(過疎ぎみである)選挙区をかかえている人にとっては、「全特頼み」が強くなります。このため、民主党内では小沢グループに「全特頼み」の議員が多い傾向があります。とくに大阪3区では、国民新党の中島正純さんがいますが、彼は小沢グループ在籍中の政治資金収支報告書虚偽記載で民主党を離党し、国民新党の軒先を借りています。こういった調整も含めて、全特は上から目線で決められます。公明党内でも斉藤さんが説得する場面が出るのかも知れません。また当然「自公」をめぐって、自民党内、公明党内に摩擦が出る可能性があります。

 これで3党合意ないし2党合意ができれば、日本のデモクラシーにとっても良かったと思います。どうしても、提出中の「郵政改革法案」は、郵政を再国営化するという法案だと考えている国民が多いからです。知識階級でも「みんなで選挙で決めたんだからさ、そのままやればいいんじゃないの」(歯科医院院長)ということで、郵政改革法案に反対していました。郵政改革法案は、郵政株の3分の2を売るのですから、民営化のプロセスを再び進めるものです。しかし、ほろ苦さもまじった「訓政期」の教科書である「郵政民営化法」をいかしたうえで、議員立法で手直ししていく。それが、「プロセスの透明化」「政治を国民の手に取り戻す」ことになります。

 3党合意ないし2党合意ができれば、中期的な復興財源確保はヤマを越えます。公明党の斉藤さん、民主党の樽床さんの「新進党コンビ」が合意したことで、衆参とも過半数となり、ねじれを突破できます。ちなみに、通常国会での内閣による法案の撤回は、169国会(福田自民党)は0本、171国会(同麻生)は3本、174国会(鳩山民主党)は1本、177国会(同菅)は8本と増えています。これは177国会中に3党協議のしくみができたことで、閣法を撤回し3党合意による議員立法というスキームが構築されたからです。その証拠に169国会も衆参ねじれでしたが、撤回はゼロでした。このように衆参ねじれと3党協議による熟議の国会は進んでいます。もう少しスピードアップしてもいいですが、それだと議論について来られない人が国会議員でも増えることになり、プロセスが理解できなくなるというデモクラシーの大きな危機につながりかねません。このジレンマがあります。国民も試されますが、与党議員には、もうかなり悲惨な状態になっている人がたくさん出てきています。

 あれから14年が経ちました。今でも年の瀬になるたびに、小沢一郎(氏)に新進党を解党された、それは目の前で親を殺された人とまったく同じかそれ以上の心の傷、トラウマでしょうが、うずきます。しかし、前を見なければなりません。新進党の志を持ち続け、新進党の枠組みを活用すれば、どんな国難も絶対に乗り越えることができます。

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