ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

自民党清和会文科副大臣、子息の諫早湾ギロチン干拓事業入植に「やましいことは一つもない」

2013年04月22日 23時59分59秒 | 第183通常国会(2013年1~6月)附則・附帯決議

(初投稿日時は2013-04-23 08:58:05で、バックデート)

【2013年4月22日(月) 参・予算委員会 基本的質疑1日目】


 平成25年度予算案は4月22日に参院で実質審議入りしました。なお、参・予での趣旨説明は3月29日(金)の平成25年度暫定予算審査の際に一緒に済ませてありました。

 このため、午前9時開議の直後から、テレビ入り質疑が始まりました。

 前の任期の、初の参院での本予算審査のシーンがよみがえります。衆院通過の翌朝、午前8時50分趣旨説明し、午前9時テレビ入り質疑のスケジュールで運びました。この日程をおそらく秘書官ともども勘違いしていたと思われる、総務大臣、国土交通大臣、行政刷新担当大臣の3衆院議員が遅刻。前夜に衆院通過の祝杯を挙げていたのではないと信じたいところですが、自民党の筆頭理事から「参議院なめているのか!」と叱責され、審議入りが遅れるという参議院で何度も見たシーンが繰り返されました。

 「脱税総理と着服幹事長」の下、民主党の支持率は50ポイント落ちてしまい、初の通常国会直後に衆参がねじれてしまいました。この時点で第1次与党期は敗戦を迎えました。

 平成25年度本予算審議の衆院・予算委員会は充実したものとなりました。民主党委員が全員60歳代前半以下で、総理、官房長官、大臣をねらえる人だけが登場したからでしょう。それとは逆に、日本維新の会、みんなの党は閣僚未経験者だけが登場し、「私は開業医だが、消費税の損金参入を続けて欲しい」、「私は勤務医だから、日本医師会の利権に切り込んでいきたい」、「JAはいらないと思う」、「従軍慰安婦問題に関わっている人は左翼が多い」など率直な発言が多くて好感が持てました。この2点があいまって、野党の質疑が立体的に実りあるものになったのだと考えます。

 それとは相対的に、参院での基本的質疑の初日は、正直、おもしろいものではありませんでした。政権交代ある二大政党政治の実現により、衆議院が「閣僚vs民維み生」のアリーナ型の議会になりつつあるのに対して、参・予は、組織(県連・産別)代表が、政府をチェックしている感じがしました。民主党・新緑風会の質疑は、幹事長、政策審議会長とも「人口論」から入って良かったのですが、あまり傾聴に値する大きな議論にはなりませんでした。その他は、デパートのようにメニューを総ざらいした雰囲気でした。産別出身の議員が、衆院側でも争点になった「解雇の金銭解決」について取り上げ、参議院でも続けて欲しいです。

 新憲法ができた当時の参議院はチェック機能「再考の府」が期待されていたわけですが、その後、選挙の度に政党人が増えて続けて今日にいたります。これからの参議院がどうなるか。第183通常国会での予算委は注目したいところです。つくづく、20年前、参議院本会議が午前10時半ごろ散会した後に、横山ノックさんと西川きよしさんが談笑しながら、青空の下、議員会館につたわる横断歩道を歩いていった頃の参議院が私の中ではベストだと考えます。「100歳の双子姉妹、きんさん、ぎんさんに国民栄誉賞を」と宮澤総理に迫った西川きよしさんのような自由さがまったくない。あのころは、「タレント議員」「吉本枠」とバカにされていましたが、今の閉鎖的で窒息しそうな参議院よりもよっぽどマシですよ。

 その中で、林久美子ネクスト文科大臣が、谷川弥一・文部科学副大臣(自民党清和会)の予算執行者としての資質に迫りました。

 有明海の諫早湾干拓事業のギロチン事件といえば、当時の第1次民主党さんにとっては立党の原点ともいえる出来事で、橋本総理に、ムツゴロウの置物をプレゼントするという鳩山代表のパフォーマンスはあまり理解できませんでしたが、16年経って、新進党出身の私としても、第1次民主党さんの諫早湾ギロチンに関する公共事業コントロール法案は、「コンクリートから人へ」民主党立党の原点であると感じます。偶然にも、第2次野党期の最初の質疑も、諫早湾干拓事業でした(民主党下野後トップバッターは大串博志さん「改革の原点」諫早湾干拓事業から)。

 2008年4月1日(当ブログ内エントリー【諫早湾】「1人59億円」と「自給率39%」を双肩に営農開始!参照)に、営農が始まった諫早湾干拓事業ですが、2533億円の事業費がかかったわりには、営農者は42事業者だけで、1営農者あたり59億円になります。

 この営農者のうち1つの農業生産法人は、長崎3区選出の自民党衆議院議員で、元長崎県議会議長の谷川弥一・文部科学副大臣の子息です。このことは、私は以前から知っていて、ブログにも書いたような気がしていましたが、調べたところ、ブログに書いたことはないようです。

 この選定過程について、昨年、長崎県議会に証人尋問されたのにもかかわらず、谷川さんが欠席したことについて、谷川副大臣は「やましいことはいっさいない」と答弁しました。

 長崎県議会の会議録をみると、「ただいま私の方から提案させていただきました5月19日、金子原二郎氏を証人尋問する。5月26日、谷川弥一氏を証人尋問する。そのことについて委員会としての決をとりたいというふうに思います。賛成の委員のご起立をお願いします」「ありがとうございました。(拍手)では、そのように運んでいきたいというふうに考えています。というふうなことで、議長からのお願いの文書を出させていただきたいというふうに思います」「谷川弥一氏代理人の2名は、2つの理由をもって不出頭届といたしておりますが、一つは質問状に対して真摯に対応せず回答を拒否していること、あるいは100条委員会が乱用されているというふうなことなんですが、るる述べられているんですけど、前回の金子証人に対する不出頭届についても述べましたが、まず第1に、証人として出頭するかどうか、そのことについては、これはあくまでも100条委員会が判断するという、裁量権の問題につきましては100条委員会にあるということをあわせて私は申し上げたいというふうに思います」といった審議内容がみられます。

 予算の執行のあり方として、谷川副大臣は国会で説明する義務があります。例えば、文科省の教科書検定なども予算の執行の一つですが、こういった検定で、何か副大臣が官僚に働きかけるかもしれません。こういった問題の処理は、置き石をはじくようなことであって、予算審議において最優先すべきことだという考えを私はもっています。 

 このほか、林ネクスト文科相は、いじめの問題などに関して、参・文教科学委員会での一般質疑で谷川副大臣が十分でない答弁をしたと追及しました。このやりとりは、3月21日の文教委のやりとりのほぼ再現にちかい格好でした。 

 参・文教委での質疑。

 林さんの「御就任なさってから、いじめあるいは体罰が発生した学校の現場に足を運ばれましたか」との問いに、谷川副大臣は就任後の視察で、「大分に行ってきました。そしてこの間、大臣に付いて五島の学校にも行ってきました」として、下村博文文科相とともに、地元の五島列島に副大臣として「凱旋」したことを明らかにしました。そのうえで、「そしてもう一つは、一番ひどいところを視察に行きたいので、そこを選んでくれぬかという指示もしております」と語りました。このように答弁すると、谷川さんが次に視察に行く場所は日本一いじめがひどいというお墨付きを与えかねません。

 さらに、いじめの予防措置について、林さんは谷川副大臣が記者会見で、「いじめに対しての私の考え方は、まず徹底的に予防、予防措置を図ってほしい(略)私は省内で言っているのは、NHKに相談してくれと言っているんです」という不可解な発言をしていると紹介しています。林さんの「このNHKに相談してくれというのはどういうことなんでしょうか」との問いに「公共広告機構という番組でずっと放送していますが、いじめをしたらいけないんだよということを徹底的に社会に浸透させていただきたいという意味です」。林さんが「それじゃ、副大臣はいじめをなくすためにNHKでたくさん番組を作ってほしいということでおっしゃっているということですか」と聞くと、谷川さんは「テレビでいじめは悪いんだよ、悪いんだよとずっと言っていったら、だんだんだんだん、子供たちがそれを見ておって、ああ、いじめは悪いんだということを、してはいけないんだということを理解してもらえるような空気が出てくるんじゃないかと思っているんです」と答弁しています。

 おおよそ、これと似たような質疑が、テレビ入り予算委でも再現されました。

 ちなみに、公共広告機構とは、CM枠が空いている際に放送する無料広告を作成する、広告代理店と民間放送局が出資した任意組織だと思います。また、最近は、テレビをまねして学校内でいじめをしているとの指摘もあります。 

 谷川さんとNHKと言えば、政権交代後に放送されたNHKスペシャル「永田町権力の興亡」という番組の第3回の最後に、自民党の両院議員総会で谷川さんが「自民党は変わっていないぞ、変わっていないぞ」と叫ぶ中でエンディングテーマがかぶさるという印象的な場面がありました。この3年後に谷川さんは小選挙区で勝ち上がり、政権再交代し、五島列島に大臣ともに副大臣として凱旋したことになります。ちなみにこのNHKスペシャルは城本勝記者が編集したものですが、不自然な場面があります。1997年12月28日の新進党解党(分党)を決定した両院議員総会のシーンで、岡田克也衆議院議員の音が不自然に消されています。この番組では、小沢一郎氏がインタビューに応じているにもかかわらず、岡田さんはインタビューに応じていません。また、当時、岡田さんは記者会見オープン化の先頭に立っていました。このような経緯から、城本記者が意図的に岡田さんの声を消すという編集をしたのではないか。あくまでもげすの勘ぐりですが、それはさておき、谷川さんの「自民党は変わっていないぞ」の叫びが、その後の谷垣さんによる3年間の地に足がついた自民党の地域の声を吸い上げるとともに、公募候補を地方議員・組織がていねいに持ち上げるという復活のカンフル剤につながったように感じます。その成功体験を谷川さんが体で覚えていて、「いじめ対策は文科省ではなく、NHKの助けを借りたい」との心証につながっていたとしたら、これはこの国はけっしてよくなりません。

 安倍首相は谷川文科副大臣について「谷川さんは私より年上ですが、ずっと人生経験を積んでいるんですよ」と擁護しました。同派閥の議員を擁護する総理や大臣の姿勢をみて、私は「自民党は変わっていないな」と感じました。 

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