宮崎信行の「新・夕刊フジ」

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

「その都度支持」が地方を滅ぼす「衆院選は衆院選、参院選は参院選、そのとき限り軽いノリ」松本正生教授

2013年07月15日 06時36分58秒 | 第23回参院選(2013年7月)二番底

[画像]「そのつど支持」についてインタビューに答える松本正生・埼玉大学教授、2013年7月10日付公明新聞4面「解説ワイド どこへ向かう? そのつど支持」から、キャプチャ。

 このエントリー中、黒字は筆者の考え。茶色字は、埼玉大学・松本正生教授の考え緑字は公明新聞記者の考え

 1年前にも紹介した埼玉大学の松本正生教授(民主党分裂は国民の責任だ!「その都度支持」が停滞生む、松本論文を全有権者は肝に銘じるべき)のインタビュー記事が、2013年7月10日付公明新聞4面に掲載されました。なぜ、公明新聞かというと、やはり公明党支持層には「その都度支持」が少ないので、逆に同党にとっても「その都度支持」の動向により議席獲得数が左右されて迷惑するから、ということでしょう。

 公明新聞は、

 「そのつど支持とは、特定の支持政党を持たず、選挙のたびにどの政党がよいかを戦略的に選択する有権者の投票行動を指す。そのつど支持の存在を初めて明らかにした埼玉大学の松本正生教授によると、(略)そのつど支持は決して政党を拒否しているわけではない。むしろ政治や政策に関心を持ち、選挙時には政治家単位ではなく、政党単位で政策を評価する有権者ともいえる」


 と、公明記者のリードによって、松本教授が登場。

 そのつど支持について、松本教授は、

 「選挙がそのとき限りのイベントのようになってきている

 「そのつど支持層は、衆院選は衆院選、参院選は参院選、という具合に、政治や政策を継続的な視点で評価せず、そのとき限りで完結させている。軽いノリ(世間の空気)で選択しているように思えてしまう

 「中高年の投票行動は自民から民主、民主から自民へ軽々とシフトする

 以前は良くも悪くも政治を自分と直接的な関係として実感できた。地域の人と人との関係性の延長線上に政治があったからだ。しかし、無縁社会といわれるように、人間関係の希薄化は、政治をマスコミなどの間接情報に頼って判断せざるを得ない傾向を強めてしまった。

 まさに世論調査政治だ。

 有権者は政治や政策をマスコミ報道や世論調査を頼りに評価し、政治家もその動向に過敏になっている。投票率が高い年配の有権者もそうした影響を受けている。

 地域の人間関係が急速に希薄化している地方ほど状況は深刻だ。その悪影響は、地方政治の衰退に拍車をかけている


 と松本教授は、公明記者のインタビューに答えています。 

 ◇  

  これを裏付ける資料があります。総務省の外郭団体である、明るい選挙推進協会が恒例の国政選挙の意識調査を今月、updateしました。もちろんすさまじい第46回総選挙の調査結果です。

 

[画像]明るい選挙推進協会の第46回衆議院議員総選挙全国意識調査から、一部を抜粋、赤字は筆者が加筆。

 この中で、投票行動の決め手について、複数回答で、66%がその党の政策や活動を考えたとしているのに、「家族や知人のすすめだから」がわずか5・9%になっています。これは当ブログがおととし指摘した数字よりもさらに低くなっています。(
◎孤独な日本人 家族の勧誘は9・1%のみ 2009総選挙)。他の調査を読むと、第46回総選挙での民主党の惨敗は、第45回衆院選での民主党支持層が離れたからで、とくだん自民党、公明党はおろか日本維新の会に流れていないこともわかります。

 もう1つ、明るい選挙推進協会の調査で見て欲しいのは次です。

 



 まず、いかなる団体にも加入していない人が4割を占めます。それはさておき、「あなたは、社会についての情報を何から得ていますか」について、「テレビ」が48・3%がテレビと答えて、「家族や友人からの話」は0・9%にとどまっています。これは驚愕の数字ですが、ただし、設問は「もっとも多くの情報を得ているものを1つ選んでください」です。インターネットが9・1%という答えからも、今回の参院選の新聞世論調査で、ネット選挙運動解禁が盛り上がっていないという傾向が出ているのは当然でしょう。

 このほか、第46回衆院選について、投票率が下がったのは、「投票は国民の義務である」という憲法にも法律にもない誤った認識が是正されたからという面も調査では明らかになっています。第46回衆院選については、改めて書きますが、家族や知人と話し合わずに、66%の個人がテレビの情報を頼りに「その党の政策」を独断的に決めたり、1割の個人(複数回答)は「政党間のバランス」を独断で考えて投票した結果、自民党と公明党の3分の2、野党第1会派の民主党が57議席で予算委員会の理事ポストが1つだけという極端なランド・スライド(地滑り)を起こしてしまったことが分かります。

 第46回衆院選については、あらためて書くとして、松本教授の「そのつど支持」。私は、31ある1人区で、仮に自民党が30勝するようになると、これこそ、日本の歴史における「地方の死」になるでしょう。自民党政治の国土の均衡ある発展のため、金太郎飴のような風土になり、新幹線でストローのように若者が都会に出て行ってしまう。地方における「少子高齢化」とは、まちが消えることを意味します。「私のお墓の前で泣かないでください」から「私のお墓の前に誰もいません」へ。自民党に投票すると地方の景気が良くなるという空気感から、31ある1人区で、自民党が30勝するようなことになれば、これは、地方は完全に死にます。というよりも、すでに死にかけているから、極端な振り子が、2005年以降の国政選挙で続いているのでしょう。

 私はこの参院選を2016年が予想される衆院選の前哨戦として、民主党は政党交付金(平成6年細川・羽田政治改革4法のキモ)を確保するための大切な戦いだと考えます。しかし、有権者の多くは、そのような連続性で考えていない。逆に言えば、民主党の3年3ヶ月の悪政、失政は、第46回衆院選の惨敗と野田内閣の総辞職により責任を取り終えたのです。それが選挙というシステムのすぐれたところです。

 菅直人元首相が、東電原発への海水注入に関する政府と東電の証言の食い違いについて、twitterでつるし上げにあっています。

四機の原発が次々とメルトダウンと水素爆発を起こした事故です。どの原発からベントや海水注入を行うべきかは政治的な判断ではなく現場の状況がわかっている専門家の判断。yoione


 菅さんがつるし上げにあうのは当然であり、彼は話すべきことをたくさん背負っています。原発再稼働派の私としても、しっかり検証してもらわないと、再稼働が遅れてしまうので困ります。が、それは、社会的、歴史的な問題です。そのことを、第23回参院選の判断材料に使うのはお門違いです。なぜなら、もう、第46回衆院選によって、政治的にリセットされたからです。時代は前に進んだのです。

 「うっかり1票、がっかり6年」といわれますが、民主党公認候補は、ほとんどが現職。過去6年間の実績があります。自民党の1人区の候補者は大半が新人です。民主党の1人区公認候補は、野党→与党→野党、ねじれ→解消→再ねじれを経験してきています。もちろん、候補者ごとの評価は相対的なものなので、選挙区によって違います。家族や仲間で話し合い、情報を共有し、判断の責任を共有したうえで、投票所に向かうべきなのです。

 31ある1人区の有権者は、日本を潰す気なのでしょうか。

 松本教授は次のようにも言っています。

 「各政党は政治哲学を打ち出すことも大事だ。あなたの党は何を考えているのか、という部分を見ている人は、実はたくさんいる。

 ねじれ解消がかかる今回の参院選をそのつど支持層がどう受け止めるか非常に気になる。

 政党側としては、最低限のマナーとして政権の枠組みなど選挙後はこういう政権をつくります、という部分を明示しないとそのつど支持層の気持ちはなえてしまうのではないか


 参院選だから、政権選択肢は提示しないというのは本来的だと私も思ってきました。しかし、実際のそのつど支持層が、第47回衆院選をみすえていないのならば、民主党はある程度の政権選択肢を提示すべきなのでしょう。「非自民反共産」で、与党経験がある野党。衆院選で唯一過半数を超える候補者を擁立できる野党。それを強く打ち出していくべきなのです。老若男女が真っ黒に日焼けして「お願いですから、投票してください」とわめく姿をみせるしかないところまで民主党はきていると感じます。もうそれしかないでしょう。民主党および日本存亡の危機の1週間です。死ぬ気で戦い抜きましょう!

 
民主党分裂は国民の責任だ!「その都度支持」が停滞生む、松本論文を全有権者は肝に銘じるべき
 私たちが第21回参院選「逆転の夏」第22回参院選「反省の夏」で構成した参議院の第1会派と第2会派が、選挙を経ずして逆転する可能性が出てきました。第45回衆院選「政権交代の夏」で構...
 
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