【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

天罰のような大豪雪の民主党2014年福島党大会は初の宿泊形式で地方議員、女性、青年委が持ち味を発揮

2014年02月09日 19時13分49秒 | 第47回衆院選2014年12月アベノミクス解散

[写真]「全体セミナー」として、パワーポイントを使ってかなり基本的な経済学を民主党国会議員・地方議員・前議員総支部長らに解説する櫻井充・民主党政調会長、2014年2月8日、福島県郡山市内、筆者撮影。 

 民主党は2014年の党大会を立党以来初めて合宿形式で開き、「2015年統一地方自治体選挙の勝利こそ、民主党の再生、反転攻勢を目指す今大会の目標である。全党総がかりの闘う態勢を構築し、勝利にむけ邁進しよう」とする「福島宣言」を採択しました。

【1日目】 

「まさに天の戒めですな」上野駅から1時間10分。東北新幹線郡山駅(福島県中通り)に降り立った私はそうつぶやきました。
神の思し召しか、はたまた民(たみ)の怒りか、民主党国会議員、県連枠や、女性・青年委員会枠の地方議員(自治体議員)を豪雪が迎えるのは民主党の第一次与党期を反省するにはもってこい。


[写真]民主党大会当日に福島県などが大雪に。奥が党大会の会場の1つになったホテル。2014年2月8日(金)筆者撮影。

 英米の二代政党と同じく合宿形式となった2014年民主党大会。
 労働党なら党首夫人(首相夫人)が場外モニターに映る財務相(後に首相)についてつぶやいた一言が新聞で大々的に報じられたり、保守党ならば党首(首相)と握手した学生部長(現外相)のツーショット写真が後になって出てきたりと(実質的な)閉会中の夏の政治報道を大いに盛り上げています。党財政が改善されたら、秘書、全自治体議員、総支部推薦の一般党員が参加できるようにしてほしいですね。

さて。

 雪に閉じ込められたホテル内というのはふしぎとあたたかい。頭を雪で冷やし、体を一体感であたため、初日は政策勉強会に明け暮れました。
今回の党大会は、クラブ外でも、事前登録していれば名刺と引き換えにリボンと資料を受け取る、民主党第一次野党期に確立した「名刺方式」で取材できます。

 分厚い資料が入った封筒に書かれたスローガンが「学び、語り、再起しよう!」と左翼的なのはご愛嬌。実際に午後1時半から8時半まで学習漬けでした。

 海江田万里代表は議員数は減りながら、閣僚経験者が増えたため、党内実力者を取り込むために「総合調査会」を6つ設けています。これを3つの調査会のうち、任意の1つに出席。一時間半×2コマ。ここで地方議員が発言するのが今回の大会の肝です。

 玄葉さんのTPP調査会では、前外相の情報網で「TPPの妥結は最短で4月。その後各国で法制局の審査があり、最短で来年の通常国会に条約の承認案件がかかる」など詳しく説明。自治体議員に入り混じり郡司前農相、羽田前国交相、鉢呂元経産相(公認内定)、城島前財務相(公認内定)らベテラン中堅がずらり。



 ここで、初めから最前列に陣取った山田長崎県議が発言し、「こう見えても3期つとめています」
そして、「私たちは来年に統一地方選をたたかう。地元では、TPPについて、民主党は(国政与党の)自民党や公明党と一緒だと言われます。党本部の国会議員はもっとハッキリ言ってほしい」



 玄葉さんが「民主党の考えは、昨年の衆参農林水産委員会のTPP決議に集約されています」と語ると大串博志事務局長が「補足すると、全会一致ですが、民主党議員の働きかけで決議したものです」。山田県議は再び立ち上がり、「私は勉強不足でそのことを知りませんでした。それはポイント高いですよ。しかし、党本部はアピール不足ではありませんか。いやあ、五島列島から来た甲斐がありました」と語りました。山田県議、まるで「古き良き自民党政治家」のような存在感で、この6時間後、玄葉さんは全体会議で、「統一地方選を農村部でたたかう方は、昨年の衆参農林水産委員会のTPP決議をアピールしていただければたたかえると思います」と山田発言をさっそく参加者全員に伝達しました。

 後半の「農業」では、「以前は地方議員で農業一筋。畜産牛の全国組織の役員をしていましたが、後輩にかわってもらい、今は地元の本部長」として福島の和牛が2万頭から1・5万頭に減った現状を説明してくれた地元の和牛農家の方が最後に「私は玄葉後援会の地元の支部長です」「福島の和牛は高いんです。でもおいしいんです。(自由貿易論者である)玄葉先生を応援して、どんどん福島の和牛を世界に広めていきたい」としめくくる部分がありました。

 また、「地方議員4割、農家6割でやっています」と笑わせた農家の方は、現状をまとめていく中で、「私見として、小作料の低下が集落の崩壊につながっている」と指摘。ここで、なにかヤジが飛んだようです。「小作料」と言う言葉ははっきり農地法に入っている言葉ですが、この辺でやはり「寄り合い所帯の民主党」という側面はあります。ただ、玄葉さんや大串さんの声で、「いや小作料という言葉は現在普通に使われている言葉だそうです」と断言して、そのまま話は続きました。農業の現場がよく分かりました。

 新聞報道でイチバン関心を呼んでいた、北澤俊美会長の集団的自衛権をめぐる分科会。秋田県の佐藤議員が「私たち自治体議員は地元で北朝鮮(東海岸)から(日本海を飛んで秋田に)ミサイルが飛んで来たら、どうなるか、という話をしています。国会だけでなく地方議員にも分かるようにやってほしい」。愛知県の方は、「日本の国土が攻撃されたら日米両軍が抵抗するのは当たり前。他国が攻撃を受けたらどうするか(という集団的自衛権の話は)市民の間で議論がグチャグチャになっており、民主党はなんだと言われる。まず日本の国土はしっかり守るんだ、と主張する!それから集団的自衛権の話をすべきです」と語りました。月曜日のテレビ入り国会中継で集団的自衛権を質問する岡田前副総理が後ろの方の一般席から興味深そうにこの話を聞いていました。

 社会保障では長妻さんが「今年も早いものであと11か月となりました」「福島なので、(こんばんはではなく)おばんです!」となぜかギャグ連発。ニュー長妻をアピールか?長妻さんは分科会の冒頭に「民主党には最低保障年金という将来像がある」としながらも、現行制度では、「今のまま基礎年金部分にマクロ経済スライドを発動すると、25%程度減り、(給付額が最低水準の人は)おこずかい程度になってしまう」としました。この後の大学教授のパワーポイントを使った講演後には、元議員(総支部長)から、「もう一度説明してほしい」とのリクエストが出ました。

 自治体議員では、ウツミ議員から「日本はなかなか政権交代がおきないが、頻繁に政権交代がおきる欧州では、保守主義と社民主義(の二大政党)なのに、年金制度は変わらない。民主党も自民党と話し合ってください」と提言。群馬県議のあべともよさんは、「年金の問題は子育て世代の減少によるものだと考えている。今回は女性委員会のオブザーバーとして大会に参加していますが、女性が育児、介護、仕事と両立できる態勢をととのえてほしい」との趣旨の発言をし、長妻さんが、労働者派遣法改正法案が提出する予定であることなど、今国会における労働法制をめぐる論戦の見通しなどを紹介しました。また先ごろのNHK報道も踏まえて、「最近ではシングルマザーは生活保護より先に風俗(で働いて収入を得る)だ」と語り、「うちわの話し合い」の雰囲気を醸し出しました。

 池田・神戸市議は「高齢者の経験、ノウハウを地域社会でいかすことだ大事だ」、青森県のシブタニ議員は「生活保護の問題をしっかりととのえてほしい」、学生の渡辺さんは「宮本太郎教授に習っているが、ベーシックインカム実現の見通しはあるか」と発言しました。高山智司前衆院議員(公認内定)、山崎麻耶前衆院議員も発言しました。この後の、全体セミナーの報告で長妻会長は「地域の連携が大切なので、統一選に向けて、まず飲み会をするなど地域のつながりをつくってください」とまとめました。

 夕食後の全体セミナーで、福島選出増子副代表は「こんばんは、福島へようこそ。福島は皆さんを雪で歓迎しました」と天罰説を一蹴。そのうえで、放射性廃棄物の仮置き場・中間貯蔵施設・最終処分場を「首相の地元につくれ」との大胆な提言の中間とりまとめを発表。福島のみなさん、積年の恨み、私は賛同しますよ。山口につくれ!私は福島を応援します。山口県は民主党の国会議員はいないんだから。

 しょせん野党なんですから。2014年福島民主党大会が後世に語りつがれることと、政党財政の底上げでより多くの党員が参加できる政治文化を確立したいものです。

 この後、午後6時から弁当、午後7時から講演を経て、午後8時から、櫻井充政調会長の「全体セミナー民主党の経済政策について」。民主党きっての経済通の桜井さんが、パワーポイントのスイッチを自ら操作しながら説明しましたが、その内容はごらんのよう。



 「全体セミナー 民主党の経済政策について」と題しているけれども、おそらく、全員に経済学の初歩を学んでほしいという意味だったように受け取りました。江田元参議院議長、岡田前副総理らも熱心に耳を傾けていました。
 
【2日目】

 2日目も午前8時から、財務委員会、青年委員会などが開かれました。

 私は、福島県内首長と海江田代表らとの朝食懇談会を取材しました。全自治体が参加したわけではありませんが、南相馬市長、富岡町長、浪江町長らを初めてお見受けしましたが、その話は辛いものでした。その一方で、「当市では復興、復旧はほぼ終えました」、「観光で一人勝ちと言われて申し訳ない思い」との首長もいました。全員が参加したわけではないのですが、この首長らは玄葉さんの選挙区に多い傾向がありました。なかには「6000ヘクタールの農業用貯水池のパイプラインが壊れたけれども、玄葉先生、増子先生にお願いして農相に陳情したら1年で直った」との話もありました。もちろん玄葉さんの選挙区は沿岸から離れているとは、原発20キロ圏内もありました。玄葉さんの県議当選以来23年の活動の成果がいたるところで垣間見た2日間でした。

 そして、郡山市長は「郡山で党大会を開いていただき、本来、私ども(新幹線郡山)駅頭でみなさんをお出迎えしなければならなかったのに、行き届かず申し訳ありません」との発言もありました。海江田さんはずっとメモをとって聞いていました。

[写真]櫻井・南相馬市長(マイクを持つ人物)ら福島県内首長の話に耳を傾ける海江田万里・民主党代表(元経済産業大臣)=左、2014年2月9日朝、福島県郡山市内、筆者撮影。 

 この後、党大会を前にした「全代議員会議」がマスコミ非公開で開かれました。これは、今まで、党大会の数日前に両院(国会)議員総会を開き、党大会当日の午前中に「地方代議員会議」をしていたものを、国会議員・地方議員・県連代表らが一堂に会して議論する場。荒井聰役員室長のブリーフィングによると、国会議員からの発言は一つもなく、発信力の強化への要望など。野党連携に関しては、大阪府連から「維新ともっと正面からたたかってほしい」との一つのみ。

 そして、いよいよ党大会の全体会議がスタート。

 ここで、司会として、津村啓介・青年委員長と並んで、「男女共同参画委員長の郡和子です」との自己紹介。青年委員長と女性委員長ではないかと思いましたが、その後の大畠章宏幹事長の党務報告によると、この日の女性委員会の「総会」で、「男女共同参画委員会」への改称が決定し、さっそく党大会から変更になったということのようです。物言えば唇寒しと言われた、与党期・民主党はどこへやら。

 

 これまでの民主党大会は、「友党党首の来賓あいさつ」から始まり、民主党政治家よりも先に他党の党首がスピーチすることが多く違和感があったのですが、今回の来賓あいさつは、佐藤雄平・福島県知事(元民主党参議院議員副会長)と連合の神津里季生事務局長の2人。連合会長は「インフルエンザのため」(神津事務局長)お休みでした。神津事務局長は「連合の(本部・地協・産別の役員の)メンバーは個性が強くないとやっていられない(ので議員と軋轢が生じることも多いかもしれない」とし、「民主党の政権奪取があるんだと期待しています」と突き放しました。

 この後、来賓紹介として、維新の会国会議員団の松野頼久幹事長、結いの党の小野次郎幹事長、生活の党の小宮山泰子国会対策委員長の3人が紹介されましたが、スピーチや登壇はありませんでした。

 党規約の改正のポイントは「行政区支部」の創設。これにより、党本部―県連―行政区支部(代表・地方議員)と交付金が流れ、今までの衆・小選挙区総支部長の下に地方議員が入る格好からかわります。党地方組織における衆議院議員の影響力は下がると考えられますが、特段異論はなかったようで、「議員政党から組織政党へ」の流れで、2015年4月の統一地方選の勝利による、党の足腰強化をはかります。

 まあ、そのうち政権もとれるでしょう。

 党大会の締めでは、がんばろう3唱が民主党立党以来(おそらく)初めて廃止されました。がんばろう3唱は旧民社党から新進党を経て保守政党に入った政治文化だったのですが、時代の流れでしょう。

 がんばろう3唱ではなく歌。があって、立ち上がり手拍子でタテノリに。

 福島県福島市出身のシンガーソングライターの「AVE」(エイヴ)さんの歌。3rdシングル「福の歌」を、震災後、「福の歌~頑張っぺバージョン」として一部歌詞を変えたそうです。さらに、この日にあわせて民主党大会にあわせた修正も加えて歌ったそうです。



(上記動画の権利保持者からの問い合わせは、YouTubeより先に当ブログにお願いします。メールアドレスはmiyazaki@wa2.so-net.ne.jp)



  私は党大会は、「うちわ受け」でいいと思うので、地方で、宿泊形式でやっていけばいいと思います。くどいですが、党財政の改善と一般党員も当事者として党運営に参加する政治文化の確立は必須です。