【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

民主党の静かな革命 平成26年度税制改正法案の修正案を単独提出、「10%の日までに複数税率検討」

2014年02月26日 19時10分04秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

[画像]平成26年度税制改正法案の民主党単独修正案を提出する古本伸一郎・衆財金委筆頭理事、衆議院インターネット審議中継から。

【2014年2月26日(水)衆議院財務金融委員会】

 平成26年度税制改正法案(186閣法7号の所得税法改正法案、8号の地方法人税法案)の2日目の審査がありました。

 会派一巡後に、民主党の古本伸一郎筆頭理事が、政府提出法案への修正案を民主党単独で提出しました。

 古本さんの朗読を聞き取った結果、平成26年度税制改正法案の民主党単独提出の修正案はおおむね、次のような内容です。

 ◇

 今次税制改正は、

 (1)消費税増税のタイミングであり、負担軽減のために、逆進性対策、(タックスオンタックスで二重課税である)車体課税の抜本的見直し、医療などの控除対象外消費税の見直しをすべきである。それなのに、軽自動車・二輪車にかかる税は逆に増税となるなど狙い撃ちの増税があり問題だ。 

 (2)また、東日本大震災から3年がたつ通常国会なのに、「きずな」「連帯」に反する黒字法人のみが得をする復興特別法人税を1年前倒しで廃止しようとするなど、税を通じてどのような国家をつくろうとしているか見えないので問題だ。

 (3)とはいえ、所得拡大税制、中小企業・小規模事業者への交際費の非課税枠の緩和など、我が党が提案し(昨年度税制改正法附則に盛り込まれてい)たものも反映されている(ことは評価したい)。

 そのうえで、法案の修正として、

 一、給与所得控除の上限の引き上げに対する規定を削除する。
 一、復興特別法人税の廃止を1年前倒しする規定を削除する。

 そして、(附則として?)
 (1)給与所得者の実額控除を拡大するための基準などを、平成27年3月31日までに検討し、必要な措置を講じる。
 (2)自動車取得税の廃止、自動車重量税の特例税率の廃止、車体課税のグリーン化のそれぞれについて、平成27年3月31日までに検討し、必要な措置を講じ、これによって生じる自治体の減収について、適切な措置を講じる。
 (3)消費税減税緩和のための(マイナンバーを使った)総合合算制度、給付つき税額控除、複数税率などの対策に検討を加え、消費税10%引き上げの日(平成27年10月1日)までに検討し、必要な措置を講じる。
    (4)医療、介護にかかる消費税について、平成27年3月31日までに速やかに措置を講じる。

 ◇

 という趣旨の修正案を提出しました。

 この日はここまでで散会。次回は、政府原案と民主党修正案の両案を審議することになると思われます。

 税制抜本改革では、消費税法廃止法案が提出され、NHK国会中継入りで審議されたこともありますが、「寄木細工」できわめて複雑かつ膨大な、「年次税制改正法案」について、野党が修正案を出したのは、もしかして、初めてなのではないでしょうか。

 2012年6月の「社会保障と税の一体改革3党合意」にもとづき、昨年の年次税制改正法案では、松本剛明・民主党税調会長が、自公の税調会長と事前に協議して、政府提出法案の最後の1ページに、民主党が主張する検討項目が丸々附則として入りました。

 ことしは、昨夏の衆参ねじれ解消もあり、自公だけで政府原案を提出。このため、民主党が衆・委員会の平場に修正案を出すことになりました。

 民主党の静かな革命であり、衆参ねじれによって、事前協議が十分に整わなかったことによる、怪我の功名として、歴史的なシーンとなったかもしれません。

 また私から付け加えると、現在は「軽減税率」という言葉で語られている「複数税率」について、「消費税10%引き上げの日までに」検討するとしたことで、公明党にボールを投げたというとらえ方ができると考えられます。

 もう一つ当たり前のようで、当たり前でなかったこと。



[画像]平成26年度税制改正法案について質問する松本剛明・民主党税調会長、衆議院インターネット審議中継から。

 修正案提出に先立つ審議では松本税調会長が自ら質問。ちなみに、自民党では税調会長は国会で答弁・質疑をしない慣例になっています。 

 松本さんは「復興特別法人税の前倒し廃止といっても、今やっている確定申告では初めて復興特別所得税を申告している。これを個人はどう思うか、特に被災地の個人はどう思うか」と批判。そのうえで「国会で質問しても、政府は『与党税調が決めることだから答弁を差し控える』と言うが、今回は(法人減税をめぐる政府と与党のかけひきに政府が勝った結果)政府が決めた部分もある。私たちは国会で批判することはあっても建設的な議論をしていきたい。 これからも3党協議を続けるべきで、(政府は)議題に載せるものは(3党協議の場に)載せてほしい」と語りました。そのうえで、「この後、修正案を出すことになると思う」と予告しました。

 政権交代ある二大政党政治がまた一つ、前に進んだと実感しています。

 次回の審議では、ぜひ、自民党税調会長の野田毅・衆議院議員に質問に立っていただきたいものです。

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菅直人さん「(4号機プール)東京を含む五千万人避難の寸前」と認めさせ「よく検証してほしい」と去る

2014年02月26日 14時35分23秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

【2014年2月26日(水)衆・予算委員会 第7分科会】

 菅直人さんが質問に立ちました。

 これに先立ち質問していた維新の丸山穂高さんが「大臣に質問するよりも、この後に質問する菅直人さんに質問したい」と語りました。

 菅さんは「こちら側に立つのは5年ぶり。今若い人たちの質疑を聞いていて、30数年前に初めて委員会で質問したのを思い出す」と切り出しました。

 菅さんは前日に政府(資源エネルギー庁)が原案を決定した「エネルギー基本計画(案)」について質問。

 茂木敏充大臣は「10年余り(使用済み核燃料の)処分場がなかなか見つからなかったが、今後、最終処分のやり方(の技術)も進んでくるし、単に原子力を進める、進めない、ではなく、ベースロード電源からミドル電源、ピーク電源への筋道を示したバランスのとれた政府原案だ」と答弁しました。

 ところで、ベースロード、ミドル、ピークってどういう意味ですか?

 それはさておき、菅さんは「福島原発事故前と変わらない、いわば原発拡大計画であり、教訓が踏まえられていない基本計画案だ」と批判しました。

 田中俊一・原子力規制委員長は「福島のような事故を2度と起こしてはいけない。そのために最悪でも100分の1の放射能流出におさえるために、(原発周辺自治体に)地域防災計画の策定をお願いしている」と答弁。

 ここで、菅さんは、計画案の20ページに「原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合する と認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」との再稼働の基準について質問。

 茂木大臣は41ページに書いてあるとしました。計画案では「
国は、原子力災害対策指針の策定や防災体制の整備に加え、関係省庁を挙げて、引き続き関係自治体の地域防災計画・避難計画の充実化を支援し、災害対策の強化を図っていく」とあります。

 これについて、菅さんは「自治体が策定した地域防災計画そのものは、原子力規制委員会の再稼働の審査の対象にならないのではないか」と質問し、茂木大臣、田中委員長ともとくだんに反論せず、認めました。菅さんは「それでは、再稼働の責任を国が負わないことになる」と批判しました。

 そのうえで、東京電力福島第一原子力発電所4号機の原子炉の上にある「使用済み核燃料プール」について、水がなくなるとの指摘もあり、東京を含む5000万人が避難する寸前だったのではないかと指摘。

 これについて、田中委員長は「プールの深さは14メートルで、半分になるまでの水量は700トンだ。1日70トンずつ蒸発していたので、10日間でそうなるという予測をしていた」と答弁しました。

 私はこの答弁を聞いて、だったら2011年3月31日にはプールの水が空になっていた可能性もあるのではないかとの感想を持ちました。 

  委員室に戻ります。

 菅さんは、「キリン」と呼ばれたクレーンによる放水に加えて、政府の畑村・事故調査委員長は「幸運だ」「もし水がなかったら、どうなっていたか検証してほしい」と書いていると指摘。

 「たまたま原子炉の上に水が入っていて、最悪の現実にはまだ少し(時間と水が)あったということだ。東京を含む5000万人が避難する寸前だった。しっかり検証するように。質問を終わります」。

 物静かに語って、淡々と立ち去っていきました。

 同じ野党議員でも、5年前の菅議員とはすっかり違っていました。

  
[写真]薬害肝炎の資料を探しに厚労省地下倉庫に乗り込んだ菅さん、2008年=TBSニュースから。


太田昭宏国交相、「田中角栄さんが『海も道なり』今年中に佐渡島にうかがう」と即答、鷲尾英一郎さんに

2014年02月26日 12時10分07秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

【2014年2月26日(水)衆議院予算委員会 分科会】

 分科会がきょう1日の予定で設置されました。
 
 第8分科会は国土交通省所管の歳出。

 新潟2区(新潟市の一部、佐渡島全島の各自治体など)の民主党の鷲尾英一郎さんが、新潟市から海をわって佐渡島市内をめぐる国道の国庫補助について質問。新潟―佐渡間のフェリー料金の値下げなどを要望しました。

 太田昭宏大臣は「田中角栄さんが『海も道なり』ということで、国庫補助ができるように、新潟―佐渡の間を国道にしたんだろうと思う。今年中には佐渡にお伺いする。道路、港湾、空港など全体的に調べて、どすれば佐渡の力になれるか、どうすればよいか検討したい」と語り、2014年中の佐渡島訪問を即答し、答弁しました。

 太田大臣が少し、角さんに似てきたような気がしました。