【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

鷲尾英一郎さん、「日本航空の繰越欠損金控除3000億円減税は国民の負担だ」勇気の源は? 税制改正法案

2014年02月25日 14時42分15秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

[画像]JALの法人税繰越欠損金控除について質問する民主党の鷲尾英一郎さん=衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

【2014年2月25日(火)衆・財務金融委員会】

 平成26年度税制改正関連2法案(186閣法7・8号)

 本州・新潟2区選出の民主党の鷲尾英一郎さんが質問。

 鷲尾さんは「(法人税の)繰越欠損金控除に関して、JAL日本航空が会社更生法を申請して破たんしたのに、(再建を果たし単年度黒字に転換した)今後9年間、(過去の単年度赤字の単純積算額である)繰越欠損金控除を使って、今後9年間で、3000億から4000億円の減税になる、との報道がある」とただしました。

 財務省主税局の田中局長は「JALと税制に関しては、与党内でも協議になっているところです。企業再生税制とあわせてJALは競争上の不公平になっている」と答弁し、JALに対して、他の企業・個人がいだく不公平感に理解を示し、記者も締め出している、与党税調で協議されていることを明かしました。

 鷲尾さんは「JALの破たん処理(のために投入した国費は)国民の負担であり、(株主の多くが日本政府・国民であることによる)キャピタル・ゲインでも(3000億円以上の減税分は)回収しきれない。そもそも、JALは5215億円の債権放棄を受けたが、政府系金融機関も含まれている。企業にとっては、債務免除益(として処理されること)になる。その分国庫に負担がかかる。与党でもっと議論してほしい」と促しました。

 麻生太郎財務大臣は「おっしゃっていることは分かりますが、前原さんのときにつくった法律ですから。特定企業のねらいうちではなく、(法人税の)課税ベースの拡大に向けて議論をしています」と答弁。

 鷲尾さんは「繰越欠損金控除を使う上で、議論があっていいうのではないか。けっしてどなたかに言われて、(JALの)質問するわけではないのですが、申し上げさせていただきました」

 なお、この後、麻生大臣と鷲尾さんは「軽減税率(複数税率)よりも給付つき税額控除の方が良い」との認識で完全に一致しました。

 冒頭に「本州の鷲尾さん」と書きました。JALのホームページを見ると、「羽田―新潟便」がありますが、今は運行していないようです。鷲尾さんの選挙区内である佐渡島の飛行機便もないようです。

 歳費法の第10条に「議員は、その職務の遂行に資するため、(略)本邦航空運送事業者が経営する(略)航空券の交付を受ける。(略)予算の範囲内で、当該申出をした者に係る選挙区等及び交通機関の状況を勘案し、各議院が発行する航空券引換証の交付をもつて、行う」とあります。

 このように、国会議員は選挙区との往復にJAL便を使っています。なので、本州以外の選出議員は全員JALの航空券を無料でもらっているし、本州選出でも、応援演説などでの出張がある議員はJALの航空券を無料でもらえることが多いです。ただ、これは歳費法にもとづき、衆議院や参議院がJALから一括して購入しているものです。だから、国会議員はJALに頭を下げるのではなく、私たち納税者に頭を下げるべきなのです。ところが、それ以外の便宜供与をJALはしています。例えば、金曜日の衆議院本会議が遅れれば、議員会館の部屋の電話が一斉に鳴り、「先生の便、その次の便をおとりしましょうか?」とJALの方から電話してきます。機内の乗り込むと、座席は最前列で、足をのばし、スチュワーデスと雑談し、コンセントでケータイを充電してもらったりします。このような便宜供与を国会議員のほとんどが受けています。ちなみに、ANAはこういうことは、あまりやっていません。ロッキード事件前もおそらくJALほどはやっていなかったでしょう。JALがこういった面では圧倒しています。JTBもていねいにやっています。JRグループは案外あまりやっていませんが、新幹線は自動的にグリーン席になります。

 その点、鷲尾さんは新潟なので、JR東日本・上越新幹線が充実しているし、佐渡島へはフェリーで渡るのでしょう。いっちゃなんですが、さほど、鷲尾さんが応援演説で全国をかけめぐる、ということも現時点に限れば、あまりないでしょう。それが勇気の源です。

 こういった視点で政治家を見ることは大事だと思います。

 鷲尾英一郎さんは当選3回生ですが、37歳で、最大野党・民主党の最年少国会議員です。6年前、ガソリン値下げ隊員として体を張って下働きしたのに6年経っても最年少。

 第46回衆院選・第23回参院選で、有権者もここまで激しく民主党を負けさせる必要はありませんでした。将来の日本丸のかじ取り役候補を多く失い、国民は自分で自分の首を絞めました。党派を問わず日本の損失です。まあ過去のことは振り返らず、未来に向かって、今20代の政治家志望者は、自民党ではなく民主党の公募に参加した方が将来、党内出世しやすいということになります。

 選挙区うんぬんではなく、鷲尾英一郎さんの勇気を支えてましょう。 

 なお、平成26年度税制改正の法人税のしくみなどについては、当ブログではなく、法人・個人とも、ご自身でご確認ください。 


武正公一さん「バイク1000円増税についてユーザーの声が麻生財務大臣に届いていないようだ」税制改正法案

2014年02月25日 13時20分16秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

【画像】税制改正法案について財務大臣に質問する民主党の武正公一さん=衆議院インターネット審議中継から。

【2014年2月25日(火)衆・財務金融委員会】


 大臣所信表明に対する一般的質疑がありました。

 さらに冒頭から、平成26年度税制改正法2法案を趣旨説明し、そのまま、一般的質疑とセットで審議されました。民主党、維新など各党は抗議しながらも法案審査をしました。

 平成26年度国税改正関連2法案は、

 所得税法などの一部を改正する法律(案)(186閣法7号)

 地方法人税法案(186閣法8号) の2本です。

 民主党の武正公一さんが質問。党税調副会長。

 民主党は支持者の関係もあり、車体課税の減税を野党期・与党期・野党期とていねいにやっています。車体課税は、国税、府県税、市町村税に分かれていて、複雑な税制であり、シンプル化が求められています。

 ただ、これまで、二輪車(バイク)に関する議論はあまりありませんでした。

 財務省、金融庁のほか、総務省の上川陽子副大臣が答弁席に控えました。

 武正さんは軽自動車税(市町村税)のうち、バイクについて質問。

 細かい税制改正の要旨について、読者の方はこのブログではなく、ご自身で、確認していただきたいのですが、参議院ホームページに載っている法案の291ページに「(5) 二輪の小型自動車 二千三百円」とあり、これが重量ごとに金額は違いますが、「バイク増税」ということになるんだろうと思います。


 武正さんは質問で「バイクは経済産業省の所管です。原付バイクが1000円から2000円に上がるということで、そのぐらい(の増税)ならば(負担感は)たいしたことがない、という議論もあるが、ユーザーには若年層が多い(から負担に感じる人も多い)。その声は、経産省から(地方税制を企画する)総務省を通じて(税制全般を企画する)財務省に届いているのか」と質問。

 麻生大臣は、「スズキの鈴木(修)社長さんはどこでも要望してきて、結婚披露宴で会ったときに私が「あんた場所をわきまえたらどうか」と言ったら、宴のあいさつの中で、要望された」と、自民党的論理のすり替え答弁。

 武正さんは「鈴木社長からは軽自動車に関しては要望があったのでしょうが、役所に聞いてみたら、バイクユーザーからの声は伝わっていないようだ」と迫りました。

 麻生大臣は「聞いていなかったという指摘はおかしくて、自分の役所で決定することは自分の役所で情報を集めるのは当たり前だ」と答弁しました。

 いずれにせよ、納税者としてのバイクユーザーの声を代弁した国会議員は初めてのように感じます。それが、最大野党を通じて国会で閣僚に伝わるのは、議会制民主政治の当然の姿です。公明党は国会ではなく、その前の与党プロジェクトチームでやっているから、見えません。小さな声を伝えることを民主党がやっていけば、早ければ2016年には与党に復帰できるでしょう。

 なお、平成26年度税制改正の細部について知りたい方は、当ブログではなく、ご自身でご確認ください。