[画像]すでに「防衛審議官」設置が盛り込まれた平成26年度本予算(案)、1317ページ、赤丸は筆者加筆。
政府は、「防衛省設置法の一部を改正する法律案」(186閣法20号)を、2014年2月7日(金)、国会に提出しました。
これは防衛事務次官と局長の間に、「防衛審議官」1人を新設する法案です。
このような次官級審議官は、財務省の財務官、外務省の外務審議官(外審、政治担当・経済担当の2人)、総務省の総務審議官など各省におかれています。
防衛省では、事務次官と局長の間に「防衛参事官」という官僚がいました。「参事官」という肩書が局長の上にあったのは防衛省だけですが、これは廃止され、防衛大臣補佐官が新設されています。
内局(背広組)というと、防衛省採用の官僚で、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の採用者とは別コースです。防衛省は、背広組の国際会議に出席する官僚が、これまで筆頭局長の「防衛政策局長」だったのが、他の国との格や出張日程の余裕から、「防衛審議官」の新設が必要だとしてきました。
ところが、この「防衛審議官」新設の法案は、この3年間で、3度目になります。
最初は第177震災国会の2011年2月8日に提出した防衛省設置法改正法案(177閣法21号)。東日本大震災による自衛隊の展開や補正予算などを優先したためでしょうが、委員会への付託が5月18日にずれ込みましたが、5月31日に衆院で可決しました。しかし、参議院では、「衆院での菅おろしと復興3点セットの見定め」という理由だったんでしょうが、自民党の議院運営委員長が法案を委員会に付託し(おろし)たのは会期末前日で、当然廃案に。
防衛省はそれでもあきらめず、第180回一体改革国会の2月10日に防衛省設置法改正法案(180閣法29号)を提出しましたが、「小沢グループによる理由なき反抗」などの影響もあり、付託されないまま廃案となりました。
第181回臨時国会では、「防衛医科大学看護学科の新設」を抜き出して成立させ、この4月1日に1期生が入学します。(関連エントリー防衛医大看護学科1期生の願書は来週しめきり 野田政権最後の法律、我が党前に倒れる)
そして、防衛省は3たび、「防衛審議官新設」の法案を出してきたわけです。すでに、審議中の平成26年度予算書の「定員および俸給表」に防衛審議官1名の人件費が認められています。
[画像]すでに「防衛審議官」設置が盛り込まれた平成26年度本予算(案)、1317ページ、赤丸は筆者加筆。
もちろん、予算の歳出というのは「その限度額まで出費してもいい」という権利の上限を役所に与えるものですから、仮に防衛審議官の法律が国会で成立しなければ、この予算は執行されないことになります。
ただ、今回の法案は、若手自衛官の早期勧奨退職による退職金の改善も盛り込まれていることも含めて「※指定(こめじるししてい)」、予算関連法案、日切れ法案の扱いになっていますので、3月31日までに国会で成立する見通しです。
防衛大臣補佐官は3名まで置けるはずですが、おそらく事務次官と局長の俸給表の関係から、旧防衛参事官にあたる俸給と思われる「防衛審議官」を設けたい、というのが防衛官僚の考えだと思います。そもそも局長が海外出張すると機能しない局など、組織の体(てい)をなしていません。もちろん、シビリアンコントロールを高めるためには、防衛官僚ら内局のパワーアップは欠かせません。まあ、とはいえ、防衛審議官を設けて、国外情報に長けて、しっかりと制服組を束ねてほしい。
法案より、予算書に先に載っているというのは、意外に思うでしょうが、上記のように「歳出の限度額」だからいいのです。ただ、国会議員がこういう現実を把握しているかどうかの方が大事。
それと、防衛省の必死さ。2度目の法案のときの通常国会前にも、ある新聞で「防衛審議官新設へ」と見出しがたちました。ことしも新年早々、ある放送局が「防衛審議官新設へ」としました。ただ、ともに法案が何度も提出されていることには言及していませんでした。私が知っている限り、政治部防衛省記者クラブ担当というのは、かなり大きい会社でも、たいてい中堅1名でやっています。だから、移動してきた記者が、過去の経緯を知らないか、あるいはニュース性がそがれるため提出回数は伏せて、官僚から取材して、見出しを立てているのだと考えます。まあ、しょうがないな、防衛省の広報は相変わらず、うまいなという感じがします。
さらにwikipediaにはすでに「防衛審議官」という項目が立っており、この記事を書いている時点で、「防衛省において、対外関係業務等を総括整理する職として2014年度(平成26年度)に設置が見込まれている次官級の官職」 と詳しく解説されています。
なぜそこまでして・・・という感じがしますが、60年以上にわたり、「警察官僚に見下される防衛官僚」という世界的に稀有な日本の防衛官僚の現状をせめて対等に持っていくべし。言うまでもなく我が国は、空気が支配し、暴走しだすと止まらないのですが、これは島国だからしかたがない。
主権者たる国民の負託を受けた国会議員がコントロールできるかどうか。
防衛官僚の執念を、政治家も見習うべし。
[お知らせ1 はじめ]
「国会傍聴取材支援基金」を設けています。交通費、資料代に充当したく存じます。日本唯一の国会傍聴ブログにご協力ください。
「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い
よろしくお願いします。
[おわり]
[お知らせ2 はじめ]
会員制ブログ(有料)で今後の政治日程とポイントを解説しています。
今後の政治日程 by 下町の太陽
最初の1ヶ月は無料で試し読みできます。購読方法はシステムを提供している「レジまぐ」へお問い合わせください。
[おわり]
[お知らせ3 はじめ]
このブログは次の各ホームページを参照して、記事を作成しています。
衆議院インターネット審議中継
参議院インターネット審議中継
国会会議録検索システム(国立国会図書館ホームページ)
民主党ニュース(民主党ホームページ)
◇
衆議院議案(衆議院ホームページ)
今国会情報(参議院ホームページ)
各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)
goo 政治ニュース
インターネット版官報
[おわり]