【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

民主党、マニフェスト2014を発表 対決色強めながらも積み上げ継続、よくまとまっており、活用次第だ!

2014年11月24日 19時34分06秒 | 第47回衆院選2014年12月アベノミクス解散

[画像]新調された真っ赤なボードの前で、マニフェスト2014を発表する海江田万里代表(ネクスト首相)、2014年11月24日=解散74時間後、筆者(宮崎信行)撮影、民主党本部。

 きょうは勤労感謝の日の振り替え休日ですが、民主党は2014年11月24日(月)午後3時から、第47回衆院選「マニフェスト2014」を発表しました。公示前は「重点政策」で、公示後は「政権公約」として世に問います。全16ページ。

 政権獲得後にそなえて少し表現を抑えた点も含めて、よくまとまっています。勝てるマニフェストといえるでしょう。候補(予定)者の活用次第です。

●まず変更点、変わらない点 

 変更点としては、マニフェスト2013が「安倍」「自民党」という表現がなかったのに対して2014では民主党の重点政策01に「アベノミクスからの転換。」と強調。背表紙前15ページの海江田万里代表のあいさつにも、「安倍政権の2年間の経済政策による~~」と「安倍」という文字が入り、対決色が明白になりました。

 いわゆる4k。

「農業者戸別所得補償制度」が名称そのまま大きな文字で強調されました。

 「高校無償化」は法律用語ですし授業料と給付型奨学金を含みことから「高校授業料無償化」ではなく「高校無償化」にすでに2013からなっています。

「新児童手当等」(細かい文字の12ページ)について、福山哲郎政調会長は「法律用語だし、(2010年衆参ねじれ後の)3党合意にもとづくものだ」と説明しました。2013では「子どもに対する手当」となっていました。2009では「子ども手当」でした。

 「高速道路無料化」は完全に消えました。

 民主党税制の思想は、

 「所得控除から(給付付き)税額控除・手当へ」。2013同様の表現ですが、2009の「控除から手当へ」と比べると、より、候補者が有権者に説明しやすい言葉といえます。

 「2030年代原発ゼロ」も2012年以降、明示されています。

 2004年から入っている「最低保障年金」という言葉も、今回は小さい扱いですが、引き継がれました。 

●アベノミクス3本の矢に対応する民主党の経済政策の3本柱へ

 アベノミクス3本の矢に対応させて、「3本柱」が示されました。

(1)アベノミクス第1の矢
 「異次元の金融緩和」に対しては、
 「柔軟な金融政策(経済、財政状況、市場環境を踏まえ、国民生活に十分配慮した柔軟な金融政策)」

(2)アベノミクス第2の矢
 「機動的な財政出動(公共事業)」に対しては、
 「人への投資(子育て支援、雇用の安定、老後の安心。生活の不安を希望に変える人への投資」

(3)アベノミクス第3の矢
 「成長戦略(規制緩和、規制強化)」に対しては、
 「成長戦略(グリーン、ライフ、農林水産業、中小企業。未来につながる成長戦略」

 をそれぞれ提示。3本柱にぶら下がる具体的な政策のメニューが 4ページ、5ページ、見開きで盛り込まれました。

 記者会見で福山政調会長は、「私も証券会社に勤めたこともあるが、マーケットがショックを受けて、金融がクラッシュすることがないように市場とのコミュニケーションを図りながら、黒田日銀の方向展開を図っていきたい」として、仮に政権交代しても、黒田総裁をすぐに更迭したり、黒田緩和を突然止めることはない方向性を明白に示しました。

 なお、この見開きで、「消費税引き上げは延期します」と明示。ただし数字はマニフェストにありません。マニフェストには書き込まれていませんが、法律の附則18条「景気弾力条項」をそのまま残すべきだとという考え方で間違えないでしょう。また、「複数税率だけでなく、消費税の還付措置(給付付き税額控除)の導入についても検討を行い、低所得者対策を確実に講じます」とマニフェストに。この「複数税率」ということば「軽減税率」のことで、2012年6月の3党合意では「複数税率」となっています。マニフェスト2013と表現は変わりませんが、とりあえず、3党協議復帰への道筋は、自民党・公明党にちょっとだけ残していると考えられそうです。

●同一労働同一賃金法

 「同一労働同一賃金」という言葉が、民主党マニフェストに初登場。7ページで、「同一労働同一賃金推進法を制定します。正規・非正規を問わず、すべての労働者の均等・均衡処遇、能力開発の機会を確保します」としました。これに先立ち、「労働法制の改悪を阻止し、雇用の安定を確保します」とし「労働者派遣法の改悪、残業代ゼロ制度(ホワイトカラーエグゼンプション)、「解雇の金銭解決制度」の導入など労働条件を後退させる労働規制緩和を認めません。」と宣言しました。

●集団的自衛権の表現

 「集団的自衛権の行使を容認した閣議決定は立憲主義に反するため、撤回を求めます。」(10ページ)と大きく書きました。
 そして、「領域警備法を制定します。グレーゾーン事態を含めた日本防衛のため、海上保安庁などの対処能力向上を図りつつ、自衛隊による切れ目のない危機対処を可能とします。」と書き込みました。

●特定秘密保護法延長

 「国会など第三者機関による監視と関与を強化するまで特定秘密保護法の施行は延期します。」――法案はしっかり提出しましたが、解散で廃案になっており、選挙戦中の12月10日に向けてどうするかという問題が短期的に生じました。

[おまけ]早くまとまった理由は「積み上げがあるから」

 福山政調会長は、マニフェストが解散から74時間後に発表できた理由について、「政権を担当した積み上げがあるから」として、「各部門会議とも軽重をつけた上げてくれたので、時間がなかったけれども、アベノミクスへの対立軸が明示できた」と語りました。