【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

リンカーン民主党だ 労働者派遣法改悪法案実質審議入りに民主党4人衆が猛攻、派遣会社「淘汰」も議題に

2014年11月05日 19時18分54秒 | 第187臨時国会2014年地方創生国会

[写真]リンカーン親子の油絵、「ホワイトハウス 歴史ガイド」ホワイトハウス歴史財団編から。

  ひとつ前のエントリーに加えて、きょうは、労働者派遣法改悪案(187閣法3号)が実質審議入りしました。趣旨説明演説の後日に、与党の1人目の質疑が始まる日を、新聞・テレビでは、「実質審議入り」という言い方で報じます。

【衆議院厚生労働委員会 2014年平成26年11月5日(水)】

 23分遅れで始まりました。

●実は規制強化の労働者派遣法改悪法案、

 まず与党の質疑のなかで、「派遣元事業者が大規模化されると、派遣元から派遣先への発言力が高まる」という発言が出ました。今回の法律案は(1)専門26業務をなくし、すべての業務で、派遣元が派遣先に無期転換をお願いするか、派遣元の無期雇用になる「労働市場の規制緩和」と(2)派遣元をすべて許可制にする「派遣元会社の規制強化」ーーの規制緩和と規制強化の2本立てになっています。野党の維新の党、みんなの党、次世代の党が「我が党は規制緩和の党だ」として、現時点では、どちらかといえば法案に賛成の立ち位置をとっているのは、ただたんに法律案をよく読んでいないのではないかと思います。 

 法案の概要→http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/187-01.pdf

●民主党怒涛の4人攻撃

 民主党は、長妻昭さん、山井和則さん、大串博志さん、柚木道義さんの4人が30分ずつ、猛攻撃をかましました。

 まず、民主党に質問が回ってきた、午前11時前は、参議院の援護射撃があったようで、参・本会議で、土砂災害防止法改正案の答弁に塩崎恭久・厚労大臣が答弁していました。しかし、自民党の渡辺博道厚生労働委員長が「いいだろう、始めよう」と言って、長妻さんも抵抗せず、冒頭は大臣がいないなか、始まりました。

●長妻さん、「公明党が出そうとした修正案は良い案」と揺さぶる

 長妻昭さんは「私は理事でないから分からないが、公明党が理事会に出した修正案の骨子はなかなか良い内容ではないか」と揺さぶりました。山本香苗厚労副大臣(参議院公明党)は「私は党のことについてお答えする立場にないが、与野党の意見をふまえて、修正案を提出したもので、提出済みの閣法が不十分だという意味ではない」と答えました。

 長妻さんは派遣労働者の事故率は4・8%で、全労働者平均の2・8%を大きく上回っており、その危険性を指摘しました。

●山井さんの「生涯ハケンは増えるのか、減るのか」と問いに、塩崎厚労相「経済情勢による」

 2番手の山井和則さんは「今回の改正で、生涯ハケンは増えるのか、減るのか」と問いただしました。塩崎厚労相ははじめ「無期雇用の労働者は増えるのではないか」と答弁しましたが、その後、「結果的にどうなるかは、経済情勢もあり、どうなるか分からない」と軌道修正しました。


[画像]大臣を鋭くせめる、山井和則さん。

 3番手の大串博志さんは、派遣を使える職種を派遣先会社の経営者が過半数等労働組合から意見を聴取した場合には、3年を超えて(人を代えて)延長することができる規定について、「過半数等労働組合がどのくらいの、レジティマシー(正統性)を持つのか」と、政治学のドイツ語を交えて質問しました。現行の労基法36条にもとづく、「三六協定(さんろく、さぶろくきょうてい)」の際限なき拡大解釈同様に歯止めがきかなくなると危惧しました。

 大串さんは現行派遣法48条の「厚労大臣は、派遣元事業者と派遣先事業者に必要な指導および助言をすることができる」との規定にもとづく、労働基準監督行政がどれだけ機能するか問いただしました。


[画像]現行の労働者派遣法48条を問いただす、大串博志さん。

 ここで、塩崎厚労相は、答弁できず、答弁席に立った状態で、六法で、なぜか「48条」ではなく「40条の2」を読み出すなど答弁はしどろもどろになり、審議がたびたび中断しました。

  
[画像]現行労働者派遣法の48条について聞かれたのに、40条の2について答弁するなど、六法を手にしどろもどろになる塩崎厚労相。

●柚木道義さんは「パワハラ、マタハラ、セクハラの3大ハラスメントで女性の貧困につながる」

 4番手の柚木道義さんは「パワハラ、セクハラ、マタハラの3大ハラスメントの被害者は女性の派遣労働者に多い」 との観点から質問し、女性の貧困につながると指摘しました。塩崎さんは「派遣労働者の権利を広げる規定も改正案に盛り込まれていることを理解してほしい」と語りました。これはたしかにそうかもしれません。平成27年度の概算要求について、塩崎さんは労働基準監督官を「3人増員するよう概算要求した。例年より多い」として、法律が成立・施行(法律案通りならば来年4月1日)したとして、適正に運営しているかどうか、3人増員した労働基準監督署が対応できるとのかまえを示しました。

 柚木さんは最後に、「公明党もホントウは反対ではないのですか。あさってにも採決という話も出ているようだが、採決には応じられません」と語りました。

●維新の党から「さすが民主党」との声があがる

 維新の党の井坂信彦さんは「現時点で賛成でも反対でもない。自分が当事者だったらどうなるかを考えて行動する」とし、大臣に自分の子供が派遣労働者になろうとしたらどう行動するか質問しました。その答えを聞いた井坂さんは「私は3人子どもがいるが、こどもが派遣で働くと言ったら、やめとけ、と言う」と語りました。井坂さんが「最近、いろいろな当事者と話し、派遣元会社の人と会うことも多い」と語ると、塩崎大臣も「規制緩和だけでなく、規制強化の法案でもある」と答弁しました。別の維新の党の議員は「きょう議論を聞いていて、民主党さんはさすがに勉強しているな、すごいなと感じました」と語り、「これから賛否を考えたい」と述べました。

 アメリカ時間2014年11月4日(火)の中間選挙は、共和党が8年ぶりに上院でも過半数を取り、上下両院で過半数。民主党オバマ大統領2期目の7年目、8年目はレームダック化することになりました。ぜひ、日米ガイドライン(日米防衛協力のための指針)の再改定の最終報告はこれを機に先送りする、骨抜きになることに期待したい。安倍晋三首相、高村正彦・自民党副総裁は、アーミテージの言うことばかりに聞かずに、エイブラハム・リンカーンが奴隷解放にかけた思いを見習ってほしいところです。

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地方創生法案が可決 民主党・維新の党・みんなの党・生活の党は一致団結で「地方一括交付金・道州制」法案

2014年11月05日 12時23分32秒 | 第187臨時国会2014年地方創生国会

【衆議院地方創生に関する特別委員会 2014年11月5日(水)】

 安倍内閣・与党自民党の方が、安保法制再整備の先送り後に、看板をかけた「地方創生」。

 政府・与党側は、第187臨時国会の重要議案に設定した

 地方創生2法案

「まち・ひと・しごと創生法案」(187閣法1号

「地域再生法改正案」(187閣法2号)

 が、自民党、公明党、次世代の党の3党の賛成多数で可決しました。

 民主党・維新の党・みんなの党・生活の党の4党は政府原案反対、対案賛成で一致団結しました。当初は無風と思われましたが、与野党の姿勢がはっきり分かれました。

 あすの本会議で可決し、参議院に送付される見通し。会期内に成立するでしょう。

  第187回国会は、一つ目のヤマ場(炭鉱場)を越えました。

 これに先立ち、民主党の馬淵澄夫さんら、民主党・維新の党・みんなの党・生活の党の4党が共同で提出した「地方一括交付金を復活する、国と地方公共団体の関係の抜本的な改革法案」(187衆法4号) について、趣旨説明し、答弁席に座りました。

 
[画像]地方一括交付金を復活する国と地方の関係の抜本改革法案の趣旨説明する、民主党の馬淵澄夫さん。

 政府案、野党案をともに審査し、午後11時過ぎに質疑が終局しました。

 共産党は、大阪府・大阪市の組織が強いこともあってか、「対案は、道州制につながるから反対だ」としました。

 これに先立ち、民主党は、篠原孝さんが討論で「政府原案は上から目線だ」、維新の党の重徳和彦さんは「地方創生の名の下に、既に提出された概算要求でもバラマキになっている」とし、みんなの党、生活の党も同調しました。次世代の党も「対案には一部賛同できる面もある」としながら、自民党・公明党と同じ投票行動になりました。

 この後、民主党など4党の法案を採決。

 

 ここに写っているのは、民主党と維新の党だけですが、みんなの党、生活の党も賛成しました。

 次世代の党の修正案は広がらず、1人の賛成だけで否決。
 
 続いて、政府原案が採決され、可決しました。

【参議院本会議 同日】

 きのう衆議院本会議を通過した「土砂災害防止法改正案」(187閣法19号)が太田昭宏国土交通大臣から趣旨説明され、各党が代表質問しました。

 続いて、参議院先議の「クレー射撃のオリンピック参加年齢を拡大するための銃刀法改正法案」(187閣法20号)が、大島九州男内閣委員長(民主党)から報告されました。山本太郎さんから修正案が出たことも報告されました。採決の結果、投票総数227、賛成221、反対16。可決し、衆議院に送られました。

【衆議院外務委員会 同日】

 CSC原子力損害賠償の補完的な条約の承認を求める件(187条約2号)が審議入りしました。

【衆議院文部科学委員会 同日】

 ひとつ上に書いた、CSCの国内実施法案(187閣法27・28号)について質疑をしました。その後で、西川京子委員長が質疑終局を宣言。ただし、採決はせず、次回は未定のまま、散会しました。外務委での条約の審査とタイミングをあわせるためと思われます。

【衆議院法務委員会 同日】

 人事院勧告を完全実施する給与法案、「裁判官報酬法改正案」と「検察官俸給法改正案」(187閣法9号、10号)が審議入り。松島みどりさんの法相辞任が、上川陽子さんの法相就任で波が静かになってきました。

【衆議院経済産業委員会 同日】

 地方創生関連に位置付けられる、「官公需の中小企業への優先発注法案」(187閣法4号)を審査しています。

【衆議院内閣委員会 同日】

 国連安保理決議1267号にもとづく我が国が実施するテロリスト財産凍結特別措置法案(187閣法16号)と犯罪による収益の移転の防止法改正案(187閣法15号)を審査。

【衆議院厚生労働委員会 同日】
 
 野党側が第187回国会の最大の争点に設定している、「労働者派遣法改悪法案」(187閣法3号)の「実質質疑入り(与党の質問者のトップバッターが立つこと)」をしました。これについては、別エントリーで後ほど、書く予定で現在います。