[写真]リンカーン親子の油絵、「ホワイトハウス 歴史ガイド」ホワイトハウス歴史財団編から。
ひとつ前のエントリーに加えて、きょうは、労働者派遣法改悪案(187閣法3号)が実質審議入りしました。趣旨説明演説の後日に、与党の1人目の質疑が始まる日を、新聞・テレビでは、「実質審議入り」という言い方で報じます。
【衆議院厚生労働委員会 2014年平成26年11月5日(水)】
23分遅れで始まりました。
●実は規制強化の労働者派遣法改悪法案、
まず与党の質疑のなかで、「派遣元事業者が大規模化されると、派遣元から派遣先への発言力が高まる」という発言が出ました。今回の法律案は(1)専門26業務をなくし、すべての業務で、派遣元が派遣先に無期転換をお願いするか、派遣元の無期雇用になる「労働市場の規制緩和」と(2)派遣元をすべて許可制にする「派遣元会社の規制強化」ーーの規制緩和と規制強化の2本立てになっています。野党の維新の党、みんなの党、次世代の党が「我が党は規制緩和の党だ」として、現時点では、どちらかといえば法案に賛成の立ち位置をとっているのは、ただたんに法律案をよく読んでいないのではないかと思います。
法案の概要→http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/187-01.pdf
●民主党怒涛の4人攻撃
民主党は、長妻昭さん、山井和則さん、大串博志さん、柚木道義さんの4人が30分ずつ、猛攻撃をかましました。
まず、民主党に質問が回ってきた、午前11時前は、参議院の援護射撃があったようで、参・本会議で、土砂災害防止法改正案の答弁に塩崎恭久・厚労大臣が答弁していました。しかし、自民党の渡辺博道厚生労働委員長が「いいだろう、始めよう」と言って、長妻さんも抵抗せず、冒頭は大臣がいないなか、始まりました。
●長妻さん、「公明党が出そうとした修正案は良い案」と揺さぶる
長妻昭さんは「私は理事でないから分からないが、公明党が理事会に出した修正案の骨子はなかなか良い内容ではないか」と揺さぶりました。山本香苗厚労副大臣(参議院公明党)は「私は党のことについてお答えする立場にないが、与野党の意見をふまえて、修正案を提出したもので、提出済みの閣法が不十分だという意味ではない」と答えました。
長妻さんは派遣労働者の事故率は4・8%で、全労働者平均の2・8%を大きく上回っており、その危険性を指摘しました。
●山井さんの「生涯ハケンは増えるのか、減るのか」と問いに、塩崎厚労相「経済情勢による」
2番手の山井和則さんは「今回の改正で、生涯ハケンは増えるのか、減るのか」と問いただしました。塩崎厚労相ははじめ「無期雇用の労働者は増えるのではないか」と答弁しましたが、その後、「結果的にどうなるかは、経済情勢もあり、どうなるか分からない」と軌道修正しました。
[画像]大臣を鋭くせめる、山井和則さん。
3番手の大串博志さんは、派遣を使える職種を派遣先会社の経営者が過半数等労働組合から意見を聴取した場合には、3年を超えて(人を代えて)延長することができる規定について、「過半数等労働組合がどのくらいの、レジティマシー(正統性)を持つのか」と、政治学のドイツ語を交えて質問しました。現行の労基法36条にもとづく、「三六協定(さんろく、さぶろくきょうてい)」の際限なき拡大解釈同様に歯止めがきかなくなると危惧しました。
大串さんは現行派遣法48条の「厚労大臣は、派遣元事業者と派遣先事業者に必要な指導および助言をすることができる」との規定にもとづく、労働基準監督行政がどれだけ機能するか問いただしました。
[画像]現行の労働者派遣法48条を問いただす、大串博志さん。
ここで、塩崎厚労相は、答弁できず、答弁席に立った状態で、六法で、なぜか「48条」ではなく「40条の2」を読み出すなど答弁はしどろもどろになり、審議がたびたび中断しました。
[画像]現行労働者派遣法の48条について聞かれたのに、40条の2について答弁するなど、六法を手にしどろもどろになる塩崎厚労相。
●柚木道義さんは「パワハラ、マタハラ、セクハラの3大ハラスメントで女性の貧困につながる」
4番手の柚木道義さんは「パワハラ、セクハラ、マタハラの3大ハラスメントの被害者は女性の派遣労働者に多い」 との観点から質問し、女性の貧困につながると指摘しました。塩崎さんは「派遣労働者の権利を広げる規定も改正案に盛り込まれていることを理解してほしい」と語りました。これはたしかにそうかもしれません。平成27年度の概算要求について、塩崎さんは労働基準監督官を「3人増員するよう概算要求した。例年より多い」として、法律が成立・施行(法律案通りならば来年4月1日)したとして、適正に運営しているかどうか、3人増員した労働基準監督署が対応できるとのかまえを示しました。
柚木さんは最後に、「公明党もホントウは反対ではないのですか。あさってにも採決という話も出ているようだが、採決には応じられません」と語りました。
●維新の党から「さすが民主党」との声があがる
維新の党の井坂信彦さんは「現時点で賛成でも反対でもない。自分が当事者だったらどうなるかを考えて行動する」とし、大臣に自分の子供が派遣労働者になろうとしたらどう行動するか質問しました。その答えを聞いた井坂さんは「私は3人子どもがいるが、こどもが派遣で働くと言ったら、やめとけ、と言う」と語りました。井坂さんが「最近、いろいろな当事者と話し、派遣元会社の人と会うことも多い」と語ると、塩崎大臣も「規制緩和だけでなく、規制強化の法案でもある」と答弁しました。別の維新の党の議員は「きょう議論を聞いていて、民主党さんはさすがに勉強しているな、すごいなと感じました」と語り、「これから賛否を考えたい」と述べました。
アメリカ時間2014年11月4日(火)の中間選挙は、共和党が8年ぶりに上院でも過半数を取り、上下両院で過半数。民主党オバマ大統領2期目の7年目、8年目はレームダック化することになりました。ぜひ、日米ガイドライン(日米防衛協力のための指針)の再改定の最終報告はこれを機に先送りする、骨抜きになることに期待したい。安倍晋三首相、高村正彦・自民党副総裁は、アーミテージの言うことばかりに聞かずに、エイブラハム・リンカーンが奴隷解放にかけた思いを見習ってほしいところです。
tag (宮崎信行)
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