【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

玄葉光一郎さん、南シナ海も「新事態」として米軍と機雷除去をしなければならないのかと懸念 NHK日曜討論

2015年03月22日 13時13分11秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

[写真]玄葉光一郎・民主党選挙対策委員長、2015年3月22日、NHK日曜討論、筆者(宮崎信行)撮影。

 平成27年2015年3月22日放送のNHK日曜討論は、第18回統一地方選を前に1時間35分スペシャルとして放送されました。

 民主党の玄葉光一郎さん(Mr.Koichiro Gemba)は、自公が進める戦争立法「切れ目のない安保法制の再整備」について、

 「私たち民主党は、国民の生命と財産を守るうえで、領土領海を守るのは当然だと考えており、政権を担った政党として冷徹な現実主義で対応したい。しかし、今回の自公決定は、切れ目がなくなって歯止めが利かなくなった。歴史的転換点だ。分かりやすく説明するのが、野党第一党の役目だ」としました。

 俗なことを言うと、昨年7月1日以来、安保法制の再整備で、岡田さんに次いで、惹起するのは、玄葉さんの顔で、これは弾薬の補給などの後方支援活動が「現に戦闘行為が行われていない現場(げんば)」となっており、今の任期で475人の衆院議員の先陣を切った岡田質問主意書(188衆質問1号)でも論点になったところです。

 NHK番組に戻って、玄葉さんは「現に戦闘行為が行われていない現場というあいまいな表現は許されず、しっかりと歯止めをかけたい」と5月中旬以降の安保国会に自信を示しました。

 この後、玄葉さんは「後方支援と新事態(新存立事態)は分けられるのか。ホルムズ海峡での機雷掃海については、民主党は反対でまとまるだろう。南シナ海で衝突があった場合は米軍に要請されたら、機雷掃海しなければいけないのではないか」という論点を初めて提示しました(玄葉懸念)。

 南シナ海とは以下の場所です。


[画像]南シナ海と日本列島の地図、Googleマップからスクリーンショット、赤囲み加筆は筆者(宮崎信行)による。

 この南シナ海では、日常的に中国軍、ベトナム軍が見合っています。中越戦争は1979年に終結しましたが、中越は1000年以上にわたり対立しており、きょう戦争が始まってもおかしくありません。中越戦争は、中国が小平・中央軍事委員会主席の指導力がある一方、ベトナムはサイゴン陥落(南ベトナム共和国消滅)による南北統一から間もなく、前年のプノンペン侵攻で国際的立場も弱かっため、小平が開戦前に言った「制裁のため」3週間で戦闘は終わっています。しかし、いまだに中越の国民同士の敵対心、ナショナリズムは変わりなく、天然資源をめぐる海軍の衝突がきょう起きて、戦争になっても両国政府の国内で一定の支持を得られると考えらます。

 この南シナ海にある、トンキン湾事件から集団的自衛権の行使として国連に報告された、ベトナム戦争ですが、トンキン湾事件がアメリカの自作自演だったことは、長い歳月を経て明らかになっています。仮に南シナ海での中越戦争に、アメリカの要請で日本海上自衛隊が機雷掃海に派遣されることは十分にありうる「自公戦争立法合意」であり、地図でも分かる通り、フィリピン、台湾、香港も近いことから、泥沼の東アジア秩序の崩壊が起こりうることになります。

 この「玄葉懸念」が5月以降の国会で、一つの争点になりそうです。

【山本太郎代表が初登場】

 「スペシャル」ということで、山本太郎・生活の党と山本太郎となかまたち代表が登場しました。

 
[写真]山本太郎・生活の党と山本太郎となかまたち共同代表、2015年3月22日、NHK日曜討論、筆者(宮崎信行)撮影。
 
 山本代表は「国会の中でブレーキ役がいない状態であり、(第18回統一地方選で)地方で止めるしかない。現在、集団的自衛権の反対(や慎重審議の)決議を199の地方議会がしているが、ていねいな説明がなされていない」と指摘しました。また、イラク戦争で日本自衛官の死者がゼロではあるものの、帰国後に多くの自殺者が出たことや、バグダッドでの、C130輸送機による兵員輸送を、名古屋高裁が違憲判決した例をよく踏まえるよう要請しました。


[写真]第47回衆院選で、民主党公認の横路孝弘候補を応援する、山本太郎・現生活の党と山本太郎となかまたち共同代表、「こんにちは、よこみち孝弘です」から拝借。

【統一地方選直前の公明党・共産党対決で往復5回の応酬】

 統一地方選直前の風物詩、公明党国会議員団と共産党国会議員団による、応酬がありました。

 残り時間5分になったとき、島田敏男・NHK解説委員が玄葉懸念を受けて「南シナ海で機雷掃海ができるのか」と話を向けると、

 日本共産党の小池晃副委員長が「戦争立法であり、公明党が歯止めにならないのは許されない」と公明党を攻撃。斉藤鉄夫・公明党選挙対策委員長は「日米安保条約の目的は日本周辺の平和だ」と答えると、小池さんは「自衛隊を地球の裏側まで送り込む戦争立法だ」と応じました。ここで斉藤さんが「米艦などのアセット防護」に話をそらしました。小池さんが「他国からみれば米軍と一体だ」と米艦防護を批判すると、斉藤さんは話をそらし続け、小池さんが「憲法と照らしあわせても問題がある」とすると、斉藤さんは「憲法を照らしても整合している」とうそぶきました。

 この共公問答は5往復続き、司会者に発言を求めるNHK日曜討論では異例ですが、統一地方選前の両党国会議員団の対決を止めることは不可能で、黙認したようです。4年前の第17回統一地方選(共産党はいっせい地方選と呼んでいる)では、震災国会の日切れ法案「子ども手当つなぎ法」で、岡田克也・民主党幹事長を助けた、もとい国民を助けた日本共産党が躍進し、元新進党の仲間なのに、岡田さんを裏切った公明党は、大阪府議会と横浜市議会で落選者を出す、惨敗に終わりました。

【新党改革は戦争立法に賛成へ、荒井さんの遠き落日】

 
[写真]荒井広幸・新党改革代表。

 この番組では荒井広幸さんが登場し、戦争立法の自公合意について「一定の評価をする。備えは大事だ。備えを怠ったから、福島の事故がおきた。この件については安倍自民党に協力するからその代わりに、福島のことはよろしくお願いしたい」と語りました。延長会期末で与党・自民党に参議院で協力する代わりに、福島の中間貯蔵施設などでの与党からの配慮を引き出す交換条件を出したようです。

 荒井さんにとっては、同じ町の出身、県議同期、衆院初当選同期で、一度は小選挙区で凌駕しながらも、やがて完膚なきまでの惨敗で衆議院福島5区から参議院への転出を余儀なくされた、玄葉光一郎代議士との因縁の共演となりました。さわやかさとしたたかさを兼ね備え、岡田内閣の官房長官レースを独走する、玄葉さんと、早熟過ぎた策士、荒井氏がからむ場面はありませんでした。

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