【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

下村博文大臣は支援者を「脱税」から守るため平成27年度予算案採決前に辞任すべし今週衆院採決へ

2015年03月08日 19時40分20秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

 一般会計だけで、総額96・3兆円の平成27年度(2015年度)予算案は今週3月8日週にいよいよ、衆議院で採決を迎えます。

  予算審議では民主党の鋭いツッコミで、西川公也農相が「言っても分からない人は分からない」とAccountability(説明能力)が無いと自認して、更迭されました。これにより、審議は補充質疑を含めて1日半空転しました。前回の衆院での本予算審議の空転は2012年度で、このときは野党・自民党の下村博文議員の質疑に対する岡田克也副総理の答弁を巡り1日半空転しました。再開時にも下村さんが質疑しましたが、「1日半も空転するような話じゃないですよ」と自己正当化しながら登場し、空転が許されない、二大政党新時代を感じさせました。

 下村博文さんは文部科学大臣ですが、五輪相(東京オリンピック・パラリンピック担当大臣)でもあります。

 2月26日(木)の一般的質疑2日目に、元財務大臣政務官の柚木道義さんが登場。

 下村さんの資金管理団体である「博友会」の他に、中部博友会、中四国博友会などの任意団体があると指摘。下村五輪相は「きょうの週刊文春の報道はまったくの間違いであり、こういう場をつくっていただいたことにかえって感謝している」と泰然自若ぶりをアピールしながら、柚木さんに対して「週刊誌報道で質問しない」と気色ばみました。

 ただ、柚木さんは元財務大臣財務官であることを、下村さんは失念していたのでしょう。柚木さんは「週刊誌報道の前から調べていた」として、質疑。柚木さんは3月3日(火)の集中審議2日目、3月6日(金)の集中審議3日目も連続して質疑。5日(木)の一般的質疑4日目には大西健介さんも質疑しました。

 ここで私が問題視するのは、任意団体である地方博友会の会費などについて、下村さんが代表者を務める自民党支部から、領収書が出ていたとされる点。これが仮に所得税の確定申告で、地方博友会幹部が個人の立場で所得控除あるいは税額控除を受けていたとなると、これは脱税です。例えば、10万円の領収書があれば4万円前後の脱税になります。これは金額の多寡にかかわらず、きわめて悪質な脱税になります。

 20年前に、松下政経塾出身の元神奈川県議で、新党さきがけ公認衆議院議員候補(落選)が神奈川県警に逮捕され、クリーンなイメージの同塾最初の政治スキャンダルでの逮捕者となり、イメージダウンになりました。このときは、年間50万円の寄付金しかないものを、3人ほどの支援者とグルになって、控除による還付金を繰り返し、合計2000万円ものお金をつくりだした、という異例の事態になりました。これについては、現在は有名評論家の元女性自民党県議ら、地方議員らが複数名で「寄付を回して」お金をつくり出していたことも発覚し、一部は刑事事件となりました。当該元県議は公民権停止5年間となり、その後、よく立候補していますが、当選したことはありません。

 下村さんの場合は、支援者が逮捕されかねない極めて異例の事態となります。これは国民の政治離れのみならず、霞が関の政治への干渉による国会の地位低下につながります。とにかく、下村大臣は、今週の採決前に辞めるべきです。これは超党派で辞めさせるべきです。

 私は下村さんを都議時代から知っています。実は、民主党の複数の前身政党である、民社党、スポーツ平和党の推薦を受けて初陣を飾っています。前代表が秘書を務めた国会議員が創設した税金党の推薦も受けていたと思います。その後、自民党に入党して、衆議院支部長としてはずっと自民党です。彼の都議時代のリーフレットには、福田赳夫元首相が写真があり、「彼は群馬県出身という縁だけで清和会に入りました」という趣旨の、福田元首相の真意がよく分からない政治的なコメントが載っていました。リーフレットには、交通遺児であることが明記されており、会合では口頭でお父さんの自損事故であったとしていました。

 部類の強さで小選挙区を連続当選してきた下村さん。仮に自民党に入党しなくても、同じ期に同じ選挙区で小選挙区で勝ち上がりで初当選できた、とみるのが順当な見立てで、その後のキャリアを単純に類推すれば、官邸入りは遅れますが、初入閣は早くなっていたかもしれません。

 自民党では西川さん、望月さん、上川さん同様に、非世襲のたたき上げです。下村さんの今の事態には、時の今昔、洋の東西を問わず似たような人物を思い出し、複雑な心境にならざるをえません。

 2020年東京オリンピック。私は1964年東京オリンピックに「出た」という話は聞きましたが、「見た」という話は聞きません。国立競技場の開会式はもちろん、代々木体育館の東洋の魔女も、あるいは、沿道のマラソンですら、「見た」という人はいないようです。いったいチケットはどのように流通したのでしょうか。だから、全員が「見た」テレビと、そして、テレビに合わせて空を見上げた時に唯一肉眼で「見た」ブルーインパルスが描いた五輪の輪が忘れられないようです。下村五輪相は自ら辞めて、特権階級である清和会からも退会すべきです。その名は清和会でも、ちっとも清くない。

 朱に交われば赤くなる。
 清和会に交われば黒くなる。

 つゆと落ち、つゆと消えにしわが身かな。なにはのことも夢のまた夢。そういう思いで、下村大臣には空転無しに、採決前に自ら辞表を出すべし。さもなけば、国民の味方である、民維共は審議拒否することは当然の理です。