【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

[きょうの国会]衆議院委員会店じまいへ、自公民共維が修正し性犯罪法案全会一致、農業収入保険も修正議決、「フィルタリング」「地方議員ビラ」議員立法、参でも新区割り、退位の最優先2法案が委員会通過

2017年06月07日 17時34分18秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

[写真]国会議事堂、2017年5月、筆者・宮崎信行撮影。

 「退位」「区割り」「性犯罪」「農業保険」「日印原子力協定」などにめどが立ちました。第193回通常国会の主要な議案は、すべて衆議院委員会を通過しました。仮に延長がなければ、野党の希望通り、「労基法」「水道法」「精神保健福祉法」は成立せず、廃案になりそうです。

●性犯罪「強制性交等罪」刑法改正案は、5党修正「3年後の見直し」で可決。

【衆議院法務委員会】


 「強姦罪など性犯罪の罰則の量刑を上げ、強制性交等罪とする、刑法改正案」(193閣法47号)
。質疑の後、現在の体制で、衆参ともに、登壇会派(本会議に登壇することが許されている会派)である主要5会派、自民党、公明党、民進党、共産党、維新の5党が共同で修正案を提出。この修正案が全会一致で可決し、政府案を「修正すべし」と決めました。次の本会議で、可決し参へ。延長しないでも、16日(金)に成立する見通しとなりました。修正の内容は3年後の見直し規定を付則に追加するもの。公布から20日後に施行。2004年の付帯決議からくすぶっていた議題でしたが、動き出すと、あっという間でした。

 これで、今国会最大の対決委員会となった、衆議院法務委員会はほぼ店じまいとなりました。とはいえ、「ひらがな商法」「人事訴訟法」が残っていますので、大きな改正審議はこれからも続きそうです。

●議員立法「青少年インターネット環境整備法改正案」が起草され、可決。

【衆議院内閣委員会 平成29年2017年6月7日(水)】


 「青少年インターネット環境整備法改正案」(193衆法 号)が、委員長から起草され、全会一致で可決しました。内容は、有害なインターネット情報の閲覧をできないようにする、フィルタリング機能を高めるために、スマホ携帯販売者に対して、青少年かどうか確認したり、説明したりする義務を高める内容のようです。1年以内の政令で定める日に施行。参側で特区法改正案を審議しているため、実質的な会期末の16日(金)までに衆参両院で可決して成立する、とは確定的には見通せません。きょうの委員会の審査報告は、次の衆議院本会議でされ、可決し、参に送られると思います。

 これに先立ち、一般質疑があり、加計学園特区などについて、民進党の宮崎岳志さんらが質問。次の予定はなく、散会しました。今国会はこれで店じまいかもしれません。

●議員立法「地方議員選挙のビラ解禁法案」が起草され、可決。

【衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正特別委員会】

 「地方議員選挙で、ビラ(チラシ)配布を解禁する、公職選挙法改正案」(193衆法 号)が委員長から起草されました。質疑の後、採決され、全会一致で可決しました。今国会で成立するとみられます。施行日は、平成31年3月1日(金)と書き込まれており、2019年4月の統一地方選からということになりそうです。ある一定の人口で1万6000枚といった条件も条文として入りました。

●農業収入保険法案は4党修正で可決、減反政策歴史的転換へ、ただし成立しない公算も。

【衆議院農林水産委員会】
 
 「農業災害保険法を改正して収入保険を設ける法案」(193閣法58号)が、修正議決すべし、と決まりました。農水委には多いパターンですが、政府原案を審議したうえで、自民党の宮越光寛・元農林水産副大臣が主導して、自公民維の4党修正案が提出され、それが共反対、自公民維賛成多数で可決されました。政府原案は農家が青色申告をし、保険料を納めると、今の農業災害共済に加えて、収入の変動の調整額も、JA口座に振り込まれるしくみ。これに伴い、コメの減反(生産数量目標)政策は完全に終わります。全農業者の3割が対象になるようです。4党修正案は、政府がJAに対して情報提供をするよう求めるなどの内容のようです。次の本会議で可決し、参に送付。会期内に参での審議が入りきらない可能性もあります。施行日は平成30年4月1日(日)となります。

●衆新区割り、参委員会も通過。

【参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会】

 「2015年国勢調査を反映した、衆議院289選挙区区割り法案」(193閣法65号)が共反対、自公民維賛成多数で可決しました。次の本会議で成立し、公布日から1か月後に施行。第48回衆議院議員総選挙の過半数は233議席となり、安倍自民党か、蓮舫民進党か、どちらを首相にするのか、天下分け目の関が原となります。

●平成の、今上天皇退位特例法案が参委員会も通過。

【参議院天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会】

 前回互選された尾辻秀久特別委員長のもと、伊達忠一議長、郡司彰副議長が陪席。第1委員会室からNHK中継されました。この委員会の実質審議は、きょう1日だけ、という珍しい特別委員会の先例となりそうです。

 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」(193閣法66号)が全会一致で可決しました。次の本会議が成立し、3年以内に施行し、平成の今上天皇陛下、明仁さまがご退位され、現在の東宮、皇太子徳仁親王殿下が、天皇陛下に即位します。維新の片山虎之助さんは「退位式はやるのか」と問い、官房長官は検討するとしました。自由党の森ゆうこさんは「統一会派希望の会として質問するが、自由党と社民党の立場が違う」と語り、採決のときは、退席していたようでした。沖縄の風の伊波洋一さんは、沖縄の声をつたえました。民進党は、野田・蓮舫グループ「花斉会」の長浜博行さんが、質疑、付帯決議などおいしい所を総取りしました。

●民泊新法の審議が続き、労基法、精神保健福祉法、水道法は審議未了廃案(秋に継続)の公算高まる。

【衆議院厚生労働委員会】


 民泊新法2本のうち、厚生省所管分である、「旅館業法改正案」(193閣法50号)の質疑。採決は次回以降に持ち越し。仮に延長がなければ、継続の労基法改正案、参先議の精神保健福祉法改正案、水道法改正案が廃案(秋に継続)となる公算が極めて高くなりました。

【参議院本会議】

 まず、「法務委員長秋野公造君を解任する決議案」が議題となり、投票総数240、賛成73、反対167で否決されました。法務委員会あす再開の見通し。
 
 「平成27年度決算」が報告され、是認されました。安倍晋三首相・麻生太郎副総理(財務大臣)が同席し、安倍首相が是正を約束しました。採決は、決算の是認が、240、151、89。内閣に対する警告決議が240、240.0の全会一致。国有財産計算書が240、151、89。そして国有財産の無償貸し付け状況計算書が240、賛成169、反対71。これに先立つ討論では、民進党の磯崎哲史さんが商工中金の不祥事の報告書をひもとき「一人が異を唱えれば止まったのに、誰も意を唱えなかった」「同質な職場で同調を要求された」というような文言を紹介。国の決算との関係は分からないのですが、総理の前で、その思いは伝わりました。

●日印原子力協定、両院承認、核実験時の停止を委員会決議。

 「日印原子力協定の承認」(193条約3号)は、投票総数238、賛成151、反対82で両院承認されました。委員長は「未臨界核実験実施時には停止する」とした「強く求める決議」を報告しました。

 「改正医療法」(193閣法57号)は、投票総数240、賛成240、反対0の全会一致で可決し、成立しました。1年以内に施行。衆議院の審議段階で、フラップ(資金力に勝る当事者が高額な訴訟を起こすことをちらつかせて言論を弾圧する行為)が入る歴史的な場面もありました。

 「改正中小企業信用保証法」(193閣法31号)は投票総数239、賛成221、反対18の賛成多数で可決し、成立しました。1年以内に施行。

【参議院政府開発援助等に関する特別委員会】

 ジェトロなどへの一般質疑がありました。

【参議院議院運営委員会】

 議長応接室で開かれました。インターネット中継はありませんが、議事録は、後で公開されます。実際にはこれに先立ち、同じフロアにある、議院運営委員会専用の理事会室で行っている事会で決まっており、議運委はそれを追認する場です。このため、理事はベテラン・中堅で、委員は新人という構成をする会派が通例となっています。

【参議院情報監視審査会】

 議長応接室で開かれました。いわゆるシールドルーム(携帯電話などの通信が物理的にできないようにした部屋)ではないと思うのですが、何らかのリフォームがあったのかもしれません。審議の内容は、後で、議事録が公開されます。

【官報】

 改正化審法が公布されました。国会では192閣法52号として参議院先議で議論されました。改正する法律、の番号は平成29年6月7日法律53号。

このエントリーの本文記事は以上です。
(C)2017年、宮崎信行。

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Miyazaki Nobuyuki


篠原孝さん「農業の収入保険は悪くない」と容認「共済がもっと大事」としつつ「兼業でコンバインを買って農地を守る人」配慮求め「未来投資会議の金丸座長らには分からない」

2017年06月07日 14時18分28秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

 2005年の第44回衆院選で民主党(岡田克也代表)が掲げたマニフェスト(政権公約)の「農業者戸別所得補償(農家直接支払い)」の考案者として知られる、民進党の篠原孝・元農林水産副大臣は、平成29年2017年6月7日(水)の衆議院農林水産委員会で、

 「農業収入保険は、悪くない」と語り、審議中の農業保険法案(193閣法58号)を容認するかまえを見せました。

 篠原さんは「農業者戸別所得補償の方がよい」としながらも、「牛豚肉農家へのマルキン(赤字の9割まで補填)、野菜の価格安定制度がある」とし、米(コメ)でも、収穫量や、概算金相場などにもとづく、毎秋の収入変動を、積み立てた保険料で調整する同法案の趣旨に理解を示しました。

 そのうえで、災害に対応した共済と、収入保険が併存する制度になるが、共済の方が相対的に大事な制度だと農水省経営局長に問いましたが、局長は「一言で言えない」と答弁を避けました。篠原さんは「農家の子が、工場や役所やJAで働いている兼業農家がコンバインを買う。経営者に言わせると、100年経っても回収できない。しかし、そうやって農地を守っていることへの配慮が必要だ」としました。農政改革の主導権を握る、官邸内の規制改革チーム未来投資会議などの金丸恭平座長らに農政が分かるわけないとの姿勢を示し、農水省の発奮をうながしました。

 私としては、農業者戸別所得補償は、税金を原資とする一般税源で、繰り越さない原則の一般会計で、年1兆円以上になりますから、2017年の日本ではとても無理だと考えます。

 調べたら、倉石忠雄さんの4度目の農相、若林正俊さんの初の農相は74歳の時のようで、篠原さんなら6年後になりますから、2023年辺りには、政権交代もして、篠原農相、あるいは篠原首相でもいいですから、ぜひ実現していきたいところだと思います。

 法案は篠原さんの質問後に採決。共産党が反対し、自民党、公明党、民進党、維新が賛成しました。政府原案ではなく、自公民維が話し合い、共同で修正案を出し、「政府はJAなどに情報を提供すること」などを求めました。このため、採決は、「修正すべし」となりました。昨夏以来の衆参自民党単独過半数時代になってから、自公民維の4党修正はこれが2度目の珍事。民進党が農業者戸別所得補償からの転換への理解を求めているとも解釈できます。ただ、参議院に送った後、委員会定例日が2回しかないことから、参議院で継続審議となり、今国会中には成立しないかもしれません。施行日は、来年、2018年、平成30年4月1日(日)。

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