[写真]参議院議場の速記者の出入り口、2017年5月、筆者・宮崎信行撮影。
参議院自民党が、おそらく、安倍晋三首相(自民党総裁)への忖度ならぬ、命令で、突如、共謀罪法案を中間報告して、そのまま採決動議を出してしまいたいとの仰天の提案を昼前後にしました。衆議院民進党などは、安倍内閣不信任決議案を衆議院議長に提出。参議院での採決は阻止し、衆議院本会議は、あす午前0時10分から再開することにして、延会。衆参とも延会の、深夜国会となりました。
[参議院本会議 平成29年2017年6月14日(水)】
定刻通り、午前10時00分頃に開会。
「地方議員ビラ(チラシ)をまける、改正公職選挙法」(193衆法21号)は投票総数240、賛成240、反対0の全会一致で可決し、成立しました。平成31年3月1日(金)施行。
「特定船舶の入港禁止法にもとづく措置の承認」(192承認1号及び193承認3号)は投票総数239、賛成239、反対0の全会一致で両院承認されました。
「商業捕鯨実施のための捕鯨科学調査実施法案」(193参法106号)は、投票総数239、賛成237、反対2の賛成多数で可決し、衆議院に送られました。個人的には反対2が出て、うれしい。参法で議案番号3ケタの法案が可決したのは極めて異例です。
[画像]商業捕鯨のための捕鯨科学調査実施法案の採決で反対2が出たことを表示する参議院本会議押しボタン式投票システム、2017年6月14日、参議院インターネット審議中継からスクリーンショット。
「改正児童福祉法」(193閣法48号)と「ホームレス自立支援法10年延長法」(193衆法19号)は同時に議題となり、投票総数241、賛成241、反対0の全会一致でともに成立しました。改正児童福祉法は公布の日から起算して1年以内の政令で定める日に施行。改正ホームレス自立支援法は公布日に施行。
この後、「国務大臣山本幸三君問責決議案」を議題に追加するよう、伊達忠一議長が諮りました(衆でいう、議事進行係の緊急動議に相当)。
これについては「異議無し」と全会一致で決まりました。ただし、直前に自民党側から「おいおい」との野次が飛んでいたのですが、採決では、異議有りとは誰も言わなかったようです。この辺は、参議院がいかにもごく少数の幹部が支配していることがうかがえるところです。
議院運営委員会理事らが議場内交渉スペースに登壇。自民党の牧野京夫さんらから「国務大臣山本幸三君問責決議案の審議では、趣旨説明を15分以内、討論を10分以内に制限する動議」が提出されました。これには「言論の自由を制限するのか?」との野次が飛びました。民進党はこの動議の採決を記名投票表決にするよう署名を出しました。これで、記名投票表決。その結果、投票総数238、賛成165、反対73の賛成多数で可決し、演説時間が制限されました。
趣旨説明(衆でいう趣旨弁明に相当)では、2013年再選の総評3人娘の1人、自治労の相原久美子・内閣委筆頭理事が登壇し、演説。自民党側の討論(反対討論)は、自民党の議運理事や予算理事経験者の岡田直樹さんが登壇。民進党側の討論(賛成討論)には、同じく総評3人娘の1人、日教組の神本美恵子さんが登壇。この後、記名投票表決され、議長集計結果を発表。投票総数238、賛成73、反対165の賛成少数で、山本国務大臣問責決議案は否決されました。
午後1時まで休憩となりました。
午後の本会議は、午後6時21分頃再開しました。まず金田法相問責決議案を日程に追加することを議長がはかり、了承されました。ここで、自民党が「趣旨説明を15分、討論を10分以内」に制限する動議を提出。これについて、民進党の提案で記名投票表決。投票総数235、賛成162、反対73で時間が制限。
真山勇一さんが登壇し、「金田法相問責決議案」を説明。討論演説で、福山哲郎さんが「金田大臣は参議院議員時代、京都の共通の友人宅で食事をしたことがある」とあかし、「ご病気のこともあったとはいえ」と気遣いながら、答弁を法務省局長に任せた姿勢を批判しました。
この後、採決。投票総数237、賛成73、反対164で否決。金田法相は一礼して、本会議場を(いったん?)去りました。
そして、ついに、自民党から、「共謀罪法案(193閣法64号衆修正)」について、法務委員長から中間報告を求める動議を議題とする動議」が提出されました。午後8時5分頃から、この動議について、採決。投票総数239、賛成149、反対90.中間報告を求める動議を議題とすることになりました。
ここで、先に提出されていた、「山本順三議院運営委員会解任決議案」を日程に追加し、議題とすることになりました。ここで、自民党から、「趣旨説明を15分、討論を1人10分」に制限する動議が出ました。この動議について、記名投票表決。
私見ですが、通常国会146日目にして、議運の話を10分、15分でやるのは、いくらなんでも無理でしょう、と思いますが。投票総数237、賛成164、反対73で制限されることになりました。
趣旨説明は、吉川沙織・議運筆頭理事。もともと午前10時の本会議は、山本、金田両大臣の問責決議案の採決で、終わる予定だったとし、審議引き延ばしの批判はあたらないとしました。山下芳生・共産党議員団長は「きょうの理事会で、自民党の西田昌司理事から、状況が変化したので、中間報告をしたい、との申し出があった。西田理事からは、申し訳ない、との言葉があった」と暴露。何が変化したのかと問うと、西田理事は答えず、公明党理事はうつむいただけだったとしました。これは、西田さん(清和会・清風会)が官邸の、安倍晋三総裁(首相)から「早く会期を閉じろ」と、忖度ならぬ、命令を受けた可能性があります。
採決の結果、投票総数235、賛成73、反対162で、山本順三さんが議運委員長を続投することに。
夜9時42分頃、伊達議長は、延会を宣言しました。
【衆議院本会議】
午後1時設定。
午後11時31分頃開会。
安住淳さんらが午後9時半前後に出した、「安倍内閣不信任決議案」。議事進行係の緊急動議で上程され、議題となりました。これを見越して、閣僚全員がひな壇に座っていました。
大島理森議長は、あす午前0時10分から本会議を開くと発表して、きょうは延会しました。
【衆議院農林水産委員会】
最後に、「JAS法改正案」(193閣法35号参先議参修正)が山本農相と、山田修路・自民党参議院議員から趣旨説明されました。先議の院(参議院)は4月5日(水)に可決していましたが、重要法案が多いことと農水省が所管する獣医師をめぐる自民党政府の疑惑から、審議入りが遅れていました。あす午後2時から委員会を開き、審議することになりました。
これに先立ち、一般質疑がありました。自民党の渡辺孝一さんは「審議入りしていないが、JAS法改正案についても質問したい」として先取りした質問をしました。渡辺さんは「15分間の質問ですから、お耳を貸してください」と同僚にお願いしました。山本大臣は「参議院本会議に行きますから」と委員長に申し出て退席。渡辺さんは「大臣がいないとは、私の予定にはなかったので困っています」と語ると同僚から「副大臣がいるから大丈夫よ」との合いの手が出ました。渡辺さんは「行政事業レビューについて地元の不安が出ている。国会閉会後に結論が出る。私だけでなく、ここにいるみなさんは、閉会後に、地元周りに忙しく、国会に来ることは少ないだろうから、国会が関与できないことを懸念している。副大臣は大臣によく伝えてほしい」と述べました。渡辺さんは2期生で、宏池会(自民党岸田派)所属。元岩見沢市長で前回は比例単独の立候補でした。最近の自民党には珍しく好感を持てる質問でした。
【参議院憲法審査会】
公報上は午後1時。午後10時前後に、取りやめ。
【官報】
「改正中小企業信用保証法」が、平成29年6月14日法律56号として公布されました。
「改正医療法」が、平成29年法律57号として公布されました。ともに、きょうから1年以内の政令で定める日に施行。
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(C)2017年、宮崎信行。
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Miyazaki Nobuyuki