(このエントリーは、午後8時25分投稿で、午後9時50分に更新)
[写真]第196回通常国会の憲法改正発議は不発に、きょう2018年7月20日の衆議院憲法審査会、インターネット審議中継からスクリーンショット。
第196回国会も事実上閉会。昨年秋の野党大分裂により、森友・加計学園などニッチもサッチもいかない国会となりました。野党は、会見勢力3分の2が両院をしめてから、2度目の通常国会でありながら、改憲発議阻止に成功。辻元清美・立憲民主党国対委員長の言葉で言う「立憲主義を守る国会」の設定があたり、辻元さんのもう一つ「忖度決着国会」では、佐川前理財局長の国税庁長官辞任という「決着」が図られました。一方、安倍晋三首相(自民党総裁)が設定した「働き方改革国会」は、法案の提出・成立が延長国会になだれ込むハプニング。そのもととなった、5年前の裁量労働をめぐる調査ミスについて、きのう、大臣が事務次官や局長を処分しました。財務事務次官のセクハラ辞任、外務省ロシア課長のセクハラ更迭と、文部科学省前官房長の裏口入学と、霞が関の「頭が良いとの思い込み」が完全に崩壊した国会ともいえそうです。
内閣提出法案の成立率は、4年前の安倍内閣に比べると下がっていますが、今夜半には92・3%になる見通しで、きょねんの「95・5%」に匹敵する、高水準。このままだと、有権者としては、次は野党に勝たせるという選択肢が有力ですが、とはいえ、それほどの人材・財源がないというのが正直なところです。
衆での枝野幸男代表・辻元清美国対委員長の抵抗野党路線が功を奏しましたが、参議院では半世紀にわたった日教組など旧総評系議員の会期末闘争ではなく、それ以外の連合議員が担当。組織を根城にした陰湿な参議院が変わりゆく萌芽が芽生えました。とにかく、辻元委員長の貢献は偉大だし、ひそかにそれを支えた、森山裕、穀田恵二両国対委員長も、本人たちは認めないでしょうが、「辻元清美と立憲バッカーズ」といったところで、議会制民主政治の屋台骨は保たれたと感じます。
【参議院本会議 平成30年2018年7月20日(金)】
「IRカジノ施設実施法」(196閣法64号)は投票総数238、賛成166、反対72の賛成多数で可決し、成立しました。
「平成30年特定災害関連義援金差し押さえ禁止法」(196衆法46号)は投票総数238、賛成238、反対0の全会一致で可決し、成立しました。
議院運営委員長から参議院規則の改正が図られました。「定数6増」を決めた参議院改革協議会の報告書にもとづき、(1)参議院行政監視委員会の定員を30名から35名に増やす(2)行政監視委員会が勧告をする際には、全議員に諮るーーとするもので、来夏の改選後に施行するとしました。投票総数238、賛成238、反対0の全会一致で可決・成立しました。正直、骨抜きの改革です。
この後、会期末処理。下述の「水道法改正案」(196閣法48号)の閉会中審査は起立採決となり、過半数の起立で継続することが来ました。
それ以外は、すべて委員長の審査報告書通りに決まりました。
この後、伊達忠一議長があいさつ。会期末の混乱もあり、議長への不信感が強いようで、野次で騒然としました。そして、散会を宣言しました。
【衆議院本会議 同日】
第2ラウンドでは、閉会中審査手続きが、付託した委員会の審査結果通りに決まりました。休憩。その後、参議院で法案が処理されたので、そのまま散会となりました。このため、恒例の議長の挨拶はありませんでした。
第1ラウンドでは、「安倍内閣不信任決議案」が審議され、投票総数455、賛成135、反対320で否決されました。
【参議院災害対策特別委員会 同日】
午前10時15分設定で、午後6時20分頃開会となりました。
「平成30年特定災害関連の義援金の差し押さえ禁止法案」(196衆法46号)。衆側の委員長から趣旨説明。質疑、討論は省略されて、採決。全会一致で可決すべきもの、と決まりました。本会議に緊急上程。
法案は、豪雨だけでなく、大阪地震も対象。公布日に施行。施行前に受け取った義援金も対象になりますが、差し押さえ禁止の効果は施行日に発生するため、きょうから施行前日までに差し押さえることは禁止されていないわけで、周りの人から注意喚起があっていいかも。
これに先立ち、小此木八郎防災担当大臣が豪雨について、政府報告しました。
【衆議院地方創生に関する特別委員会 同日】
「森友・加計」特区をめぐる一般質疑などの余波で審議入りできなかった、「国家戦略特区法改正案」(196閣法57号)を継続(閉会中審査)にするかどうかが採決されました。法案の賛否は別として、立憲・共産が継続に反対し、自公などが賛成することで、閉会中審査手続きをとることにして、本会議で認められました。
【衆議院憲法審査会 同日】
3月の自民党大会に前後して「森友・加計」のダメージが強く、「4項目」を発表しながらも、自民党は憲法改正発議案の国会提出が出来ず、ほとんど憲法審査会は開かれませんでした。
[画像]憲法改正発議案が出ずに肩透かしを食った、森英会憲法審査会長と、秘密保護法・平和安保法制を主導した中谷元さんの、両自民党議員、2018年7月20日、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。
与野党融和をもくろみ終盤に提出され趣旨説明された「日本国憲法改正手続きのための国民投票法の改正案」(196衆法42号)を閉会中審査にする手続きについては、自公維などが賛同しましたが、法案そのものには賛同する声も強いとの報道もある、国民民主党や、立憲、共産など野党のほとんどの会派が反対しましたが、賛成多数で、第197回国会への継続を前提に閉会中審査となりました。
【参議院厚生労働委員会 同日】
「水道法改正案」(196閣法48号)を継続調査にする件。自公と一部野党が賛成して、継続調査にすることを、本会議に上申することになりました。参議院での閉会中審査となる閣法は、この1本となります。秋の臨時国会では、参議院先議となり、衆議院でも再度審議をしないと成立しないことになりました。国民・立憲などは反対しましたが、秋の参議院の見せ場になるかもしれません。
【衆議院内閣委員会 同日】
「サイバーセキュリティ基本法改正案」(196閣法45号)と「成年被後見人の権利の制限の適正化のための一括改正法案」(196閣法56号)は閉会中審査となりました。両法案は、カジノなどの関係で、今国会では審議入りすらできませんでした。野党提出の議員立法では、ギャンブル依存症対策基本法の対案は、野党自ら撤回を求め了承されました。IRカジノ施設実施法案の対案は、野党が閉会中審査を求めましたが、与党が反対したため、今国会で廃案となりました。
一方、前日に議長(議院運営委員会)から付託された「海洋再生可能エネルギー発電整備に係る海域の利用の促進に係る法律案」(196閣法46号)はまったく議題にならず本会議でも手続きがとられず、政府提出法案ながら審議未了で廃案になりました。
【衆議院農林水産委員会 同日】
野党提出ながら審議された、国民民主党の後藤祐一さんが筆頭発議者の「種子法復活法案」(196衆法13号)は閉会中審査の手続きがとられました。自公も含めた全会一致で秋の国会に継続します。このほか、野党提出の旧林野庁給与、牛豚赤字補てんのマルキン、農業者戸別所得補償法案も継続することが決まりました。
【衆議院国土交通委員会 同日】
平成30年7月豪雨への黙祷がありました。この後、完全無所属の鷲尾英一郎さんらが提出した「航空機ハイジャック防止(航空機強取等防止)措置に係る体制の強化のための施策の推進に関する法律案」(196衆法43号)が全会一致で閉会中審査(継続審議)にすることが決まりました。鷲尾さん、こんな法案だしていたんですね、タカ派ということなんでしょうか。
【衆議院経済産業委員会 同日】
阿部知子さんら野党が提出したエネルギー関連の法案の閉会中審査が決まりました。
【衆議院厚生労働委員会 同日】
請願が4本採択されました。腎疾患、小児特定疾患、ウィルス性肝がんなどの総合対策の樹立や、てんかんのある人とその家族の生活の支え方の対策の樹立などを求める請願を採択すべきだと本会議に上程し、衆議院として請願を採択しました。
この後、西村ちなみさんらの保育士処遇改善法案、阿部知子さんらの産後ケアセンターの法案、岡本充則さんらの児童虐待防止の法案が閉会中審査にすることが決まりました。
【衆議院法務委員会 同日】
例年通り、法務省の定員増の請願を採択すべきだとする審査報告書をまとめて、本会議に上程。
【参議院外交防衛委員会 同日】
毎年恒例の、参議院事務局の職員である、外交防衛委員会専門員がマイクを持って、請願の整理を説明。
[画像]マイクを持って、請願の整理一覧表を説明する、参議院外交防衛委員会専門員、2018年7月20日、参議院インターネット審議中継からスクリーンショット。
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