宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

問題はそこではない 労働者派遣法2015年改悪法、3年目の「9月30日」、雇止めより大事なもの

2018年08月18日 16時45分55秒 | 法律の執行状況

 労働法制の改善は進んでいて、最低賃金法にもとづく県別最賃の引き上げや、長時間労働の是正、女性の育児後の職業復帰の崖だった「M字カーブ」の解消などが現実となってきました。

 さて、労働者派遣法改悪法の2015年改悪法の施行日「9月30日」から3年経つことになります。政府与党・自民党が1度の解散廃案を経て国会を通すのに苦労したのですが、皮肉にも、平和安全法制(ガイドライン戦争法)と軌を一にして成立。女性派遣社員も年5日程度予備自衛官に「限定的」に登録しようというポスターを、私の地元の防衛局が張っています。

 現行の派遣法では、その第35条の3で、派遣元事業者は、同一の労働者を3年を超えて、派遣先の同じ職場に派遣してはいけない、と定めています。このため、今年9月30日以降、3年の派遣が更新されない、「派遣止め」で職を失う人が、主に女性で発生するのではないかとされています。下につけた、時事通信=gooニュース=では、関根さんがやっている派遣ユニオンに1日に数件相談が寄せられているようですから、大変な問題となりつつあります。

 但し、国政が調査すべき問題はそこにはありません。会社側から雇止めを示唆されたけど、9月下旬に「総務部ではなく経理部でもう3年」と派遣先・派遣元からオファーがあれば、「やります」ということになるでしょう。ごくわずかですが、派遣先で正社員に登用(無期転換)される人もいるでしょう。しかし、「ありがとうございます」と頭を下げて、低賃金で働くべきではありません。正社員と同じ仕事をしているのならば、正社員の月給+賞与+退職金分をもらうべきです。派遣の賞与が年14万円で退職金ゼロならば、それだけで、月あたりの手取りが同額でも、年200万円安くこき使われている計算です。まさに、生涯派遣で一生搾取です。

 もちろん、企業側にとって、退職金の積立引当金は重しです。実は公立学校の教員で40代の非正規が多いのは、団塊の世代の退職金給付の際に人件費総額を前年比で増やさないためにやってきたことです。退職金は無しで、儲かっているときだけ、社員旅行で使ってしまいたい、その方が結果的に新規採用人数は増えるのになあ、という経営者・使用者も多いでしょう。

 高学歴なわりに単純な統計を分かっていない人が多いのですが、一般事務職の有効求人倍率は0・33倍程度です。つまり、求職者3人に対して求人数が1人しかいない。ちなみに、運転手さんは5倍程度で、求職者1人に対して求人数が5人ある状態です。人手不足・外国人技能実習生を増やす中、ホワイトカラーは大量に余っています。ホワイトカラーエグゼンプションの動きはまだまだ加速するはず。そこで、見つめるべき労働法制のあるべき姿は、退職金を引き当てることではなく、65歳やそれ以降まで、転職も含めて、自由な働き方ができる、賃金の柔軟性だといえるでしょう。正社員の椅子取りゲームなど馬鹿げています。

[時事通信-gooニュースから引用はじめ]

派遣の雇い止め増加へ=来月末で3年期限到来―法改正後も正社員転換に壁)

 改正労働者派遣法の施行から丸3年となる9月30日を機に、派遣労働者が契約更新を断られる「雇い止め」が増えそうだ。3年の期限を越えて同じ人を同一部署で働かせることができなくなるためだ。好景気とはいえ、雇用の調整弁として使いたい企業のニーズはまだまだ根強く、同法が目指した正社員への転換には壁がある。

 同法は「常用雇用の代替になることを防ぎ、労働者のキャリア形成を図る」(厚生労働省)ため、2015年9月末に施行された。

 派遣から3年経過した労働者に引き続き同じ仕事をさせるには、派遣先の企業が正社員などとして直接雇用するか、派遣会社が労働者と期間の定めのない無期雇用契約を結ぶことが必要になる。簡単には解雇できなくなるため、二の足を踏む企業や派遣会社は少なくない。

 企業の受け入れ期間の制限は撤廃され、労働組合の意見聴取の手続きを踏めば、3年単位で人を入れ替えて派遣労働者を使い続けることができる。労働組合「派遣ユニオン」(東京)の関根秀一郎書記長は「いい(法)改正ではなかった」と指摘する。

 派遣ユニオンには今月に入り、1日数件の雇い止めの相談が寄せられている。金融機関に10年間派遣されていた40代の女性は、現在の派遣会社に移って3年になる来年2月以降、契約を更新しないと通告された。「今後も同じ職場で働きたい」と希望しており、派遣ユニオンを通じて派遣会社と交渉に入る予定だ。

 一方、人手不足の流通や運輸業界では直接雇用の動きも見られる。ファッション関連の販売員らを派遣するiDA(東京)は7月、3年の期限を迎える派遣社員320人を希望すれば正社員に登用すると発表した。

 08年のリーマン・ショック後には雇い止めや、企業の都合で契約を途中で打ち切る派遣切りが続出。「年越し派遣村」ができるなど社会問題化したが、厚労省幹部は「そういう事態にはならないのではないか」とみる。

 ただ事務職の求人倍率が0.45倍(6月)にとどまるなど、むしろ余剰感の強い職種もある。企業の方針によっては、雇い止めの発生は避けられない見通しだ。

[引用おわり] 

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