ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

「厚生年金保険法改正案」2020年国会に提出へ「パートタイム月6・8万円案」来月から社保審で議論

2018年08月27日 07時10分15秒 | 第201回通常国会(2020年1月から6月)「コロナ感染症」

 厚生年金保険法を改正して、パートタイム労働者が国民年金から厚生年金に切り替わる月報酬額を、現行の「月8・8万円以上」から「月6・8万円以上」に拡大し、200万人程度加入者を増やす方向の議論が、来月から始まることになったようです。来月2018年9月から、厚生労働省の社会保障審議会年金部会で、議論を開始。

 2020年(新元号2年)の通常国会に、「厚生年金保険法改正案」を提出するはこび。

 これは、きょう付けの日経新聞が報じたものです。

 現行法第12条に「八万八千円未満である」と除外する、とありますので、ここを改正することになりそうです。

 年金をめぐっては、もともと農業者を対象にした「国民年金保険」への現役世代の加入者の半数が無職となっており、労使が折半する厚生年金保険とは、特別会計にたまったお金が1対10の規模に拡大。政府は、パートタイム労働者を国民年金から厚生年金に移すことを、今世紀になってから、ずっと政策課題として進めてきました。現在は、アベノミクスと少子化で、有効求人倍率が歴史的高水準となっており、人手不足のなか、企業が使用者折半分を負担できるとの見通しを厚労省が持っているようです。

 但し、我が国の厚年は、年金手帳を使用者に預けなければならない、いわば「人質制度」。大企業で正社員とそれ以外の能力が逆転しているとの指摘もあり、雇用の流動化のためには、基礎年金番号などを明示するだけで加入できるなど、日本年金機構の、国税庁並みのガバナンス能力アップも必要です。

 法律名称にある通り、年金は保険であり、「長生きリスク」に対応したものです。民間銀行が手掛けている、土地を担保にして生活資金を融資する「リバースモーゲージ」の融資総額はわずか1000億円にとどまっており、民間銀行が「長生きリスク」に対応できないのは明白。国によるリスクマネジメントが必須。ところが、2004年、2007年と、今世紀2度にわたって大きな与野党対立となった年金制度への理解が大きく広がったとはいえません。例えば、我が国最大手の文房具メーカー「コクヨ」が販売する給与明細表で、本来「厚生年金保険料」とすべき天引き項目を「厚生年金」と誤記したまま販売し続けています。内閣府が今月発表した世論調査でも、大事な政策課題のトップが「社会保障制度」となっていました。現在の日本は人類史上稀な、皆保険、皆年金の国家ですので、これ以上どう社会保障を充実させるのか私にはてんで分かりませんが、世調でトップであるなら政治が対応しなければなりません。

 歳出に穴があいています。厚生労働省が管理している各種保険料の特別会計。厚年特会から株の底支えのための買い増し資金が歳出されています。雇用保険特会からは、「一億総活躍社会のためのリカレント教育」として、学校法人にお金が歳出されかかっています。厚労省よりも政治力が強い、文部科学省による歳出押し付けにほかなりません。教育予算の公費負担は文科省・自治体だけがすべきです。

 まあでも、これから生まれる日本人も20年後には保険料を払い、それが特会の歳入になるわけですから、前政権がこだわり過ぎた、国民・厚生年金の持続可能性は、まあなんとかなるでしょう。雇用(労働契約)の確保・柔軟性・勤務・通勤時間の短縮と、年金の最低保障機能の方が大事です。

 そう考えてくると、パートタイム労働者の月6・6万円は妥当のような気がするし、厚労省が満を持して載せる政治課題としては絶妙な政治日程だと感心します。今次改正案の審議会では、副業の月収の方が高くなったらどうする、といった検討課題があるかもしれません。

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