【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

臨時国会で漁業法改正案審議へ、首相「70年ぶり抜本改正」漁業権の付与で漁協優先見直し、金丸議長代理が6月4日に答申

2018年10月25日 13時03分17秒 | 第197回臨時国会2018年12月までの「定例日無視延長なしのひどい国会」」

 「漁業法改正案」(197閣法 号)が、今国会に提出され、議論されるはこびとなりました。

 これは、首相がきのう(2018年10月24日)の所信表明演説で言及したものです。

 首相は、「次は水産業改革。七十年ぶりに漁業法を抜本的に改正いたします。漁獲量による資源管理を導入し、船のトン数規制から転換する。大型化を可能とすることで、漁業の生産性を高めます。漁業権の新たな付与について、法律で優先順位を定めた現行制度を廃止し、養殖業の新規参入、規模拡大を促してまいります。若い人たちが、自らの意欲とアイデアで、新しい農林水産業に挑戦ができる。自分たちの未来を託すことができる「農林水産新時代」を切り拓いてまいります」

 と衆参本会議で演説しました。

 安倍晋三内閣の農漁業改革は、内閣府・内閣官房の規制改革会議と、自民党の斎藤健・小泉進次郎・農林部会長という、農林族を完全に無視したやり方で進んできました。

 そのキーパーソンは金丸恭文さんです。経営コンサルタント会社の経営者で、かなり大きい会社のようです。同姓の金丸信元副総理は無関係。

 今回も、6月4日(月)に内閣府で行った規制改革推進会議(第34回)の記者会見の議事録で、金丸さんが主導したことが分かります。

 この中で、金丸議長代理は「漁業権付与の際の優先順位の法定制を廃止し、これにかえて漁業権の付与の際には既存の漁業権を受けた者が、水域を適切かつ有効に活用している場合はその継続利用を優先すること。及び、それ以外の場合は地域の水産業の発展に資すると総合的に判断される者に付与することを考慮事項として法定する」

 と語り、記者に説明しました。

 この部分を含めて、金丸議長代理の発言は、きのうの首相の所信表明演説にそのまま反映されているように思えます。来週にも閣議決定される、漁業法改正案も、それを条文化した内容だと考えらえます。なお、県庁の所管は変わりないようです。農漁業改革は、金丸さんが最大のメーンストリーム(主流)の権力者となっているようです。


 以下、金丸さんの6月の記者会見での発言内容をかなり長いですが、引用して、この記事は終わります。 


[内閣府ホームページから抜粋引用はじめ]

規制改革推進会議(第34回)終了後記者会見
議事概要
1.日時:平成30年6月4日(月)10:00~11:00
2.場所:合同庁舎8号館1階S101・103会議室
3.出席者:
(委 員)大田弘子議長、金丸恭文議長代理、安念潤司、飯田泰之、髙橋滋、原英史、
森下竜一

(中略)


○大田議長 水産分野は、野坂座長が欠席ですので、農林水産統括の金丸議長代理からお
願いいたします。
○金丸議長代理 野坂座長にかわりまして、私から御説明をさせていただきます。
水産ワーキング・グループは、昨年9月に新たに立ち上がりました。これまでに17回、
開催いたしまして、業界団体、漁業協同組合、漁業者、流通業者といった多彩な対象から
ヒアリングを行いました。また、規制所管府庁から関係法律の見直しも含め、検討する必
要性が示され、改革の方向性や検討状況を確認してまいりました。規制改革推進会議では、
これまでの議論を踏まえまして、水産分野に関しても答申をまとめました。
現行の漁業法は1949年に策定されたものですので、70年ぶりの漁業改革となります。大
きなポイントは新たな資源管理システムの構築、養殖・沿岸漁業のための規制見直し、漁
協制度の見直しの3点でございます。排他的経済水域世界第6位の規模にふさわしい改革
になればと考えている次第でございます。
まず、新たな資源管理システムの構築について、御説明いたします。現在、漁獲量制限
は限られた魚種にのみ導入されており、多くの魚種では漁業者同士の漁獲競争や乱獲、未
成熟な魚の漁獲が発生しています。このままでは漁業の発展に不可欠な、基礎的な資源量
が確保できなくなるおそれがあります。このため、国として幅広い魚種について、しっか
りと資源管理を行うとともに、漁業者には漁獲量を割り当てて、1尾ごとの付加価値を高
めた漁獲を促してまいります。
具体的な改革の主な項目としては、次の3点です。
1番目。国が資源管理指針を定めることを法制化し、回復や維持を目指す資源水準とし
ての「目標管理基準」と乱獲を防止するために資源管理を強化する水準としての「限界管
理基準」の2つの基準を設け、資源状態に応じた管理を徹底する。
2番目。漁獲量ベースで8割を目途に漁獲可能量(TAC)を制定し、これを漁船ごとの個
別割り当て(IQ)で担保します。また、漁業者に漁獲量報告義務等を課し、徹底させる。
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3番目。資源管理の前提となる資源評価について、漁業者の操業時に得る情報のビッグ
データ活用も含め、充実させる。
この改革によりまして、水産資源の乱獲の防止や漁業の競争力強化の基礎となる水産資
源の回復・維持を実現できるものと考えます。
次に2点目のポイント。養殖・沿岸漁業のための規制見直しについて御説明します。水
産物の世界的な需要の増大を背景とし、水産物を安定して供給することができる養殖業は
今後大きな成長が期待されます。他方、沿岸漁業においては漁業の後継者難などがある中、
潜在力を生かし切れていない現場も存在します。
このため、漁業の事業拡大や新規参入を望む者が、透明性の高いプロセスの中で漁場を
得られ、明快なルールに基づき費用負担を求められる等の仕組みに変えます。特に養殖・
沿岸漁業への参入に際し必要となる漁業権については、既存漁業者も含めて水域を適切か
つ有効に活用する者が優先される仕組みに転換しなければなりません。
具体的な改革の主な項目としては、次の2点です。
1番目。漁業権付与の際の優先順位の法定制を廃止し、これにかえて漁業権の付与の際
には既存の漁業権を受けた者が、水域を適切かつ有効に活用している場合はその継続利用
を優先すること。及び、それ以外の場合は地域の水産業の発展に資すると総合的に判断さ
れる者に付与することを考慮事項として法定する。
2番目。養殖業発展のため、戦略的養殖品目の設定、大規模静穏水域の確保等を国が総
合的に推進する。
この改革によって、養殖適地の拡大や多様な担い手の参画が図られ、国内外市場で伸び
しろのある魚種等の養殖業の競争力の強化や、養殖・沿岸漁業において漁場を活用する意
欲と能力のある者が、透明性の高い仕組みの中で生産性の高い漁業を安定して営むことが
可能な環境の構築をできるものと考えています。
最後のポイントの3点目、漁協制度の見直しについて御説明します。
地域の漁業者の所得向上を達成するためには、その協同組合である漁協の存在が重要で
あり、漁業の競争力強化に向け、意欲と能力のある担い手が存分に活躍できる透明性の高
い開かれた環境をつくる上では、漁協への期待もさらに大きくなります。特に漁業権や漁
場の管理という公的機能の担い手としての側面を重視し、その役割を法律上明確化すると
ともに、役割に見合ったガバナンスの充実を進める必要があります。
具体的な改革の主な項目の1番目。漁協を、団体漁業権の主体や漁場管理の実施者とい
う公的機能の担い手として位置づけます。漁場管理については都道府県の責務とした上で、
漁協に委ねることができることとする。
2番目。団体漁業権や漁場管理に係る業務に要する費用の一部を漁業者等から徴収する
場合には、漁業権行使規則、漁場管理規程を定め、都道府県の認可を受ける。特に組合員
並みの情報が得られない漁協外のメンバーから費用を徴収する場合には、収支状況の明確
化、情報開示を行うことを法定する。
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3番目。漁協の目的に、漁業者の所得向上を図ることを明記するとともに、役員への販
売のプロ等の参画、信用漁業協同組合連合会等への公認会計士監査の導入の義務付けを行
う。
この改革によって、漁協の運営や資金の使用方法が透明化され、公的機能を担うにふさ
わしい組織体制の確立が実現される。
今後、農林水産省での法制化についてフォローアップを行うとともに、水産ワーキング・
グループとして引き続きさまざまな課題について議論を深めてまいります。
以上でございます。

(後略)

[抜粋引用おわり]

このエントリーの本文記事は以上です。

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