ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

「所得税の4万円時限定額減税と7万円給付金」に関心が集まってしまう、やや低調な序盤国会

2023年10月25日 20時30分22秒 | 第212回秋の臨時国会 2023年秋
 所信表明で「所得税」の文字を落とした首相ですが、「定額減税4万円・給付金7万円・1年間」となりそうです。「増税メガネ」とたたきやすい雰囲気となった政権ですが「法人税が上振れして、所得税で還元し、需給ギャップがなくなったので、供給力拡大に力を入れる」との経済認識は正しい。時限措置から税制のシンプル化に持っていけるかどうかが、野党のカギとなると考えます。

【参議院本会議 きょう令和5年2023年10月25日(水)】

 立憲民主党の田名部匡代・参議院幹事長の問いに対して首相は「旧統一教会による被害の救済等についてお尋ねがありました。被害者救済について法テラスにおける電話相談から、弁護団への紹介や民事保全申立に際しての援助など被害者に寄り添って適切に対応する」とし「海外への送金については、外為法の規制の履行状況等について情報収集分析に努めてまいります」と語りました。

 岸田さんは「我が国経済は、1990年代のバブル崩壊以降、長引くデフレ等を背景にコストカット型経済が続いてきました。この間、アジア通貨危機、不良債権問題、ITバブルの崩壊、リーマンショックなど、様々な危機や困難に見舞われ、消費等投資の停滞を招きました。アベノミクスは、デフレではない状況を作り出しGDPを高め、雇用を拡大し企業収益の増加傾向に繋がりました。他方、一人当たりの平均の実質賃金は伸び悩んだと認識をしています。これまでの成果の上に立ちながらしっかりと成長を実現した上で、成長の果実を分配することで、所得の向上に繋げていく。こうした令和版所得倍増をはじめとする新しい資本主義の2年間の取り組みや30年ぶりの(高水準となる)3・58%の賃上げにつながりました」とし「持続的な賃上げや活発な投資が牽引する成長型経済への変革を実現してまいります」と述べました。

 自民党はいつもながら、関口昌一会長でなく、世耕弘成幹事長。

 世耕氏は「岸田総理最初に明確に申し上げますが、私は総理を支持し、総理が目指されている国の姿で政策の実現に少しでも協力したいと思っています」と媚びました。
 世耕氏は「池田元総理も同じ広島県選出であることも相まって、岸田総理の登場には、個人的に歴史の必然さえ感じます。しかし、現状において支持率は低空飛行。補欠選挙の結果も一生いっぱい。こんなに頑張って成果を出してるのに、なぜ評価されないのだろう。これが現在の岸田総理の率直なご心境ではないでしょうか」と述べました。

 そのうえで世耕氏は「国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないということに尽きるのではないでしょうか」と語りました。世耕氏は「リーダーの役割とは何か。サラリーマン時代からずっと私は自分自身に問いかけ続けてまいりました」としました。個人的には「背の高さ」かと思いましたが、世耕氏は「永遠に答えを得ることはないでしょう」と珍しく正直に語りました。

 世耕氏は羊頭狗肉に、チャーチル元首相(保守党党首)の言葉を持ち出し、「政治家に必要な能力とは、明日来週来月来年何が起こるかを予言すること。そして、そうならなかったときに理由を説明できることである」と述べました。が、英国政治は意外とシンプルで、例えば「マンションタックスにノーならこのバナーをシェアしてください」とフェイスブックで友達同士で働きかける選挙戦をしています。日本のゲッペルスと呼ばれた世耕氏は、複雑怪奇な税制・選挙制度のもと、1人区公認1人で議席を維持する卑怯者であり、野党時代の民主党に関するデマの流布で地獄落ちは確実。シンプルな税制・選挙制度を実現しなければ、チャーチルのような説明を自民党総裁ができるわけがありません。

 ●参議院では、参議院改革協議会の選挙制度専門委員会や、議院運営委員会の理事会、委員会も開かれました。

【衆議院本会議 同日】

 馬場伸幸・維新代表は、改憲発議を来年の通常国会で実現させ、できなかれば9月の総裁選に不出馬とするべきだと介入しました。

 与党・公明党の石井啓一幹事長は「岸田内閣は誕生して2年が経ちました。課題に果敢に挑戦をし、政策を着実に進めています。なかでも国民の協力により、苦しいコロナ禍を乗り越え、経済状況も改善しつつあります。一方で食料品など物価が高騰し、円安圧力も重なる中、特に家計に重い負担感を与えている」と述べました。 

 玉木雄一郎さんは「国民民主党代表の玉木雄一郎です。私からはまず、賃上げ、賃上げ賃上げと、賃上げを参照させていただきたいと思います」と語りました。玉木さんは所得税制の累進税率などで「賃上げ以上に国の税収が増えるブラケット・クリープ現象が起きている」とし、インフレ手当などを働きかけました。

 共産党の志位和夫委員長は「経済の停滞を招いたとし、コストカット型経済からの完全脱却を主張しています。それでは伺います。日本経済をコストカット型経済にしてしまったのは一体誰なのか。賃金の子育てのために、正規雇用を言う割にまで広げてしまった」とし、最低賃金法や年金改革を求めました。

●今週前半は衆議院情報監視審査会や予算委員会の加藤勝信、逢坂誠二両筆頭理事の協議などが行われました。

以上です。
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「こども家庭庁」の「太郎と花子の勉強会」は各々不倫、山田太郎文部科学政務官が辞任

2023年10月25日 19時50分28秒 | 自民党
 岸田政権の「異次元の少子化対策」の指令塔となる「こども家庭庁」につながった「太郎とはなこの勉強会」を主宰していた山田太郎・文部科学大臣政務官が、あすの週刊文春発売前に辞任しました。

 山田議員ホームページで、「報道にあった妻以外の女性と男女の仲になってしまったという点は事実です。学生時代から長年私を支え続けてくれている妻を裏切ってしまい、また家族にも辛い思いをさせてしまい、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」とさきほど(2023年10月25日夕)載せました。

 私としては、「男女の仲になってしまった」でなく「男女の仲になった」とすべきだと思いますが、先に行きます。

 山田さんはそのうえで「報道には性行為の対価として現金を支払ったという内容がございましたが、このような事実はございません」と否定し、文春を訴えるかまえを見せました。

 山田さんの後輩ながら、一足先に、万博・地方創生・消費者・沖北相として入閣した自見はなこ大臣も、これから初めての国会審議となります。

 既報の通り、山田さんは、橋本龍太郎首相の世襲である橋本岳厚生労働副大臣との「大黒ふ頭・ダイヤモンドプリンセス交際」からきょねん末の東京大神宮での結婚式による略奪婚で、大臣の座を射止めたともされています。

 「太郎と花子の勉強会」が「こども庁」を提唱しながら「こども家庭庁」と家庭が加わった陰には、自民党内の統一教会の親和性も影響したとされています。

 一方、初代大臣の父に複数の妻がいたとされますが、これは前大臣は母と2人で苦労したと同情されています。

 比例単独だときられ、世襲だとお咎めない自民党内のダブルスタンダードに自民党内での不満も出てきそうです。

 以上です。
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違憲確定、国会が必ず立法措置へ、性同一性障害者の性別特例法(平成15年)の手術要件は憲法13条違反

2023年10月25日 15時36分11秒 | 【法案】今後提出される法案
●性同一性障害者性別特例法は違憲で、国会対応へ

 性別の変更は、性器の外観や生殖能力の手術が必要だとする「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(平成15年法律111号)は憲法13条など幸福追求の権利に違反するなどして認められない。さきほど水曜3時(2023年10月25日)に最高裁大法廷が決定を出し、確定しました。

 同法は、その第3条で「家庭裁判所は、次の各号のいずれにも該当するものについて、性別の取扱いの変更の審判をすることができる」としています。必要及び十分条件として「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態」「身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えている」とし、「請求をするには、診断の結果並びに治療の経過及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければならない」と明記しています。

 そのため、手術をしなければ、戸籍法などの性別を変更できません。

 来年の通常国会で、必ず法改正が必要な事態となりました。

【追記 20:40】「外観要件」(身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えている)は東京高裁に差し戻しとなり、違憲・合憲の判断は持ち越されました。【追記終わり】

●全く別の話だが、生殖補助医療で夫死亡後に妻が第三者の精子で妊娠・出産

 これとは全く別な話で、生殖補助医療を受けていた夫妻で、第三者の精子を提供されていた妻が、夫が死亡したことを医師に告げずに治療を継続し、妊娠・出産したことが今週報じられました。現行民法などで、見知らぬ男性が、子の認知・扶養を請求される可能性があります。当面は民事・家事で対応できそうですが、民法の隙間が生じました。

●離婚後の共同親権を本則とする改正案が通常国会提出へ向け準備

 さらに、法務省法制審議会は、「共同親権を本則として、単独親権を例外とする」民法改正案を、次の第213回通常国会提出をめざして準備しています。

●LGBTQ理解増進法で、自民岩盤保守崩れる

 さきの通常国会では「LGBTQ理解増進法」をめぐり、自民党の故安倍晋三首相を支持した「岩盤保守層」が安倍チルドレンの稲田朋美幹事長代理や岸田文雄総裁に不満を持ち、一部ジャーナリストらが「日本保守党」を結党しています。

 このため、性自認、生殖医療、離婚後の親権といった人間の尊厳と両性の本質的平等にかかわる政治課題が同時に、国会に突き上げられる状況となりました。

 以上です。
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【霞が関・訃報】松本英昭元自治事務次官・行政局長、81歳、「地方分権一括法」の調整リード

2023年10月25日 05時54分33秒 | 訃報
[写真]自治省が以前入居していたことがある旧・「JTビル」(現・住友不動産虎ノ門タワー)、おととし、東京港区で、宮崎信行撮影。

 「法定受託事務」「国と地方の協議の場」「国・県・市の枠づけ紐づけの移譲」など2000年に施行され、現在の地方自治の枠組みである「地方分権一括法」のもとになる閣議決定の調整をリードした、元自治事務次官の松本英昭さんが、おととい、81歳で亡くなったと報じられました。

 自治省の行政局長(現在の総務省自治行政局長)から事務次官として、地方分権推進委員会の累次の「勧告」や平成10年の閣議決定「地方分権推進計画」をリード。翌年法律が成立しました。

 退任後は、元自治事務次官・長野士郎さん(昭和17年内務省入省・地方局配属、岡山県知事6選)が編んだ「逐条地方自治法」を、長野さんが健在の間に半世紀ぶりの改定にこぎつけました。松本さんが執筆した「逐条地方自治法」が現在も、定番・スタンダードとして全国の都道府県市町村で影響力をとどめています。

 令和5年2023年10月23日没、昭和39年入省、東大法学部卒業。

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