日曜日。ニータ氏とともに、軽自動車の試乗に向かった。
私としては、免許を取った長女が、もしもクルマを持ちたいと言ったなら、何を薦めるべきかと見極めるためでもある。
まずは、ホンダのお店へ。
ターゲットは、現在日本で最も売れているクルマである「N BOX」。
試乗させていただいたグレードは、「Custom G・L Honda SENSING ベンチシート仕様」(4WD:税込車両本体価格1,829,520円)だった。
ステアリングの上から俯瞰する感じのメーターは、そこはかとなく欧州車的である。
老眼が進みつつある私にとって、確認しやすいこと、この上ない。
ただし、ステアリングが本革巻でなくウレタン製なのは、手のひらに汗をかきやすい体質の私にとって、大いに残念なポイント。
パワーウインドウはおろか、クルーズコントロールまで装着されているのが、イマドキの軽自動車なのだ。
インパネにも、安っぽさは、微塵もない。
自発光式2連メーターも、然りである。
直立した大きな窓で、視界は大いに良好。
スクエアなボディスタイルの軽ゆえ、車両感覚を掴むのはたやすく、その意味では初心者向きと言えましょう。
VSA(ABS+TCS+横滑り抑制)の効能か、スリッピーな札幌の雪道でも、何の不安も無く、乗れる。
直進性も確かで、その安心感は軽自動車とは到底思えず、私は大いに感銘した。
「センタータンクレイアウト」による重量配分の良さも、そこに寄与しているのかもしれない。
加えて、エンジン音もよく遮断されており、その静粛性も、なかなかのモノだった。
660ccのNAエンジンのこのクルマだが、街乗りにおいて、私・ニータ氏・セールスマン氏の3名乗車でも、特に痛痒は感じなかった。
加えて、そのスペースユーティリティというか、特に後席の広さは、まさに驚愕モノである。
シートの造りも、イイ。
定員乗車時のラゲッジスペースも、日常使いには十分。
シートを倒せば、相当の荷物が積めそうだ。
「N BOX」。
乗ってみて、このクルマが、日本のベストセラーである理由が、よく分かった。
これに「高速での直進安定性と衝突安全性」が加われば、このクルマは世界のベストセラーになり得ると思う。
続いて立ち寄ったのは、スズキのお店。
「N BOX」のガチンコのライバルと思われる、「スペーシア」に試乗させていただいた。
グレードは「HYBRID GS」(4WD:税込車両本体価格1,773,360円)である。
そのメーターパネルは、イイ意味で、そこはかとなく「バイク的」である。
インパネ全体のデザインは、ややビジーではあるものの、チープな感じではない。
もちろん、パワーウインドウ&パワードアロックも、標準装備。
視界は、このクルマも、大いに良好。
というか、その眺めは、「N BOX」のそれと、ほとんど同じ感じ。
軽自動車の寸法枠を使い切ったハイトワゴンは、すべからく、こういうデザインに収束されるのでありましょう。
そして走らせると、非常に軽快な、このクルマ。
それでいて、スリッピーな積雪路面を、インフォメーションを伝えながらも、安定して進む。
「全体に軽いのに、がっしりしっかり出来ている」といった印象は、アルト以降のスズキの軽自動車に、共通の味わい。
ただし、NVHについては、配慮された雰囲気は薄く、エンジン音は結構やかましく室内に侵入する。
とはいえ、そのダイレクト感のあるドライブフィールは、運転好きのお父さんの琴線には、響くことでありましょう。
「N BOX」ほどではないが、広大といっていい、後席のスペース。
とはいえ、シートはやや平板で、あまりコストを掛けて造られているようには見えない。
左右独立スライドで、居室と荷室の広さをフレキシブルに変化させることが出来るのは、イマドキの軽自動車の文法どおりである。
「スペーシア」。
その名のとおり、そのスペースユーティリティは秀逸。
加えて、運転しても愉しいクルマである。
とはいえ。やはり、スズキの軽自動車らしい「見切り」を感じてしまった部分もあるというのが、率直な、私の感想だ。
この日最後に乗らせていただいたのは、ダイハツの「タント」だった。
試乗車は、トップグレードの「RS”トップエディション SA Ⅲ”」(4WD:税込車両本体価格1,873,800円)。
この日乗った軽自動車3台のうちで、唯一のターボモデルである。
メーターパネルは、今も昔も少数派の、センターメーター。
最上級モデルだけに、ステアリングには、革巻が奢られている。
パワーウインドウのスイッチも、照明付だ。
Aピラー&A'ピラーの立ち方はやはり、「N BOX」や「スペーシア」のそれと、ほぼ同様。
走らせて驚いたのは、これが、結構、滑ったこと(^^;
この日、TRCやらABSの介入が、一番ハッキリと感じられたのは、このクルマだった。
まあ、同じ札幌市内とはいえ、地域性で路面状況も違っていたのかもしれないが、前記2車のような安心感を持つことはできず、かなり慎重に気を遣って走らざるを得なかった。
まあ、設計年度が5年以上前なので、致し方ないのかもしれないが・・・
逆にいえば、この5年で、クルマの安全性というか、安定性というか、走りの制御は、かなり進歩したのでありましょう。
そして、後席の広々感については、このクルマもやはり素晴らしいものでありました。
そろそろモデルチェンジするとの噂の、タント。
このクルマについては、それを待つのが、正解かもしれない。
そして、私がこの日乗った3台のうちから選ぶとすれば・・・
それは、まちがいなく、「N BOX」である。
「N BOX」の出来は、ズバ抜けて良かったというか、ダントツに素晴らしかった。
ベストセラーには、理由があるのだ。これ、ホント。