『母の声、川の匂い:ある幼時と未生以前をめぐる断想』
川田順造、2006、『母の声、川の匂い:ある幼時と未生以前をめぐる断想』、筑摩書房
「終章 父の手紙」を読んでいたら著者のお父上がS胃腸病院で胃穿孔の手術をしたとあって、伯母(母の姉)の嫁ぎ先の名が出たのでびっくり、タイミングを考えると執刀したのは伯母の舅(先々代)だろうし、ただそれだけのことだけれど。
生まれ育った深川から脱出して西アフリカでフィールドワークをし、パリ大学で博士論文を書いている間も父の手紙を読み捨てた著者が、故郷やその縁者、親族をたどりささげたのが本書。西アフリカの太鼓の響きを神話語りとして分析した著者が自分史を語るという趣向である。
自分がどこから来たのかたどりたくなる気持ちはわからなくもない。文化人類学者は日常、他者の由来を追っている。だから、そうした視線を自分に振り向けているわけである。しかし、自分を語るのは難しいな。自分を直接語らず、自分の周りを語って自分を表そうというのだから、さらに難しい。太鼓どんどんとはいかない。
著者が本書のあとがきにも名前を挙げ、謝辞をささげいる四方田犬彦の書いた『月島物語』のほうが、ふるさとの語りとしては面白かったかも。
「終章 父の手紙」を読んでいたら著者のお父上がS胃腸病院で胃穿孔の手術をしたとあって、伯母(母の姉)の嫁ぎ先の名が出たのでびっくり、タイミングを考えると執刀したのは伯母の舅(先々代)だろうし、ただそれだけのことだけれど。
生まれ育った深川から脱出して西アフリカでフィールドワークをし、パリ大学で博士論文を書いている間も父の手紙を読み捨てた著者が、故郷やその縁者、親族をたどりささげたのが本書。西アフリカの太鼓の響きを神話語りとして分析した著者が自分史を語るという趣向である。
自分がどこから来たのかたどりたくなる気持ちはわからなくもない。文化人類学者は日常、他者の由来を追っている。だから、そうした視線を自分に振り向けているわけである。しかし、自分を語るのは難しいな。自分を直接語らず、自分の周りを語って自分を表そうというのだから、さらに難しい。太鼓どんどんとはいかない。
著者が本書のあとがきにも名前を挙げ、謝辞をささげいる四方田犬彦の書いた『月島物語』のほうが、ふるさとの語りとしては面白かったかも。
母の声、川の匂い:ある幼時と未生以前をめぐる断想筑摩書房詳細を見る | 月島物語集英社詳細を見る |