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二つがせめぎ合っている世の中

2013年10月18日 | 読書
 雑誌『考える人』に書かれている文章にちょっと惹かれたので,この文庫本を買ってみた。

 『ピンチに勝てる脳』(茂木健一郎 集英社文庫)

 脳科学者の書く文庫であれば,なんとなく想像ができると思うが,この本は大きく括れば,現代日本社会批判といってもよい。

 典型的なのは「賞味期限切れの日本システム」という章。

 よく言われがちなことであるが,茂木もこう書いている。

 ある種の努力型クオリティが社会の中でつくられ,また機能していたということですが,残念ながら,今の社会ではもうそれは機能しなくなっているのです。

 茂木がいうところの「部分最適」(限られた部分での優位,特に学校における優等生など)では立ち行かなくなっていることなど,すでにわかってはいるのだが,捨てきれない面も多く残っていることもまた確かだ。 


 さて,「文庫版おわりに」は今年5月に書かれたものだ。そこに書かれていることが興味深い。
 大震災のボランティアに関わって次のように表現している。

 人々の関心がパワーからインフルエンスのほうに移ってきている証拠ではないかと思っています。

 インフルエンスとは,強制なしに多くの人に影響を与えることができるものを指す。

 日本社会は,特定の個人や組織からのパワーに基づいて動かされる面が強い。遠い過去の歴史を持ちだすまでもないし,現代であっても政治家や企業トップやマスコミ等々,パワーによる支配が依然として続いている。
 しかし,ネットの普及や震災をめぐる混乱の中で,新しい動きがあることも確かだ。

 今,この二つがせめぎ合っている世の中であるという認識を持つことはとても大切だ。