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熱き血潮の人,逝く

2013年10月19日 | 雑記帳
 週初め,宿泊ドッグ先の病院でぼおっとして朝のニュースを見ていたら、やなせたかし氏の訃報が映しだされた。もはや漫画を低俗な文化という人はいまいが、若い時から高齢になるまでこの道を続けてこられた方の佇まいには独特の品格があると、その姿を見てしみじみと感じた。歩んできた道の険しさを思う。


 けっして難解な言葉をつかわないことも氏の特徴のようだ。アンパンマンを持ち出すまでもなく、悪を憎み、正義をつらぬく、その一筋を伝えようと生きてきた人ではなかったか。口癖のように言っていた「肝心なのは、人を喜ばすことなんだ」…このシンプルさを越えられることばは、そんなに多くありはしない。


 図書室で調べ物をしていたら、氏の本が目にとまった。国土社発刊の「しのえほん」シリーズである。独特のタッチの絵に、強いことばがマッチする。「いつでもぼくは/たいようのほうを むいていよう/ひかりのほうを むいていよう/かげはぼくの あとにある」…「ひまわりはせんせい」という詩の一節。


 「手のひらを太陽に」…誰しも知っているこの曲は、詞は平易だが、一ヶ所解説が必要な箇所がある。「血潮」である。そしてこの言葉が作品の核だ。もちろん流れ出るということではなく、体内をめぐるという意味だ。それが激情や情熱のたとえに使われるというイメージが、この曲全体を熱のあるものにしている。