すぷりんぐぶろぐ

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「カ」に込められた不快感

2013年11月06日 | 雑記帳
 テレビ番組を見ていた時に家人が、秋田弁丸出しで「なに、モカモカしてるなよ」とつぶやいた。「おっ、モカモカとは久しぶりに聞いた」と言うと、「モカモカって共通語でないの」と訊く。「当たり前でしょ」と言ってはみたものの少し心配になってきた。広辞苑なし、擬音擬態語辞典なし、ネット検索なし。よし。



 引っ掛かるのは、宮澤賢治作「やまなし」の「月光の虹がもかもか集まりました」であるが、そこは造語の天才!賢治なのだ。七色の光が集まるというより、輝きをあげるといったイメージだろうか。「もくもく」や「もやもや」や「ぷかぷか」などの形容の混ざった表現だろう。取り上げた「モカモカ」とは大違いだ。



 ところでこの言葉は、県民以外は分からないだろう。愛用『秋田のことば』では…えっ、見出し語としては無い。正式?には「まかまか」なんだ。「ま」から「も」への転訛か。意味は「もたもた。歩行などの動作がおぼつかないさまをいう擬態語」。確かにその通りで、単純に言えば「もたついている」様子だ。



 語感としても「た」の方がふさわしいかと思う。どこで「か」に変わったのだろう。口腔の使い方の特徴は…と考えながら口にしてみると、「もか」でも「まか」でもいいが、カ行にある強さ、ちょっとした怒り、イライラ感があるのかなと想像してしまう。そんな感情を単語の中で表現しようとしたのではないか。



 突拍子もない推論かもしれないが、口の重い秋田人は「もたもたするなよ。さっさとやれ」と言う側にある不快感を「もかもか」に押し込めたのかもしれない。その一言を言えばわかるでしょ、といった省略形好きの県民性だから。類語も思い浮かぶ。「エカマカ」「ドカチカ」「ガカモカ」…みんな批判的な形容だ。