すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

沈黙と混沌と辛味に浸る

2013年11月27日 | 雑記帳
 平日の宮澤賢治記念館は快適なのでは…とふと思った。振替週休を届けてあるので,野口先生の授業を参観させていただく前に,ちょっと出向いてみることにした。案の定,確かに観光客はいたがバスは1台のみ。もちろん客層は大人オンリーである。これはじっくり見られそうと入口に向かうと,衝撃の貼紙が!


 「熊出没注意」。ほおーっ,まさか賢治の童話ではあるまいな。記念館だけでなくレストランが入る建物の入口扉にも貼ってある。一人のお客さんが「これ,どういうこと?」と販売員に訊く。「ええ,道を横切ったりするんですよ」「えっ,じゃあ今ここに出たらどうするの?」しばし無言。この沈黙が不気味だ。


 それはともかく,記念館内部はまばらな人数で予想通り。造詣が深いわけではないが,何度となく立ち寄っているこの場所を初めてゆっくり回れる気がした。ほとんど修学旅行引率だったから当然か。あまりにも広範囲で深い賢治の世界。それでも魅力に満ちている。混沌さとわからなさに浸る,ある意味で贅沢な時間だ。


 ふと目に止めた広告。生前に出版した『注文の多い料理店』のものである。雑誌「赤い鳥」の広告と説明してある。そのキャッチコピーが凄いではないか。「東北の雪の曠野(こうや)を走る素晴らしい快遊船(ヨット)だ」…今,この言葉を聞き,何人が賢治を連想するのだろう。どんな色の帆なのか想像しにくい。


 軽く昼食をとってから会場へ…と考え車に乗り込むと,すぐに気になる看板を見つける。「暮坪そば」。暮坪カブは以前『美味しんぼ』にも登場したし,先月だったか遠野市唯一?の生産者である老夫婦がTVに出ていた。即注文する。そばの味はともかく,納得のカブである。まさに貴重だとわかるその辛味に浸った。