すぷりんぐぶろぐ

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意志の力を働かせて上る

2014年11月09日 | 読書
 「2014読了」120冊目 ★★

 『下りのなかで上りを生きる』(鎌田 實  ポプラ新書)


 ちょっと滅入った会議の後に立ち寄った書店で買い求めた。
 この本で使われる「下り」は範囲が広いので、こういう場合、つまり自分の望むような方向になかなか進まない会議などにも当てはまるようだ。

 誰しもうまくいかないときがあり、そのときをどう過ごすかが人間にとっては一つの分かれ目だとは思う。理不尽だと思うことに対して、なにくそと歯向かったり、へへんと背を向けたりする齢ではないが、捨てきれない感情は結構くすぶっている。

 そのときに思い出したい。
 著者が引いた哲学者アランの言葉だ。

 「悲観主義は感情で、楽観主義は意志の力による」


 意志の力を働かせる…それが感情に流されないため、下りのなかで上りを見つけるための第一操作であろう。

 本のなかのエピソードは、著者らしく医療のことや震災、原発問題にわたることが主になっている。
 様々な人を紹介しながら、そこに自分も深く関わって「上り」に舵を向けている。ある意味、この国の代表的なリーダーの一人であると感じた。
 それは、こんなふうに言える精神性を持っているからではないだろうか。

 人間には、生き続けるための物語が必要だ。人間が生きる場には、すべて、アートっぼい物語があるといい。人生が少しおしゃれになる。


 今、「下り」を実感している人は確かに多い。
 マスコミ報道だけでなく、どんな会に出向いても、見通しの暗さだけが話題になり、全体的なトーンを鈍い色で覆っている感じがする。

 先日参加したある大会でも、休憩時に知り合いと「挨拶する人する人が、あんなこと(人口減、高齢化や少子化など)ばかり言って、何になる」と軽口を叩いた。

 そのことについてはわかっている、その中でこんなふうにしませんか、これもできるよ、と言ってみたい。

 こういう時代だからこそ、ニュース等でも話題になった村上春樹のインタビュー(毎日新聞)の後半部分は共感できた。
先行きの悲観視だけで何が生まれるというのか。


 この本で著者が一番に取り上げたことも「楽観力」である。
 政治や経済を握る人たちの言辞に対して注意深く視ることは必要だが、全て悲観的な見方につなげるのではなく、その時点でできる楽観視した展望を持っていないと,つぶれていく一方だ。