すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

愛すべき寝床の友

2015年02月07日 | 雑記帳
 寝床の友はほとんどの場合コミックである。ベッドに入る段階で眠たいモードがかなり高いので,文字だけのものには手が出ない。最近あまり買っていないので,以前からあるものを取り出して読んでいる。先月の中頃から読みだして,全18巻読みきったのが『ビッグウィング』(矢島正雄・作 引野真二・絵)である。


 名作『人間交差点』の原作者矢島正雄が好きで,結構いろいろなコミックを買っている。この『ビッグウィング』もそのつながりで読み始めた。第1巻が2000年4月,最終18巻が2005年11月となっている。そうかあもう10年経っているのかと思った。主人公役は,実写ドラマでは内田有紀だったことを思い出す。


 この『ビックウィング』の特徴の一つに,最終頁を使ってテレビドラマで言えばナレーションのような形で,文章が添えられることにある。例えば18巻第3話は,こんな言葉で締めくくられる。「見える/ものだけに/絶望するな。 生きてきた/時間が/翼となる。」実によく引き締まる。さすが矢島正雄だなと感じる。


 このパターンはいつからだったかな,と第1巻を見直してみた。3話にはあったが4話にはなし。そして5話以降からは全部につけられている。編集者の意向なのか。スタートだった5話の一部分を抜粋する。「人は皆,誰かの為に生きている。/ある時はそれが重荷に,/ある時はそれが生きる喜びに,/だから人間。


 空港の案内業務職員の吉川久美子が主人公だが,パターンは主人公が成長したり変容したりするのではなく,毎回登場する人物が久美子と関わりながら変わっていく様子を描く。人が行き交う場所にはドラマが生じやすいという設定を基にしながら,結局「人を変えるのは人以外にない」というのがテーマに違いない。