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しがらみを、まず解きほぐす

2015年02月19日 | 読書
 【2015読了】22冊目 ★
 『しがらみを捨てると楽になる』(保坂 隆   朝日新書)

 著者は聖路加国際病院の精神科医。「50代」という言葉が頻繁に出てくるように、その世代を読者層として想定している。近づく定年を前にした者へ「しがらみから自由になる」ようにアドバイスする内容である。そう言われてもなあ、と正直に思う。表題の意味はよくわかるし同感しつつも、そうできなかった今までの長い時間を簡単に修正できるものなのか。


 そもそも「しがらみ」ってなんだ?と、語意モードに入るいつもの私。電子辞書(明鏡)によると、次の二つの意味がある。「①水流をせきとめるために、川の中に打ち並べたくいの横に竹や木の枝を結びつけたもの ②ひきとめるもの。まつわりついて離れないもの」つまり「設備」としての本来の意味と、転じて社会における人間関係等も表わすようになった。


 英訳した語は端的で面白い。「障害」「束縛」である。ついでにシ―ソラスはどうか。「関係ある」「絡む」「余儀なく」「情け詰め」「義理のしがらみ」「囚われる」「絆される」「ダム」など。漢字で書くと「柵」…「さく」であるのはもともとの意味に沿っているのだが、人間関係においても暗示的である。柵をつくっているのは誰なのか、外に出るためにどうするか。


 自分がつくっている、周囲がつくる…どちらかと決めつけられないだろう。では、柵を障害としてみれば、その対し方としてどんな方法があるのか。自ら行動できるのは「壊す」「移す」「跳び越える」「潜り抜ける」(笑)というところか。定年とは仕事という柵を成立させる太いくいは除かれるが、その場に漂う竹や木の枝はずいぶんとやっかいのような気がする。


 上手に切り抜ける教えがいくつかある。「モノを少なくすると、頭がやわらかくなる」…なかなか実行できないなあ。便利なモノ、コトが開発されるとそれに頼ってしまう。あっ、過日読んだ「便奴」そのものだ。続けて「便利グッズが発想力を萎ませる、頭を固くしてしまう」…この流れからの支配をどう破るかだ。…数年前流行った「断捨離」と通ずるなあ。