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桜と絵本と豆乳と

歌詞のイメージを巡る

2015年04月18日 | 雑記帳
 先日の新聞に、ユーミンの歌詞を写し書きする本?が出版されているという記事があった。なるほど、脳トレのような形で以前から写経的な本が出ているのは目にしていたし、こういう成り行きは自然かもしれない。松任谷由実(荒井由実の時代から)の歌詞はよく絵画的とも言われるし、ファンも多いだろうからね。


 ふいに思い出されたのが、この前書店でつい買ってしまった一冊。『懐かしい!あの頃の歌 CD付き』。特にこういった歌を好んで聴いてきたわけではない。齢をとってきたということかもしれないが、誌面をみてなんとなくその構成やデザイン、そして歌詞そのものに惹かれたのである。セピアタッチである。


 特に気に入ったのは「村の鍛冶屋」。作者不詳とある。出だしは「しばしも休まずつちうつ響き」と記憶していたが、もともとは「暫時(しばし)もやまずに槌うつ響き 飛び散る火の花」だったらしい。解説によると、ずいぶんと歌詞も変遷があったと書いている。Wikiにも詳しい。それにしても二番の歌詞がいい。


 あるじは名高き
 いっこく老爺(おやぢ)
 早起き早寝の
 病知らず
 鉄より堅しと
 ほこれる腕に
 勝りて堅きは
 彼がこころ



 確かに時代を感じさせるが、なんとなく男はそうありたいという気分にもさせられる。小学生の頃、通学路途中に「鍛冶屋」と呼ばれる家があった。たしかに鉄工関係の仕事をしていたはずだ。むろん今は姿を消している。この歌に三番、四番もあったことは知らなかった。平和讃歌、労働讃歌とも言える内容だった。


 さてこの一冊で目立つ作詞家は高野辰之。「朧月夜」「ふるさと」「紅葉」といった、いわば日本の原風景のような景色を見事に表した人と言っていいだろう。飛躍はあるが、かつて文語調の歌詞も書いたユーミンも影響を受けたかもしれない。「朧月夜」の二番「夕月かかりて匂い淡し」なんてイメージが重なる。