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2015年04月28日 | 読書
 【2015読了】38冊目 ★★★S6『授業の話術を鍛える』(野口芳宏 明治図書)

 教育の場における話し方の技術について、本質から具体的ポイントまでを網羅している一冊

◇話術という技術は、常に相手がいる場所で発揮するものだから、鍛えていくためにかなり広範囲を見渡し、その分類や関連を考える必要がある

◇話術の上達のためには、かなり限定した課題やポイントを持ちながら、それを積み重ねていくことが有効である

◇常に、目的や本質を忘れず話す、語る。自分自身を把握して活かす。


 この教育新書は、『小学生に対する話し方技術』という80年代前半の著書を改定して、89年に出版されたものである。
 私は前著も持っているし、おそらく数回同じ文章を読んでいるのだが、今もって話術は高まらないし、また書かれている記述に、ははあっと新たな発見をしているような気分になっている。
 これは言いかえれば、いかに定着しないかということだけなのだが…。

 例えば

 常識として知っておきたいことばの役割あるいは機能には次の五つがある。
 ① 認識機能    ②思考機能   ③伝達機能
 ④ 社交機能    ⑤調整機能


 こうした基本的知識についても、まだまだ駄目だ。
 改めて「⑤調整機能」による自己コントロールという点は、この頃特に大事だなと思うようになった。

 この著において「聴衆分析」という用語を先生は既に使われていた。
 それを忘れてしまっていて、ビジネス用語の影響なのかなあと多くの実践を見ていた自分が少し恥ずかしい。

 どの著書もそうであるように、この本も単なる話術上達のマニュアルではない。
 先生の「授業」「教育」に関するお考えの一端が強く出ている。

 それらは自分の考えのもとにもなっていることが多い。
 何度も書き出して忘れないようにしなければ、と自戒の意味を込めて引用する。

 授業というものには実践原理はあるにしても、その原理をふまえた具体的な展開方法はもっと個性的で多様で柔軟なものでなければならない

 教師の本当の任務は、子どもを向上させることである。冷たい本当によってへこますよりは、温かい嘘によってでも希望を持たせ、向上への意欲を促すべきである。(中略)教育の本質を理解し、ことばの根本的な意義を承知している教師は、常に相手の立場や心情に思いを馳せ、愛情豊かなことばを相手に贈ることができるのである。