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言の葉は軽くも重くも

2015年05月24日 | 読書
 【2015読了】45冊目 ★★『「言葉の力」を感じるとき』(京都 柿本書房)


 「言の葉協会」というところが主催する「言の葉大賞」というコンクールの入選作品集が職場へ送られてきた。「まえがき」がストレートである。

 高度情報社会と言われる今日、言葉は社会にあふれているように思える。だが、実のところ「言の葉」は日々、減り続けているのではないだろうか。


 いわゆる伝達や社交としての言語だけでなく、認識や思考面の言語について述べているといっていいだろう。
 「言の葉」のもとになるだろう古今集仮名序も引用されている。

 やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける


 この作品集の前半は「恋文大賞」の入賞作品で、一般から中学生あたりまでが手紙、作文を寄せている。
 言うなれば「いい話」のオンパレード。それは仕方ないことだろう。
 結果的に「悪い」「暗い」となれば、こうした文章にはたどりつかない。震災という大きな出来事からさりげない日常の一瞬まで、範囲は様々であるが、書き手は皆前を向いている。

 読みながら、入選者に共通するのは「いい話にできる資質」だろうと思った。
 つまり、文章技術はある程度必要だが、それよりも自らの困難や他からの多様な働きかけを、結果として肯定できる心の持ち主とでも言えるかもしれない。

 圧倒的に女性が多いことも興味深い。
 子どもや保護者に紹介してみたいいくつかのエピソードもあり、ネタ本と言えるかもしれない。


 後半の「言の葉大賞」作品は、中学生・高校生のもので、正直ありがちな弁論集(しかもミニサイズ)である。
 中高生に「言葉の力」ということで語らせたら、そうなるだろうと思う。もちろん感動体験と結び付けて語るわけだが、いくら表現を工夫しても多くの場合、重みは感じられない。
 「言の葉」だから、軽くていいのか…というわけでもあるまい。

 とそんなことを思いつつ、最終作品にいくと、これがと実にフィットした。
 佐賀県の吉井さんという高校生が書いた作文の題名はこうである。

 「言葉の力」を感じたとき、私の財布は軽くなる


 この興味をひく題名のオチは、コンビニ商品の「期間限定」という言葉なのである。
 「期間限定」を謳う商品に対する購買意欲のことを、実に素直に、ウイットに富んだ文章で綴っている。

 ただそれは「言葉の力」というより、「心の病」により近くはないか…そんな思いもよぎる。
 もちろん、私も病人です。