すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

5月号から読み拾う言葉

2015年05月17日 | 読書
 『波』…「孫物語」(椎名誠)の書評を鳥越俊太郎が書いている。そのタイトルが「縦糸と横糸の妙技」。孫たちが繰り広げるエピソードを縦糸としている著であるが、個々を解釈する椎名の横糸つまり文明観・人間観が素晴らしいとしている。思えば随筆といった類いは全てそれだ。文章に模様を織り成していくことか。


 『本』…平田オリザが連載で語っている。「スキー人口が減ったから少子化になったのだ」。面白い発想である。当然「スキー」は比喩に違いないが、そうした遊びの質の変化、そしてそれをもたらした原因は何か。突き詰めると政治の貧困にたどり着くのも一つのパターン化だ。魅力あるものは、誰かに誘導されたのだ。


 『図書』…「巷に溢れかえる情報が社会を記念日だらけにし、社会の良識という顔をして私達にあるべき振る舞いを押しつけてくる」。いつもながら高村薫の指摘は鋭い。もちろん深く記憶に刻む日は必要だ。しかし興味関心を細切れにして、結局のところ経済活動に結び付けようとする輩がいる。振り回されるな。


 『ちくま』…東北と本の話を連載している土方正志は、震災後の宮城の海岸線の重機や土埃を見て、こんなふうに記した。「これが復興なのか。それとも復興と叫びながらの破壊なのか。」自然観や社会観を絡めた問題提起である。どんな町かだけでなく、どのようにもまた重要だ。視点を深くしたい。月末には南三陸へ行く。