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メタ落語を聴く

2015年10月26日 | 雑記帳
 週末に秋田市で開かれた柳家喬太郎の落語会に出かけた。もう何年前になるのか定かではないが、寄席で「松竹梅」を聴いて笑いが止まらなくなってからのファンである。県内に「愛喬会」という名称の組織があり、その主催で年に2回ほど公演がある。春は都合があって行けなかったので今回は楽しみにしていた。


 なんといっても新作落語の名作と評判の「ハワイの雪」が演目である。この落語は、「三題噺」という形で生まれた。客席から三つのお題をもらい、それを入れ込んで即興でつくるという。「八百長」「ハワイ」「雪」で作られたこの新作は、確かに噂に違わぬ噺であり、だからこそ、喬太郎の特徴がいっぱい詰まっていた。


 田舎に住む軽い落語ファンの戯言と断って書く。まず一つ目は「突飛さ」である。例えば会話しているときに急に語り口を変える、古典落語に突然登場させる現代的表現、場面のデフォルメの加減(今回は飛行機に乗っているシーンを立って手を広げるという幼児的表現をした)。これらのインパクトが他に比して強い。


 次に「アドリブの巧みさ」。これは多くの噺家に当てはまるのかもしれないが、喬太郎の場合はアクシデントなどを積極的に使う。おそらく、全員がそれを見ている共通地盤を意識している。それも一つのポイントをそれなりに語る。例えば次回公演のチラシが懐から出てきたのを幸いに、宣伝に仕立てあげたりする。


 喬太郎を「メタ落語」と称する表現を見つけた。うまいこと言うなあ。まさに客席を俯瞰しながら噺を構成していくという感じがする。どこを繰り返せば笑うか、どこを引っ張ったほうが構成的にまとまるか、反応を即座に判断、評価してそれを笑いに変換する。表現上の誇張はあるが、実に念入りに客席を見ている。