すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

樹木に迎えられた頃

2015年10月04日 | 雑記帳
 NHK連ドラ『あさが来た』は、主人公が木の枝に腰かけている場面が象徴的だ。思えば、子役の鈴木梨央はあの『八重の桜』でも主人公の幼少時代を演じていて、そこでも木に登り、腰かけて街道を眺めていたのではなかったか。この連ドラでは、さらに主役が今の波瑠を登場させる回も木登りの場面を使っている。


 わかりやすいと言えば実にわかりやすい。主人公のおてんばな面を描き、大方の周囲からひんしゅくを買うが、そのことを温かく見守る人物も傍にいることを必ず入れ込む。まあ定番の、絶好の舞台装置というべきか。当然ながら、木の上から主人公は、遠くを、そして未来を見渡している。表情はいつも爽快である。


 昔は木登りをよくしたものだ…などとは言えないなあ。まあ周りにそれに適した樹木がなかった、だいたい雪国の木は木登りに適したものは限られるのではないか…などと考えていたら、幼い頃、実家の隣に桜の老木があったことを思い出した。その木には登って遊んでいたなあ。花が散った後、小さい桜桃も生った。


 当時隣家に住んでいたN家は三人兄妹で、一番上が私より二歳上のSちゃん、そして同い年のTちゃん、一つ年下だったK子ちゃん。Tちゃん、K子ちゃんとは揃ってよく遊んだ。自分の家には大きくない柿の木しかなかったので、主戦場はやはりその桜。のんびり腰かけた記憶はないが、枝に立つ姿はイメージできる。


 今、木登りすると言えば、何か意図的に作られた場面だろうか。それはそれで構わないが、ごつごつとした幹にしがみつき、枝をつかみ、足で踏ん張り、じりじりと登る動きは、自然そのものとの対話のような気がして、人工物では代えられない。木登りは克服的遊戯とも言えるが、樹木に迎えられるイメージもある。