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桜と絵本と豆乳と

「のんびり」を読んで学ぶ

2015年10月12日 | 読書
 愛読誌『のんびり』の14号は、版画家勝平得之の特集である。秋田県民であれば、仮に勝平得之の名前は知らなくとも「ああ、この画は見たことがある」と誰しも思う。それだけ目にする機会が多く、また特徴的な画と言えよう。正直、今まで関心はなかったが、今回の特集を読み、一つ深く見られるような気がする。


 この特集のキーワードは「農民美術」。第一章が「農民美術ってなんだ?」からスタートする。出だしは秋田ではなく長野県上田市から始まる。詳しい経緯は省くが、農民美術とは「副業的な産業」「農閑期を利用して、趣味と利益を得つつ」という文章に表れる工芸的な要素のある、いわば「土臭い美術」である。


 その歴史性や価値についてほとんどのページが割かれている。なかでも今さらながらに驚いたのは、昭和9年という時代に、勝平を評価した人が「ローカルカラー」という言葉を使っていること。中央と地方という構図はいつの時代にもあり、地方の人間は、相対的な価値に惑わされないことにこそ、自分を見出せる。


 身体感覚を大事にするという観点で「農民美術」を考えると、当然「土」「水」「木」「田」「稲」…というもっとも人間に近い自然と組むことになる。それゆえごつごつしていて、直接的な感情アピールができるかもしれない。それは洗練とは対極をなす。今の時代、売り物に仕立てるとすれば、強調点はそこか。


 今号の記事に「ジュンサイ」を扱ったページがある。ここは結構読ませた。「流しジュンサイ」を目標に取材を始めて、様々な加工料理を食べたり、ジュンサイ摘みをしたり…。摘み取りの場所で念願の流しジュンサイで盛り上がっている時、ひたすらに沼で摘み取っている3人の地元女性に、深い存在感を見る。